第23話 まとわりつく悪意

見られている。

ここ数日、蓮司はずっと視線を感じていた。

帰り道、買い物途中、夕方のジョギングの最中、それはずっと付いて回っていた。

鬱陶しく感じた蓮司は一度辺りを探し回ったのだが、視線の主を見つける事は出来なかった。

(気配はあるのに位置が掴めない……でも姿を隠す異能という訳じゃないな。どっちかというと原因はこっち。感覚が鈍らされているような…)

いずれ相対した時の為に蓮司は現時点で分かっている情報をしっかりと頭に刻むのだった。



(流石に登校までは付いて来ないか。)

朝、いつもより周囲に気を配りながら学校へと向かう蓮司。

配信直後のように人が多く集まって来る事は無かったのは幸いだった。

(先生や夜凪さんのおかげだな…後でお礼言わないと)

そんな事を考えながら下駄箱を開けると

「……っ、これは」

そこには、ズタボロに切り刻まれた蓮司の上履きがあるのだった。



「故障?監視カメラがですか?」

ひとまず教師を呼び、状況を報告した蓮司は生徒指導室へと招かれていた。

昨今、異能者が増えた事による治安悪化を踏まえて、公共施設の警備、及び監視は厳重になっている。

特に教育機関はそれが顕著だ。

異能を使ったいじめ問題は未だに解決していない社会問題の一つでもある。

いじめがエスカレートした結果それがそのまま殺人へと繋がる事も珍しい事ではなくなっていた。

いじめ被害者が加害者に反撃した結果、死人が出る、という事例も多い。

故に、プライバシーをある程度守りながらも学校施設内の監視は社会的に容認されていた。

だからこそ蓮司の通う学校も、そういった機材のメンテナンスは一切手抜かりは無かったのだが…

「あぁ、そうなんだ。早朝の6時から15分ほど、一部の監視カメラが映像を記録していなかった。」

教師の話では裏口、廊下、玄関、校門の順番で、カメラの映像がノイズにまみれて使い物にならなくなっていたらしい。

「警備の人とかはいなかったんですか?」

「守衛とかはうちの学校は居ないからな…門に教師が立つのもこの時間よりずっと後だし…」

一部の大型校ならまだしも、一般的な学校は校門付近に守衛等は置いていない。

それを補う為の監視カメラや内部巡回なのだが、カメラは潰され、警備の隙間を突かれた。

早めに出勤しなくてはならない教師の為に、裏口が開けられていたのもおそらく犯人は知っていたのだろう。

(なるほど、登校時間は気配が無かったのは下見の為か…)

「柊、何か心当たりがあるのか?」

「実は…」

蓮司は最近視線を感じていた事を教師に相談する。

「なるほど…そんな事が…」

「実際同じ人間かは分かりません。感覚に乱す異能と、電子機器に干渉する異能、一人で二つの異能を持つ人間は存在しない以上、別々と考えるのが普通です。でも…」

「柊はそう考えてない…んだな?」

「はい、共犯なのか、何か別のカラクリがあるのか…」

「ふむ……ひとまず、校内外で警戒はするが、お前も気をつけるんだぞ?今お前は特に有名で敵も現れやすい。理解出来ない理屈で攻撃される事もあるだろうからな。」

「はい、わかりました。」

そう言って生徒指導室を後にする蓮司。

(一時間目、受けれなかった…後でノート見せてもらえるかな…)

そんな事を考えながら教室のドアを開ける蓮司。

「おはよ──」

「柊!大丈夫だったか!助けてくれ!」

「……へ?」

まさかの心配と同時に助けを請われるという状況に間の抜けた声を出す蓮司。

どういう事かとクラスメイトに尋ねると、おそるおそるその原因へと目を向ける。

蓮司もその視線を追うとそこには。

「……………」

尋常ではない怒気を放つ、夜凪都香沙の姿があるのだった。



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短いですが今回はここまで。

そろそろヒロイン出さないとね。

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