第3話

 ナギは剣を構えて、蛇の魔物に対峙する。蛇の魔物は紫色のオーラを纏い始めると、急に毒霧のようなものを吹きかけてきた。その毒霧はナギとマキを包み込むように、広がってくる。


「えっ?」


 ナギが驚いた時には、もう既に毒霧は二人を包み込んでいた。そしてすぐに体に異変を感じる。皮膚の表面がチクチクと刺されるように痛み、痺れ始めたのだ。恐らく毒霧のせいだろうと思うと同時に、ナギはマキの魔法を思い出す。


「マキ! 『プチキュア』を唱えて! 毒の回復ができるはずだ」

「わかりました!」


 マキはナギの指示に従い、『プチキュア』を唱えた。だが、魔法を唱えても毒霧の影響は全く変わらない。むしろ先程よりも痛みが強くなってきたのだ。この事態に二人は戸惑いを隠せない。


「なんで治らないんだ。まさか、この毒霧は魔法を封じる効果も持っているのか?」

「そんな魔物いるんですか?」

「わからない」


 マキがナギの疑問に答えている間に、蛇の魔物はさらに攻撃を仕掛けてきた。飛びつき噛みつこうとした蛇の魔物をナギはなんとか剣で薙いだ。だが、その攻撃は無駄に終わる。蛇の魔物に与えられた傷は浅く、その傷もすぐに元通りに再生したからだ。


「物理攻撃でも回復してしまうのか」


 ナギは悔しそうに剣を構えると、蛇の魔物は再度攻撃を繰り出した。だが、蛇の魔物の攻撃は今度はナギに当たらない。


「危ないです!」


 マキが咄嵯に魔法を唱えたからだ。マキはナギが蛇の魔物と戦っている隙に、SP5で『プチファイア』という魔法を習得していた。その攻撃によって火球を食らった蛇の魔物はかなりのダメージを受けたようで、川の方へと後退し始める。


「逃がすか!」


 ナギは『身体強化Ⅰ』と『剣術I』のスキルを発動する。体に力が漲るのを感じ、剣に全身全霊を懸けて集中する。大きな一歩を踏み出し、そして、蛇の魔物に向かって剣を振り抜いた。


 その攻撃は確実に蛇の魔物にヒットし、その体を一刀両断することに成功する。


「やったか?」


 蛇の魔物はまたしても再生を始めた。だが、今度こそ蛇の魔物は絶命することになった。


「喰らいなさい、プチファイア!」


 マキの火の魔法が蛇の魔物を包み込んだ。火に弱いのか、蛇の魔物は焼けただれた状態になり、そのまま動かなくなると霧散するように消えていった。その場には焼かれた肉の塊と皮が残っていた。


「クエストクリアだね」


 ナギは一息ついて、その場に座り込んだ。マキもそれを見て、同じように座る。マキは口を開くと感想を述べた。


「すごく強かったですね」


 ナギもそれに頷く。二人は満身創痍になりながらも、なんとかこのクエストをクリアできたことに安堵した。そして、改めてステータスを確認した後、手に入れた素材と肉を回収した。


「この肉は食べれるのか?」


 ナギはマキに聞く。例えばゲームの世界では魔物の肉や蛇の肉でも食べるという選択肢もあるだろうが、現実世界では食べることを拒否するのが普通だろう。だが、二人は今、飢えていた。この蛇の魔物が落とした肉に毒があるかもしれないということも、頭のどこかでわかっていた。それでも、二人はその肉を口に運ぶことに決めた。


「はい、報酬のダガーナイフです」

「ありがとう」


 モンスター討伐クエストのクリア報酬として手に入れたダガーナイフをマキはナギに手渡した。ナギはそのダガーナイフで肉を小さく千切ると、恐る恐る口に含んだ。そしてゆっくりと咀嚼する。毒があるかもしれないので、慎重に味を確かめるように噛み締めた。だが、特に変な味がすることもなく、食べられそうだと判断したナギは噛みちぎった肉を飲み込んだ。


「どうですか?」


 マキは心配そうにナギに尋ねた。すると、ナギは少し顔を引きつらせながら答えた。


「うん、普通だな」

「……そうですか。しびれたり、苦しかったりはしませんか?」

「ああ、平気だぞ」


 ナギがそう返事をすると、安心したようで、マキも肉を食べ始めた。そして二人共食べ終わると、再度ステータスを確認する。


 ―――――――――――――


 ナギ

 職業:剣士

 レベル:7.up↑(223/340)

 SP:22

 体力:32

 武力:48

 知力:16

 魔力:16

 スキル:『身体強化Ⅰ』『剣術Ⅰ』

 魔法:なし

 加護:『武術の天賦』

 称号:なし


 マキ

 職業:魔術師

 レベル:7.up↑(173/340)

 SP:16

 体力:16

 武力:16

 知力:48

 魔力:32

 スキル:なし

 魔法:『プチヒール』『プチキュア』『プチファイア』

 加護:『魔術の天賦』

 称号:なし


 ――――――――――――――


「SPが結構増えているな」

「そうですね、4レベルも上がりました! ステータスも上昇してますね」

「体がまた軽くなった気がするよ」


 今回のクエストの報酬として経験値を得たが、経験値は報酬の50pよりも獲得していた。恐らく蛇の魔物を討伐したからだろう、とナギは推測しつつ、先の蛇の魔物との戦闘を反省した。


「薬草の採取に夢中になって、SP振りをしていなかったのがよくなかったな。今のうちに新しいスキルや魔法を習得してしまおうか」

「そうですね。私が新しく習得した魔法『プチファイア』がトドメになりましたし」


 二人は新しく魔法やスキルを習得することにし、本を開けた。すると、前よりも多くのスキルや魔法が解放されていて二人は驚きの声を上げる。


 ――――――――――――――


 取得可能スキル

 消費SP1:『身体強化Ⅰ』『剣術Ⅰ』

 消費SP2:『身体強化Ⅱ』『剣術Ⅱ』

 消費SP3:『身体強化Ⅲ』『剣術Ⅲ』

 消費SP4:『身体強化IV』『剣術IV』『カウンター』『竜鱗防御』

 消費SP5:『身体強化V』『剣術V』『ソードガードⅠ』『スラッシュ』

 消費SP6:《剣豪Ⅰ》《二段斬り》

 消費SP7:《剣豪Ⅱ》《ソードガードII》

 消費SP8:《剣豪Ⅲ》《カウンタースラッシュ》《竜鱗防御・破》

 消費SP9:《剣豪Ⅳ》《断罪の一撃》《身体強化・上》

 消費SP10:《限界突破》《剣豪V》《魔力斬撃》

 消費SP11:〚剣聖Ⅰ〛〚ソードガードⅢ〛〚三連破斬〛

 消費SP12:〚剣聖Ⅱ〛〚竜鱗防御・滅〛

 消費SP13:〚剣聖Ⅲ〛〚ギガスラッシュ〛

 消費SP14:〚剣聖Ⅳ〛〚見切り〛〚身体強化・超〛

 消費SP15:〚剣聖Ⅴ〛〚限界突破・改〛

 消費SP16:【剣王Ⅰ】【四連刻】

 消費SP17:【剣王Ⅱ】【大車輪】

 消費SP18:【剣王Ⅲ】【風花雪月】

 消費SP19:【剣王Ⅳ】【国士無双】

 消費SP20:【剣王Ⅴ】【九蓮宝燈】

 消費SP21:〘剣神〙〘終末剣=ラスノート〙


 取得可能魔法

 消費SP1:『プチヒール』

 消費SP2:『プチキュア』

 消費SP3:『サーチ』『魔弾』

 消費SP4:『ウォール』『カウンター』『ヒール』

 消費SP5:『プチファイア』『プチウォータ』『プチヒウィンド』

 消費SP6:《キュア》《フォース》

 消費SP7:《エリアヒール》《ファイアウォール》

 消費SP8:《ウィンドスラッシュ》《ウォーターバインド》《エリアキュア》

 消費SP9:《エリアサーチ》《ファイアストーム》

 消費SP10:《メテオ》《リジェネ》

 消費SP11:〚賢者Ⅰ〛〚アイススピア〛〚サンダーボルト〛

 消費SP12:〚賢者Ⅱ〛〚アイスレイン〛〚ヒールラ〛

 消費SP13:〚賢者Ⅲ〛〚落雷〛〚キュアルラ〛

 消費SP14:〚賢者Ⅳ〛〚遠雷〛〚絶対零度〛

 消費SP15:〚賢者Ⅴ〛〚アイスストーム〛〚サンダーストーム〛

 消費SP16:【賢王Ⅰ】【ホーリー】


 ――――――――――――――


 ナギはマキに向かって嬉々として告げる。


「めっちゃスキルも魔法も解放されてるな」

「そうですね。どれを選べばいいのやら」


 二人は合計で4ページに渡る取得可能スキル・魔法とにらめっこして、新たに習得するスキルや魔法を選び始めるのだった。

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神と旅する異世界クエスト 空色凪 @Arkasha

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