月に恋した大莫迦者


 水面に浮かぶあなたを見て

 その輝きにときめいた

 水中へ飛び込んだって

 水の網に留められるのでしょう

 

 空に浮かぶあなたを見て

 その明るさに愛を見た

 空に手を伸ばしたって

 天蓋に阻まれるのでしょう


 遠くへと去るあなたを見て

 その姿に哀しさを覚えた

 私が手を振ったって

 日差しに隠されるのでしょう

 

 そうやって 後になって気付くのです

 水底からあなたが泳いでいたこと

 天蓋をあなたが開いていたこと

 日差しの中あなたが手を振っていたこと

 あなたは私を見ていたのですか

 私はあなたを見ていなかった

 見ていた自分ばかり私は見ていた


 だから私はあなたからこのまま永久に去るのです

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