第11話


翌日、私達は森に出かけた。

シャロンに言われるままに薬草を摘んだ。


「これはなんという薬草なのですか?」

「カフタミラというの。咳が酷い時にこれを煎じた薬を飲むといいのよ。あっちのスカーショットはキズ薬。葉を揉んでそれを傷口に当てるだけで一応の止血もできるわ」

「素晴らしいですね」

「あなたの頭のけがを治したのもスカーショットよ」

「へぇ」


私はスカーショットのそばに行った。

葉の形に取り立てて特徴はない。

どこにでも生えていそうな丸い葉。

ただその小さな花は、確かに私が飲まされていた薬液の色と同じだった。

思い出すのも不愉快な、鮮やかな青緑。

今度この花を見たら避けて通ろう、と決めた。


カフタミラを摘みに戻る。

かご一杯になった所で、シャロンは家に戻る、と言った。


「もう十分だわ。余り採り過ぎると煎じきれない。帰りましょう」

「………あの、私はもう少しここにいたいのですが。いけないでしょうか?」


私の言葉にシャロンはすぐに頭を振った。


「いいえ。じゃぁ先に戻っているわ。そのかご寄越して」


私はシャロンにかごを渡した。

本来なら私がシャロンの分まで持った上で家まで送って帰るべきなのだろうが、今はやりたい事がある。

私はシャロンが見えなくなるまで見送って、村と反対側に足を動かし始めた。


しばらく行くと、森が途絶えた。

崖に行きあたったのだ。

覗きこめば、川がある。


私はしばらく考えて、下流に向かって歩き始めた。

川は大きく蛇行し、村に向かっていた。


「違ったか………」


私は時々川を覗き込むようにして探し物をしていた。

目的の物はもちろん、金貨の入った袋だ。

20枚、30枚も入っている袋が川の流れに流されたとは考えにくい。

だが、万が一、という事も考えられる。


私は来た道を戻り始めた。

かなり歩いた所で、崖が大きく抉(えぐ)れている場所があった。

どうやらそこから私は落ちたらしい。


また落ちては敵わないので、足場を確かめながら近寄った。

崖下を覗いても当然、袋は見えない。

私と一緒に落ちた土くれの下にでもなっているのではないか?との淡い期待も儚く消えた。

土くれは川の流れによって流され、きれいになくなっていた。


「………とすると……盗られたか?」


瞬間、シャロンの顔が浮かんだが、頭を振ってそれを否定した。


「確かもう一人、いたはずだ」


私を引き上げた、という魔法使いが。

シャロンはその人をまだ私に紹介していない。

まだ仕事が終わらず、村に戻ってきてないのだろう。


「もう少し探すか……」


私は今夜、もう一度ここに来る事にした。

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