徹夜するよりも休息とるほうが効率はいい。
無事に業務を押し付けた俺は自宅へと戻り荷物をまとめて街を出た。氷山は遥か北の地にあり、アイスドラゴンの討伐は支部長に伝えたように最低2か月はかかる長期依頼である。
まず山地部の麓まで行くのに3週間、入山してから討伐が完了するまでが2週間で帰り道に3週間はかかる。これを半月は普通に考えて頭のおかしい工程としか言えない。
ただあのクソ上司の言う通り、他の人間には不可能でも俺ならば可能だ。自慢ではないが速さというジャンルにおいては冒険者を含んだ第3支部のみならず、全支部を含めて並ぶ人間はそうそう存在しない自負がある。
その理由は俺が持つ固有魔術、
魔術には理論上は学べば誰でも扱える汎用魔術、生まれつき発動することが出来る特権魔術、術者の人生や価値観により生み出される固有魔術の3種類が存在する。汎用魔術は秀才の魔術、特権魔術は天才の魔術、固有魔術は変態の魔術と揶揄されることが多い。
固有魔術だけ悪口じゃねえか。といつも思うが、強い感情や渇望などが起因となって生み出される為、普通の人生を送っている人間には発現しないから言い返せない。
話はそれたが、
……散々飲んでいるので今さらだが、商品名もっと良いのなかったのかよ。効き目がありすぎるから凄く不安になるんだよ。
そんなこんなで不眠不休で全力疾走を続けること3日、予定よりも早く氷山の麓町であるエストに到着した。ただ天気はあいにくの猛吹雪。顔に吹き付ける雪で正面の視界が遮られるが、とりあえず入山にあたっての許可証取得と現地のガイドを雇いに行く。
「山に入ってアイスドラゴンを狩りてぇだ? 馬鹿言うんじゃねえよ。見て分かる通り、今は大吹雪が来てんだ。雪山に慣れてる俺たちですら100%遭難する。悪いことは言わないから吹雪が止んでからにしとけ。」
開口早々ガイドのおっさんからは猛反対をくらった。とはいえこちらとら他支部からは職員じゃなくて冒険者やれよと言われる猛者ぞろいの第3支部最速の男。舐めてもらっては困る。
その後も押し問答を繰り返し、最終的には自殺したけれりゃ勝手にしろと許可証だけは勝ち取ることができた。やけに目の下の隈と充血した目を気にされたが、深く考えずそのまま氷山へと足を踏み入れていく。4から5合目あたりからアイスドラゴンが目撃されるとの情報は仕入れていたので、3合目でテントを張り翌日以降に備えて一度睡眠をとることにした。
「……なんでこんな吹雪の時に入山しちまったんだよ。」
4日目。最悪な自己嫌悪から1日が始まった。
闇より黒いブラック上司への下克上 @nao74
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