第17話 エピローグ1 彼の家族と彼女達
「ただいまー」
何とかコメント欄と都香沙の協力の元、無事に配信を終えることが出来た蓮司は、ミネルヴァにて素材を売却し、自宅へと到着した。
「おかえりなさい蓮司、配信、見てたわよ!」
「良くやったな、蓮司!父さん鼻が高いぞ!」
帰って来た蓮司を両親である天音と虎雄が出迎える。
「なんだか恥ずかしいなそれ…」
照れ臭そうに返す蓮司だが、どこか浮かない表情を浮かべていた。
「どうした蓮司?どこか痛めたのか?」
「怪我したの!?」
心配する二人に、蓮司は首を横に振り否定する。
「いや、違うんだ。その…道場の為に配信するって話だったのに、相談も無く、勝手な事しちゃってさ…ごめん。」
そう言って俯く蓮司に、二人は一瞬きょとん、とするが、すぐに穏やかに微笑む。
「気にしないでいいのよ。貴方がそうしたいと思ったのなら、その道を進みなさい。」
「そうだぞ蓮司!最初は乗り気じゃなかったお前が、最後には楽しいとまで言ったんだ。」
虎雄はぽん、と蓮司の頭に手を乗せる。
「子供の楽しみを、親が奪ってどうするよ。お前の楽しみに相乗りさせてもらってる身で偉そうな事は言えないが、どうあれ、お前がやりたいと思った事を見つけたんだ。それを応援しないなんて、親からすればありえんよ。」
ぽかん、と口を開けて驚く蓮司。
そして直後に、笑みがこぼれる。
「……ははっ、そっか!」
そう笑って、蓮司は安堵する。
こうして、柊家の夜は更けていくのだった。
「でもお前ボタン配置忘れるのはどうかと思うぞ」
「父さんにだけは言われたくない」
「この前ガスコンロに怯えてたもんね〜」
「母さん!それ内緒!」
一方その頃、夜凪家では事件が発生していた。
「見て!ここ!ここ見てほら!凄い鮮やかでしょ!しかも表情も素敵!あと髪!髪の質感が凄い良いわ!!」
「都香沙、落ち着きなさい、もう分かったから…あと、髪の質感って、柊君別にCGじゃないんだから。」
「あと笑顔!いい笑顔!」
「母さん、都香沙が話聞いてくれない!」
夜凪都香沙、崩壊。
配信中から崩壊し、終盤理性を何とか取り戻したものの、配信終了後に一瞬機能停止。
10秒後に再起動したかと思うと怒涛のアーカイブリピートが始まったのだ。
「はァァ!こ、これは、このお宝映像が無料で見られるの!?どうなってるの!?」
「いつも都香沙が使ってるサービスだろ…?」
「都香沙〜近所迷惑になるから、大声は控えなさ〜い?」
「いつものお姉ちゃんだ!」
半狂乱で蓮司な配信を見直す都香沙に危機感を覚える父と、やれやれと言った様子の母。
そして何故か安心する妹。
「はぁ〜いい匂いする…」
「液晶画面だぞ…?」
とうとうありえない匂いまで感じ出す娘に戦慄する父。
(…柊君、こんな娘だけど、何とかよろしく頼むよ…)
心の中でため息を着きながら、蓮司にそう懇願するのであった。
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