子どもの頃は
ログは小さな頃、とても活発な少年だった。
好奇心旺盛で、目に映るもの全てに興味を示して駆けて行くような子供だった。
特に未知の存在や美しいものを捕まえるのが好きで、町はずれの河原に落ちていた綺麗な石や野原に咲く花、美しい蝶々なんかを手に入れて、よく家に持ち帰っていた。
机の中にカマキリの卵をしまい込んで叱られたことも何度もある。
また、ログは一人で遊ぶのも好きだが友達と遊ぶのも大好きな子で、子どもの集団に突撃して行って、
「一緒に遊ぼう!」
と、誘える子だった。
毎晩、次はどこへ遊びに行こうか、誰と遊ぼうかと考えながら眠るのが好きだった。
そんな日々に変化が生じたのは十二歳の頃だ。
ある日、唐突に今まで大切だったはずの全てがどうでもよくなってしまった。
机に溜め込んでいた美しい石ころ。
夜通し孵化するのを見守った後、記念に貰った蝉の置き土産。
姉に手伝ってもらって作った押し花に兄と協力して完成させた模型。
そのどれもに思い出が詰まっているというのに、ガチャリと机の棚を開けて貯め込んできた宝物を見た時、ログは、
「ゴミが詰め込まれている」
と思ってしまった。
大切だったはずなのにゴミだと思えてしまったことがショックで、ログはブンブンと首を振った。
そして、数ある宝物の中でも特に大切にしていて机の奥にしまい込んでいた石を取り出した。
昔、家族で海に行った時に拾ったシーグラスは薄緑色をしていて、自分の瞳とお揃いの色をしている。
数日前まで、ログの目には宝石のように映っていて、大切に磨いたり太陽にかざしたりしていたログの宝物だ。
だが、いつものように太陽に透かしてステンドグラスのようになるのを眺めてみても、真っ暗な物置の中で石に光を押し当て、周囲を緑色の光で照らすのを見てみても、ログの心臓はドキドキと鳴らなかった。
つまらない、ただのゴミに思えた。
要らなくなってしまった。
要らなくなってしまったから、部屋がゴミで溢れるのが嫌だったから、ログはたった一日で全てを捨ててしまった。
必要な者だけ残した部屋は伽藍洞だ。
ポスターや写真を剥がされた斑模様の壁紙。
埃の積もる窓。
中身を失った、元宝箱の机。
物を捨て去った後、ふと、昨日までは大切だった友達も要らなくなっていることに気がついた。
捨てたのは自分なのに、捨てたものをもう一度ほしいとは思えなかったのに、ログは酷く寂しくなった。
何か大切なものを見つけたくて、しばらくは探し歩いたが、興味を感じられるものを一つも見つけられないまま時を過ごした。
十二歳以降のログの机には、ほとんどものが貯まらない。
恋人、親友、悪友。
そういった特別といえる人間関係を何一つ持っていない。
夢も欲も無い。
ログは空虚で寂しいだけの自分に嫌悪感を覚え、つまらないだけの時間を過ごしていた。
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