尋問1

シオンが伯爵領でさらに行動を開始している頃、リオンはまた王宮に来ていた。


「あれ?先日来られた方ですよね?何かお忘れ物でも?」


「あ、いや、また申し訳ありません。また急ぎ皇帝陛下お目通りをお願いします。あ、手紙だけでも構いません」


リオンはバツが悪そうに門番の兵士に証明書と手紙を渡す。それを見た門番は一瞬驚いた顔をしたがすぐに案内した。


「シオン御令嬢の使者の方ですね。陛下からすぐに通す様に伺っております。待合室で少しお待ち下さい。陛下にお伺いしてきます」


王宮の待合室に通されるとリオンは内心でドキドキだった。


えっ?前回と違い本当に話が通っているの?そんなに簡単に国のトップに会えて大丈夫なの?と、どうでもいいことを考えていた。


ゼノン皇帝の元へシオンからの手紙が先に届けられていた。


「何と言うか、タイミングが良いのか、悪いのか………何故先日帰ったばかりで、またすぐ戻ってくるのか」


ゼノンはちょうど、宰相と打ち合わせをしており、一段落着いた所だった。


「この手紙を読むのが怖いのだが?」

「ええ、私も陛下と同じ思いです。また王宮が騒がしくなりそうな予感がしますな~」


とはいえ、読まなくてはならなだろう。

ペーパーナイフで封を切ると中身を読んだ。


手紙を読み終えた皇帝は手を顔に当てて、読んだ内容が本当なのかとしばし、現実逃避をした。


「読んでみろ」


宰相に手紙を渡すと、宰相も皇帝と同じ仕草をして頭を痛めた。


「予想通りに王宮を騒がしくさせる事案でしたな」

「予想以上だよ!何で先日の今日で別の事案を持って来るんだよ!」


いや、別に良いことではあるのだが!あるのだが、どうしてもう少し待ってくれないんだよ!

王宮騎士団の中隊、約半分近くが東部の男爵領に向かわせたばかりだぞ!?


「しかし、東部は他の地域より腐ってますな。許し難い諸行です!」


宰相は憤りを覚えていた。


「そうだな。憲兵と言うのは俺の直轄の【貴族】ですら裁ける裁量を持たせた、国の【秩序】を護る兵なのに、いつからそこいらの、ガラの悪い兵にまで質が落ちたんだ?クソッ!」


賄賂を貰い貴族の罪に目を瞑っていたなんて、国の行政が機能していないのと同じだ。


「ドラッグに奴隷にされた女性の暴行……クククッ、伯爵家が1つ断絶するな。あいつの父親は有能だから、ドラ息子の罪は多少は目を瞑っていたが………俺が甘かったみたいだ。宰相、すぐにワルヨノー伯爵を呼び出せ!」


すぐにワルヨノー伯爵は呼び出された。それと一緒に、リオンも同席するよう執務室にきていた。


『オレどうしてここに居るんだろう~空気だ。空気になるんだ』


リオンは自分は空気だと心の中で唱え続けていた。


執務室には両手を騎士2人に掴まれ、連行されたワルノヨー伯爵がいた。


「へ、陛下!?これはいったいどういう事でございますか!」


どうして自分が連れてこられたか、わかっていない様子だった。


「黙れ………それはこっちのセリフだ」


冷酷皇帝と言う二つ名に相応しく、大きな声ではないのに、凍えるような低い声だった。この一言で、皇帝でどれほど怒っているのか察する事ができた。


「ひっ、わ、私が何か気に触る事をしたのでしょうか?」


怯えながら尋ねると──


「先に確認する。お前は何処まで関わっている?」


リオンと宰相は意味を察したが、伯爵は何の事だと言う顔だった。イラッとした表情で皇帝が言った。


「お前のクズドラ息子の罪についてだ」


!?


ようやく伯爵も何かわかった様な顔を見せた。


「た、大変申し訳ございません。確かに不肖の息子は【過去】に平民相手に暴行しました。なので、屋敷に閉じ込めて、領主としての仕事をさせおりましたが………」


「そんな事はずっと前から知っている!あれだけ騒ぎになっているんだぞ?お前の領地では、美しい女性は拐われると、フードを被って生活しているそうだな。初めてお前の領地に行った者は、何かの宗教でも流行っているのかと驚いたそうだぞ?」


リオンはダラダラと汗を掻いていた。


『お嬢!そんな事まで手紙に書いていたんですか!?』


「そ、それは昔の話ですよ。今は改心して──」

「騎士リオン殿!教えてくれないか?ワルノヨー伯爵の領地の話を」


ここでオレに話を振るのか!?

これオレが伯爵に恨まれるパターンじゃ………


一瞬そんな事を考えたが、奴隷にされた女性達の事を思い気合いを入れ直した。


「初めまして、ワルノヨー伯爵。私は、【とある妃】様に仕える護衛騎士なのですが、帝都に向かう途中に、貴方の領地を通りました。皇帝陛下の仰る通り、今だに街の女性がフードを被っているのはどうしてでしょうか?」


リオンの言葉に伯爵は言葉を詰まらせた。


「そ、それは大変遺憾ではありますが、過去に起こした息子の諸行に恐れているからだと思います。息子はここ数年は屋敷の外に出ていないと、監視の為に付けた者から報告が上がっていますので」


リオンは大きなため息を付いた。

確かに本人は屋敷から出てないだろう。

そう本人はだ。買収されたクズ達で、オコボレを貰っていた配下が、今だに人攫いの様な事をやっているのだ。だから、今だに女性達はフードを被って外出するしかないのだよ。


まったく胸糞悪いぜっ!






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