第3話・毛皮ビキニアーマーのミノタウロス娘

 森の小径しょうけいを歩いているプルシャの腕にしがみついて、一緒に歩いている金属ビキニアーマーの姫さまにプルシャが言った。

「姫さま少し、くっつき過ぎなんですけれと」

「わたくしは、プルシャお姐さまのモノです……わたくしの体を触って、どんな構造をしているのか調べてみてもよろしいのですよ」

「遠慮しておきます」


  ◇◇◇◇◇◇


 プルシャの足がピタッと止まる。

「どうしました? お姐さま?」

「さっきから、後をつけられている……隠れていないで、出てきたらどうですか」

 いきなり、大木が数本切り倒され。プルシャと姫さまが飛び避ける。

 倒れた大木の後ろから、牛頭で毛皮ビキニアーマーのミノタウロス娘が現れた。

 ミノタウロス娘の手には、棍棒に斧の刃が付けられた武器が握られていた。

 刃がない部分で殴れば棍棒となり、刃が付いた側なら斧になる。


 鼻輪をつけたミノタウロス娘が、鼻息を荒く言った。

「おまえ、オレと闘え! オレは強いヤツと闘うことでしか安堵しない女だ……うっ、闘争心が高まると、また呪いが発動する」


 ミノタウロス娘の頭が、人間の美女顔に変わる。

 ミノタウロス娘は、片腕で人間の顔を隠す。

「見るな! 呪われた醜い顔を!」

 プルシャのビキニアーマー〈下〉が、ミノタウロス娘に言った。

『綺麗な顔の美人だと思うけれど?』

「からかっているのか……牛の顔から比べれば、こんな醜い顔……ビキニアーマーが、しゃべった?」

『オレは、フギン』

『あたしは、ムニン』


「しゃべるビキニアーマーなんて、初めて見た……とにかく、オレと闘ってオレの闘争心を満足させれば、元の牛の顔にもどる……そちらから、来ないなら、こちらから行くぞ!」


 ミノタウロス娘が振るった棍棒斧を、長剣で受け流したプルシャが、美女顔の鼻に付いている鼻輪を見て言った。

「今、気づいた……その鼻輪、わたしの体の一部だ。鼻輪ちょうだい」

「闘いの最中に何をワケのわからないコトを、この鼻輪は肉牛として間違って出荷されてしまった祖父の形見だ! 欲しければオレに勝って奪え!」

「じゃあ、そうする」


 プルシャの長剣が強靭な盾へと変化する。

「盾は剣より強し、盾で押し潰す」

 ミノタウロス娘の棍棒斧の連打を完全に防御しながら、プルシャは盾でミノタウロス娘を一気に押していく。

「うわぁぁぁ! 怪力のオレが盾に押される⁉」

 森の木を何本も、なぎ倒してミノタウロス娘の体は、森の大岩に激突させられた。

 大岩を背中で真っ二つに割った、ミノタウロス娘が座り込んだ格好で、牛顔にもどって大笑いする。

「あはははっ、まさかあんたみたいな強いビキニアーマーがいるなんてな、鼻輪はじっちゃんの形見だから勘弁してくれ。オレが責任を持って鼻輪は守る……その代わりオレがあんたの嫁になる──オレをあんたの嫁にしてくれ、惚れた」

 珍しく赤面して動揺するプルシャ。

「ちょっと待って……女同士で婚姻なんて」

「心配するな、形だけの偽婚だ」


 こうして、毛皮ビキニアーマーのミノタウロス娘が仲間になった。

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