第20話三大クランと勇者パーティーの勧誘

ミネルヴァ施設2階。

イートインスペースの一角は異様な雰囲気に包まれていた。

理由は明白、窓際の席に座る5人の男女。

知る人ぞ知るどころか、その知名度は下手なアイドルよりも高い集団。

「それじゃ、改めて自己紹介!私は上名延珠!勇者パーティーのリーダーやってます!」

ニコニコと笑う少女は国内魔物討伐数一位、勇者パーティー所属、『勇者』上名延珠。

「では次は僕から。クラン『白皇』のクランリーダー、皇 すめらぎあきらだ、よろしくね。」

次に自己紹介したのは白い制服姿の金髪の青年。

爽やかな風貌と穏やかな声音。大企業、皇コーポレーションの一人息子でありながらそれを一切ひけらかさない事から男女問わず高い人気を誇る男だ。

「んじゃ次は俺だな!クラン『蒼穹』のクランリーダー、藤宮 玄太ふじみや げんた!よろしく頼むぜ!」

ゴーグルに昔の飛行機のパイロットスーツのような衣装を着ているのはクラン『蒼穹』のリーダー、藤宮玄太。

未踏破ダンジョンや、大規模ダンジョンでの長期連続活動に重きを置いている、ある意味で最も探索者らしいクランと言える。

「では、最後に私が。クラン『神凪』の長を務めさせて頂いております、鳴上 杏奈なるかみ あんなといいます。以後、お見知り置きを」

最後に名乗ったのは巫女服を纏った女性。

穏やかな雰囲気と落ち着いた佇まいはまさに巫女。

クラン『神凪』は駆け出しからベテランまで、幅広い探索者の支援活動が活発なクランであり、同時に異能を使った犯罪や事件への対処、イレギュラーによる周辺への被害抑制など、公的組織に次いで治安維持に貢献しているクランである。

「えと、柊蓮司です、よろしくお願いします。」

錚々たる面々に気圧されながらも自己紹介と挨拶を済ませる。

「よーし!自己紹介も済んだところで、早速本題に入りましょう!」

ぱん、と手を叩いて場を仕切る延珠。

「単刀直入に!柊蓮司君、君は誰かとパーティを組んだり、クランに入るつもりは無い?」

「え?」

「我々4人は、君を勧誘しに来た、という事だよ。」

延珠の言葉に呆気に取られる蓮司。

それを苦笑しながらフォローする明。

「あなたの力は得がたい物だと我々は考えています。新人探索者のサポートによる生存率の上昇、モンスター討伐によるイレギュラーの事前対策。優れた探索者が1人増えるだけで、今言った事柄以上の恩恵が受けられます。」

「未踏破領域の探索も中々悪くねぇと思うぜ!あんたの配信見たがよ、あの目は根っからの冒険好きじゃなきゃ出せねぇ目だ!うちのクランならお前の言ってた、見た事無いものを見たいって奴を嫌って程叶えられるぜ!」

効率良く恩恵の面でプレゼンしてくる杏奈と、蓮司の望みを聞けるという面で勧誘してくる玄太。

「柊君、僕は君に最大限の報酬と自由を約束しよう。もちろん、クランとしての義務はあるが、それ以外なら君の好きにして貰って構わない。どうかな?」

「あ!うちも待遇なら負けないよ!それに、世界を股にかけてダンジョン事故防止の為にモンスター討伐するから、旅行も冒険もし放題!それに、ひっきりなしに旅する訳じゃないから、基本自由だし、報酬もガッポガッポだよ!」

負けじと、明と延珠も勧誘してくる。

ぐいぐいと圧力をかけてくる4人に、若干気圧されながらも蓮司は声を出す。

「……すいません、今はその、クランとかパーティとか、そういうのは考えてなくて…最近、なんとなく探索の楽しさとか配信ってこんな面白いんだって分かって…もう少し、今のままやりたいなって考えてるんです…だから、皆さんのお誘いは受けられません、ごめんなさい!」

そう言って、ぺこり、と頭を下げる蓮司。

それに対し四人は​、

「だと思った!」

「やはりそうかい」

「致し方ありませんね」

「ま、それもひとつの道だわな!」

と、あっけらかんとそう返すのだった。




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お待たせして、かつ短くてすいません。

体調を崩しておりました…皆様も尿路結石には気をつけて。

ではまた次回に。

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