第23話


穏やかな日々は続いた。


私はシャロンに腕の具合を見てもらいながら、少しずつ出来る事を増やしていった。


食器を洗う。

食事の用意。

洗濯物を干す、等など。


私はそれらをシャロンと共にやった。

シャロンの傍にいると、己が呪われている事を忘れられた。


同じ頃からシャロンは随分打ち解けてくれるようになった。

何かの拍子に手が触れても、シャロンが急いで手をひっこめる事はなくなった。

シャロンの肩に手を置いても、肩を震わせる事はなくなった。

視線を感じて目を上げれば、シャロンと目が合うようになった。


その逆で、私がシャロンを見ている時もあった。

お互いの目があった時、自然と微笑み合うようになった。

薬草を摘みに行く道でなんとなく、本当になんとなく、手を繋ぐようになった。


だから………


だから私達が肌を合わせるようになったのは、自然な事だったのだろう、と思う。


私達はお互いが交り合うように愛し合った。

過去幾人もの女と寝たが、シャロンほど素晴らしい人はいなかった。


お互いを求め、お互いを与える。


それは私にとって初めての体験。

これが愛し合うという事なのだ、と初めて知った。


私達は夜毎に愛し合った。

昼間も出来るだけ共に行動した。

手を繋ぎ、肩を寄せ合い、思い出したようにキスをした。


シャロンに愛してる、と言われると心が震えた。

私が愛してる、と言うと、シャロンはくすぐったそうに笑った。

その笑顔が愛しくて。

だからまた、愛してる、と言う。


愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる………


何度言っても足りないと思う位、私はシャロンに夢中になった。


その月の満月は、シャロンと過ごした。

もちろん月明かりが入って来ないように厳重に戸締りした上で。

私はシャロンと愛し合いながらその夜を過ごした。

少し頭は痛くなったが怒りが身を焦がす事はなく、もちろん変身する事もなかった。


「なんだか今夜は少し乱暴ね」


シャロンの言葉にドキッとしたが、笑顔を浮かべてこう言った。


「君が素敵過ぎるから」


シャロンはくすぐったそうに笑って、それから私の首に腕を回した。


「もう少し乱暴でもいいわ。とても刺激的だもの」


私達は微笑み合って口付けを交わした。

とても幸せだった。

シャロンさえいれば、これから全てが上手くいく。


私はそれを疑わなかった。

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