4/15(土)宣告
面倒で、消えたくなりそうなそんな私を爪はじきにする日常。私はその日常が大っ嫌いだけれど、こんな非日常、見たくもなかった。
「あなたは、忘却病です。」
電話を通して、まず聞こえてきたのはそんな声だった。
最近、物忘れというか、自分がわからなくなるというか、そんな感覚を覚えて認知症化と怖くなって。それで病院を受診した結果だった。明日詳細を話すとか人の気持ちも考えないで言って。ねぇ、そんな口頭で済ませられない病気なの?
嫌な予感を感じて受話器を肩にはさみながらタタタとスマホに指を走らせる。
忘却病、とは。検索して出てきた一番上のを見て、絶句した。
「段々と自分を忘れていく病。消える間際には自分のことを認識すらできなくなり、自我が消え去って、満月の夜に月に召されるようにして霧散する。」
ほかのサイトも言っていることは大体同じだった。まぁ……ネット情報だから多少の誇張表現はされているだろう。
けれども、背筋を冷や汗が走った。その症例と私の不安は揃いにそろっていたのだ。
絶望の瞬間は一瞬。だなんて言うけれど、
受診したのはただのストレスから。物忘れも別に少ないほうじゃない。
きっとただの誤診だ。そう断ずることにする。これはまだ、一回の問診に過ぎない。きっと明日誤診断だと言ってくれる。
━でももし本当だったら?
私が消えるってことは、私は
それは嫌だ。私が生きた証を現実に残したい。
日記を書こう。ふと思いついた。
信じちゃいないさ。ええ、信じないとも。だけど私、我儘だからさ。もし本当だったら明日も私の私が消えるってことでしょう? それならその日の私を文章にして残してやろうじゃないか。何も残さないなんてするものか。
誤診だったら笑い飛ばしていい生活習慣として続けれてやればいい。自分にとびきり明るくふるまうことで不安を閉じ込めて、私はそのまま文房具屋に走った。
4/15(土)
最近私のことのことが分からなくなって病院を受診したら、その結果が帰って来た。忘却病、らしい。あぁ、信じてないけどね。これは私が逝く時に誰かに私の事を覚えてもらいたいっていう勝手な欲から書く。でもね、もし本当だったなら未来で過去の私を思い出すためにもこうやって日記を綴ることにする。
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