第2話・金属ビキニアーマーの魔呪姫

 大会当日──武闘大会会場のコロシアムには、早い時刻から腕に自慢の猛者たちが集まってきていた。

 すでに参加受付けを済ませたプルシャは、受け付けで何やら揉めている声を耳にする。


「だからなんで、半獣人は大会参加がダメなんだ! オレはこの日のためにやって来たんだぞ!」

 見ると頭が牛頭で体が人間の、ミノタウロス女が毛皮のビキニアーマー姿で、係りの者と言い争っていた。

「参加規定には人間だけなんて、一言も書いてなかったぞ! オレも武闘大会に参加させろ!」

「そんなコトを言われましても……急には」

 プルシャは、言い争いをしている現場から離れて、参加選手の控室に向った。


  ◇◇◇◇◇◇


 男女同室の控室──プルシャはビキニアーマー〈下〉の、ムニンに訊ねる。

「使用する武具はなんでもいいんですよね」

『はい、特に制限は無かったですね』


 プルシャの所に、食堂兼宿屋で、プルシャの股間を覗いていた男が近づいてくると、しゃがんでプルシャの股間を見ながら言った。

「あんたも、やっぱり出場するのか……やめておけ、第一戦は総当たりのバトルロイヤルだ、生き残った者だけが本戦に進める……悪いことは言わねぇ、今からでも遅くないから参加を取り消せ。参加するならオレを倒してから……おごッッッ!」

 プルシャの高く上げた片足が、かかと落しで男の顔面に、めり込んだ。


  ◇◇◇◇◇◇


 武闘大会開始──やはり、全員がプルシャをターゲット標的に、襲いかかってきた。

「やっちまえ!」

「まずは、最初にビキニアーマー女を餌食で脱落だぁぁ!」


 プルシャの長剣が『芭蕉扇バショウセン』のような武器に変化する。

 火炎を含んだ熱風と、氷塊を含んだ寒風がプルシャに襲いかかってきた全員を、一瞬で吹き飛ばす。

「ぐあぁぁ!」

「最初に狙う相手を見誤ったぁ!」

 プルシャ一人を残して、大会参加者は全員脱落して……あっという間に優勝者が決定した。


 王室特等席ロイヤルシートに座って観戦していた王女が、立ち上がると、プルシャに向って拍手をしながら言った。

「見事です、でもまだ優勝は決まっていません……最後の相手を倒さなければ、その相手とは」

 いきなり、拍手していた姫さまが空中前転をして、コロシアムの闘技場に降り立つ。


「この、わたくし……通年武闘大会、優勝者のわたくしです……いざ、勝負」

 姫さまのドレスが千切れ飛び、ブーツと手袋の裸体に貼りついた金属の欠片が、金属ビキニアーマーへと変わる。

 片方の肩に金属防具を装着した姫さまの手には、幅広のグラディウス型短剣が握られていた。

 プルシャに向って疾走する姫さまの体から、ドス黒い何かが吹き出す。

 幅広短剣からも、黒いヘビのような霧が現れた。


 ビキニアーマー〈上〉のフギンが言った。

『プルシャ姐さん、気をつけろ何か変だ』

 プルシャの体に、黒いヘビが巻きついたような模様が現れる。

(この姫さま、魔呪使い⁉)

 プルシャの体から力が抜けていく。


 魔呪姫が、短剣を手に突進してくる。

 姫さまの口から、王室の者とは思えない言葉が発せられる。

「このまま、ブッ殺す」

 プルシャは長剣を頭上に掲げると、稲妻が長剣に落ちて。

 体に浮かんでいた黒ヘビの呪紋が、剥がれ飛び消える。

 驚く金属ビキニアーマー姫さま。

「えっ? わたくしの魔呪が?」


 続いてプルシャの長剣が、建物の二階くらいの高さがある巨大な大剣に変わる。

 大剣の影の下、姫さまの頬が引き攣る。

「ち、ちょっと待って……そんなのあり? ヒィィィィィィ!」

 振り降りされる大剣、地響きが轟き姫さまが潰される。

 大剣が長剣にもどると、そこには地面にガニ股姿で、めり込んでピクッピクッしている姫さまの姿があった。

 魔呪姫さまの体は、丈夫だった。


  ◇◇◇◇◇◇


 鼻先に絆創膏を貼った、金属ビキニアーマーの姫さまがプルシャに言った。

「完敗です、優勝賞金と望みのモノを差し上げます……可能な限りのモノを差し上げますから、希望のモノをおっしゃってください」


 プルシャが姫のティアラを指差して言った。

「では、そのティアラをください」

「これは、我が王家の象徴なのでお渡しすることはできません……その代り」

 金属ビキニアーマー姫が、ピトッとプルシャの腕にしがみつく。

「わたくしを差し上げます……わたくしは今から身も心も、お姐さまのモノになります。プルシャお姐さまと呼んでもいいですか?」


 プルシャは、困惑しながらも、自分の体の一部が身近にあればいいか……と、思った。


 姫のプルシャと同行して旅をしたいの、申し出に王室特等席の王は、両手で丸を作って承諾した。

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