第4話「私と結婚してください」
「これは見事な庭園ですね」
「ありがとうございます」
そう、フェイバリット公爵家の庭はとても美しくて広いのです。庭はいくつかの区画に分かれており、区画ごとに咲いている花の色が違います。
今歩いている赤系統の花があるところが私のお気に入りです。
それにしても、レヴィ様とは何を話せば良いのでしょうか? 単刀直入に惚れた理由を聞いてみるのも一つ、なのですかね?
「……シャーロット嬢、正直なところを教えていただきたいのですが、私のことをどう思っていますか?」
「どう、ですか……」
これは、レヴィ様への印象を答えれば良いのでしょうか?
「……良き兄、という風に思っています。なので、レヴィ様から縁談が来たと知った時はとても驚きました」
「やはりそうですよね。……もしよろしければ、ロティと呼んでも良いですか? 3年前のように」
「もちろん大丈夫ですよ」
ロティ、懐かしい響きですね。レヴィ様だけが呼んでくれていた私の愛称。フェイバリット公爵家では、みなさんからシャーロットと呼ばれているので。
しかし、ロティと呼ばれると、つい「レヴィ
「ありがとうございます。では、ロティ」
「何でしょうか?」
「私の宣言と提案を聞いてください」
宣言と提案ですか。何の話でしょう?
「一年後までに良き兄ではなく、良き夫となります。ロティが心からそう思えるようにします。そして必ず幸せにします。なので、私と結婚してください」
「……え?」
「良き兄ではなく良き夫となる」これは百歩譲って分かります。「幸せにする」これもまあ、百歩譲って分かります。
そして「結婚してください」これは五百歩譲って分かります。ですが、どうして結婚なのですか? 私に惚れたとは言っていましたが、そもそもレヴィ様は私のことを妹のような存在と思っていたのでは……?
「そうそう。外堀はきちんと埋めてありますのでご安心ください」
安心ですか……。安心できる要素が一つもないのですが……。なんでしょう、ここで流されてしまったら大変なことになる気がします。
『伝えたいことは伝えるんだよ』
ふとお父様の言葉を思い出しました。……そうですね、遠慮なんてもうしていられません。ひとまず、聞きたいことを聞かせていただきます。
「……レヴィ様、いくつか質問をさせてください」
「はい、どうぞ」
「では一つ、外堀とはどういうものですか?」
「私とロティとの結婚に関しての国王陛下からの許可が一つ。ロティが魔物と闘える十分な戦闘力を身につけていることが一つ。私がホワイトレイ辺境伯家次期当主として決定していることが一つ。ロティとフェイバリット公爵家からの信頼を得られているというのが一つ。このくらいですかね」
確かに、ホワイトレイ辺境伯家で暮らしていた頃は、レヴィ様に魔法を教えてもらっていたり、実際に魔物を倒したりしていましたが……。それくらいは当たり前ではないのですかね?
そして、レヴィ様がホワイトレイ辺境伯家次期当主。公爵家の娘が嫁ぐ先として十分な身分です……。
兄のリアム様もいらっしゃいますが、領の運営よりも魔物と闘うことに本腰を入れている様子でしたからね。ご本人も「俺よりレヴィの方が当主に向いている」と言っていましたし。
何より、国王陛下が許可されたということは、この結婚は決定事項のようなものではないですか!? というか、基本的に国王陛下は貴族同士の結婚には口を出さないはずでは? どのようにして国王陛下の許可を取ったのでしょう? 何はともあれ、これは断れないですね……。
ああ、思い出してきましたね。レヴィ様は昔からやると決めたらどんな手を使ってでもやる方でした。……あれ? これはもしかすると、そこまでのことをしてでも私と結婚したいということになるのではありませんか!?
「……あの、どうしてそこまでして私と結婚したいのですか? レヴィ様にとって、私は妹のような存在ではないのですか?」
「すみません。大切なことを伝え忘れていましたね。私はあなたのことを愛しているのですよ。妹としてではなく、一人の女性として。あの時からずっとそうです。でも、ロティは私の
どういう訳ですか!?
……私が気づかなかっただけで、何やら色々と複雑なようです。
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