第2話 佐々木佑紀 殺害現場に急行

そこに、中原淳一警部が駆け込んできた。彼の顔には焦りと緊張が浮かんでいる。


「氷川さん、今朝、日本橋で刺殺事件が発生しました。被害者は佐々木佑紀、25歳、IT企業に勤務していたそうです。現場には奇妙なメッセージが残されていました。」


「メッセージ?」氷川は興味を引かれた。


「はい、『東海道五十三次の始まりだ』と書かれた紙が散らばっていました。」


氷川は一瞬考え込み、その後毅然とした表情に変わった。「すぐに現場に向かう。中原、芝岡を連れてきてくれ。」


中原は素早く頷き、芝岡雄三を呼びに行った。氷川はその間に田宮晶子に連絡を取り、現場でのサポートを依頼した。数分後、全員が集まり、パトカーに乗り込んで日本橋へ急行した。


現場に到着すると、警察の黄色いテープが周囲を囲んでおり、報道陣が集まっていた。氷川たちはテープの内側に入り、現場を調査し始めた。芝岡はすぐに紙のインクを鑑定し始め、中原は周辺の防犯カメラの位置を確認していた。


田宮晶子は近くの住民に聞き込みを始めた。氷川は現場の中心に立ち、被害者の遺体を見下ろした。佐々木佑紀は若い男性で、顔には苦悶の表情が浮かんでいた。その胸には深い刺し傷があり、血が流れ出ていた。


「田宮、近くの住民にこの男を見かけたかどうか聞いてくれ。そして、この紙の出所も探るんだ。」氷川は田宮に指示を出した。


「了解しました、氷川さん。」田宮はすぐに動き始めた。


氷川は次に中原の方に歩み寄った。「中原、防犯カメラの映像はどうだ?」


「まだ解析中ですが、何か映っているかもしれません。少し時間がかかりそうです。」中原はカメラの位置を指差しながら答えた。


「よし、急いでくれ。時間がない。」氷川は中原に激励の言葉をかけた。


芝岡が鑑定を終えて近づいてきた。「氷川さん、この紙のインクはかなり珍しいものです。もしかしたら特注品かもしれません。」


「そうか、芝岡。引き続き調査を頼む。」氷川は芝岡に感謝の意を示した。


現場の調査が進む中、氷川はふと考え込んだ。「『東海道五十三次の始まりだ』…。これは単なる偶然なのか、それとも犯人のメッセージなのか?」


その時、田宮が戻ってきた。「近くの住民の話によると、昨晩遅くに不審な男がこの辺りをうろついていたそうです。特徴は背が高く、黒いコートを着ていたとのことです。」


「その男が犯人かもしれない。引き続き目撃情報を集めてくれ。」氷川は指示を出した。


現場の調査が一段落すると、氷川たちは警視庁に戻り、情報を共有しながら今後の方針を話し合った。彼らは一刻も早く犯人を見つけ出すため、全力を尽くす覚悟を固めた。


その日の夜、氷川はデスクに座りながら考え込んでいた。佐々木佑紀の殺害は一体何を意味しているのか?そして、『東海道五十三次の始まりだ』というメッセージの真意は?


彼は深い溜息をつきながら、次の手がかりを求めて資料に目を通した。佐々木佑紀の人生、彼の周囲の人間関係、そして彼が関わっていたIT企業の詳細…。全てが事件解決のためのピースとなるはずだ。

彼の心には、これからの困難な捜査に対する覚悟と決意が満ちていた。







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