第2話「一番の兄バカだったのかもしれません」
あっという間に段取りが整えられ、今日はレヴィ様と辺境伯夫妻と顔合わせをする日です。
レヴィ様たちとは14歳の頃に別れたきり。
別れる時に挨拶もできず、今まで手紙すら送れなかったので、どう接すればいいのかが分かりません。
……正直、かなり緊張します。
「シャーロット様、甘いものはいかがですか?」
「ミア……、ありがとうございます。いただきますね」
幼い頃から仕えてくれている侍女、ミアはケーキと紅茶を用意してくれます。
「ねえ、ミア。レヴィ様はどうして私に結婚の打診をしてきたのでしょうか?」
ケーキと紅茶のおかげでゆるんだ心から、そんな言葉が溢れてきてしまいました。
「……あ、ごめんなさい。こんなこと言ったってどうしようもないですよね」
「いいえ、そのようなことはないですよ。お気持ちを話してくださり、私はとても嬉しいです。……シャーロット様は不安に思われているのですね」
不安……、確かにそうなのかもしれません。
ずっと兄妹として接してくれていたレヴィ様……レヴィ
縁談を持ちかけてきた理由も分かりませんし、ホワイトレイ辺境伯家が今どうなっているのかも知りません。
お父様なら知っているとは思いますが、きっと教えてもらえないでしょう。
ホワイトレイ辺境伯家の情報は徹底してまで私に教えたくないようですから。
よく考えなくても不安になる要素はありすぎなくらいありますね。
どうして気づかなかったのでしょう?
「正直なところ、レヴィ様が結婚の打診をされた理由は分かりません。ですが、レヴィ様はシャーロット様のご意思を一番にお考えになるはずですよ」
ふとレヴィ様との出来事を思い返してみました。
常ににこにことしていたレヴィ様。
時々何を考えているのか分からないこともありましたが、その眼差しや言動は優しさで溢れていました。
膝に乗せて本の読んでくれたり、
振り返ってみれば、一番の兄バカだったのかもしれません。
なんだか大丈夫な気がしてきました。
「もしもレヴィ様がシャーロット様のご意思を無視したりしたら、レヴィ様であっても容赦はしませんよ……!」
「ふふ、容赦はしないって、何をするのですか?」
「それはその時のお楽しみですよ。ミアはいつまでもシャーロット様の味方ですからね」
「それはとても心強いですね。……ミア、そろそろ行きましょうか」
窓からホワイトレイ辺境伯家の紋章がついた馬車が見えました。
私には心強い笑顔が素敵な味方がいてくれることですし、きっと大丈夫です。
それにしても、レヴィ様方に会うのが楽しみになってきましたね。我ながらよい傾向かもしれません。
何事も楽しんだ者勝ちですから。
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