行動開始です!
シオンはまた手紙を書いてリオンに渡した。
「騎士リオンには、急ぎこれを届けて欲しいの」
リオンは顔が引き攣った。
「えっ?また自分ですか?今度は別のヤツにお願いしたいなぁ~て」
また近い距離で皇帝陛下と謁見なんて無理っす!
しかしお嬢は無情だった。(ダジャレではない!)
「何いってんの!一度会った人間の方が相手は信用するでしょう?異議は認めません!」
「そ、そんなぁ~~」
騎士リオンはオリオン辺境伯が抱える騎士の若手のホープであり、子爵家の三男である。末端の貴族ではあるが、偉い人との謁見などプレッシャーに弱いのである。
ちなみに、お嬢………シオンは、まぁ、別枠で大丈夫である。普通の令嬢ではないので親近感があるためだ。
(それ褒めてる?)
「泣き言は言わないの。幸い、ここは帝都から近いじゃない。早馬で半日でしょう」
「うぅぅ、わかりましたよ~~」
「それと、今回は手紙を渡したらすぐに戻ってきて。リオンが戻り次第、行動に移るわ」
リオンは半ばやけくそ気味に返事をして、すぐに準備をして帝都へトンボ帰りしていった。
「ハルとアキには数日間、もっと証拠を集めて欲しい」
「お嬢様、今夜すぐ行動するのではないのですか?」
シオンは腕を組んで厳しい目で周囲をみた。
「私もすぐに助けてあげたいわ。でも、前回の下級貴族の男爵と違い、今度の相手は伯爵家よ。しかも、父親が帝都の王宮で官職を担っているほどの家柄。私の他国の爵位では、相手を平伏させる事が出来ないの。故に、皇帝陛下の許可が必要なのよ。それが、前回手紙で書かれた条件だったの。腐った貴族を裁いた件を不問とし、また同じ様に裁く時は、しっかりした証拠を揃えて、先に連絡を入れることのね」
ハルの拳に力が入った。
「かしこまりました!もっと決定的な証拠を見つけてきます!」
「うん、お願いね。後は、クズドラ息子の悪友達を調べて。何処で売られた女性達を、連れてきたのか調べないとね」
「「はっ!」」
そう言ったシオンだったが、思う所あり待ったを掛けた。
「待って、その悪友達については慎重に調べて。無理しなくいいわ。今回は伯爵家の不正の証拠を重点に調べてちょうだい」
「なぜですか?」
アキは不満そうな顔で聞き返した。
「あの蜘蛛の入墨をした奴らが絡んでいると、単独調査では危ないわ」
!?
「確かに手練れでしたな。しかも、集団行動の訓練を受けている暗殺者達でした」
あの時、実際に戦った護衛騎士の1人が呟いた。
「アキ、不満なのはわかるわ。でも、目的を忘れないで。今回は伯爵家にいる女性達の救出と、伯爵家の不正を暴いて、ゼファー子爵の令嬢との婚約を破棄させる事が目的なのよ」
シオンは優しくアキを抱き締めた。
そして、耳元で小さな声で伝えた。
「その怒りはそれまで取って置きなさい。領主の圧政で困窮し、仕方なく奉公に出向いた先で騙され、奴隷として売られて、先で言葉にできないほどの屈辱を味わっている女性達の苦しみと怒りを、決して私は許さない」
アキを抱き締める腕に力がこもる。
「私が日曜の王妃になったら、国の権力を使って必ず根絶やしにしてやるわ!」
その時、同じ部屋にいた仲間達は感じた。
シオンが1番怒っている事に。
まだこの国ですぐに動けないジレンマに、憤りを覚えている事に気付いたのだった。
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