第2話

 ナギとマキは新しく現れたクエスト内容を眺めて、思案していた。


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 クエスト:武神の宝玉を手に入れろ

 達成条件:武神の宝玉を手に入れる

 報酬:経験値5000P、アイテムボックス


 クエスト:薬草採取

 達成条件:セツの森にある薬草クルツ草を採取する

 報酬:経験値30p、アイテムボックス


 クエスト:モンスターハント

 達成条件:魔物を1体討伐する

 報酬:経験値50P、ダガーナイフ×2


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「武神の宝玉のクエストは、報酬が経験値5000pだからまだ先なのかもね。その前に他にもたくさんのクエストをクリアしていくんだと思う」

「私もナギの意見に賛成です。ならば、薬草採取からでしょうか。私、アイテムボックスが気になります」

「僕たち、鞄すらないもんね。マキって、魔法ってまだ使えないの?」

「はい、まだやり方がわからないですし、恐らく『プチヒール』も『プチキュア』も治療の魔法ですので、使う機会もなかったですから。ですが、薬草採取でレベルが上がれば攻撃魔法も取れると思います」

「わかった。薬草の絵がクエストの下に記されているから、探しながら歩こうか」


 当面の活動方針が決まり、二人は紫色のゼンマイのようなクルツ草を探す。だが、一向にクルツ草は見当たらない。


「この森暗いから、探すの難しいね」

「そうですね。足場も悪いですし」


 ナギの苦言にマキも頷いて応えた。クエストにはクルツ草の採取とあるだけで、手がかりは絵しかない。黒と紫が入り混じったゼンマイのような茎に、緑色の葉が巻きついている。その葉は細い葉っぱで細かいギザギザがある。


 だが、それらしきものは見つからない。薬草というくらいなのだから、その特徴や採取場所の目安などの情報もあってもよさそうなものだ。二人は少しずつ場所を移動しながら探していく。だが、結局ナギとマキはその薬草クルツ草を見つけることができなかった。


「お腹へったね」

「そうですね。喉も乾いたし、私は足も痛くなってきました」

「平気なの?」

「大丈夫です。それより、森に入ってから一度も魔物に遭遇してないですね」

「そうだね。森は広いし、そう簡単に魔物や動物と遭遇する訳でもないみたいだね」


 二人はなんとなく空を眺めた。すでに空は暗くなり始めている。二人は夜の森を歩くのは危険だと感じていたが、行く宛もない。


「夜はどうしますか?」

「木の洞で寝ようか」

「分かりました。魔物に襲われないことを祈りましょう」


 二人は木と木の間に、ちょうど子供が入れそうな穴があるのを見つけた。ナギはそこに入り込み、マキも後に続いた。二人がすっぽり入ると隙間もないが、二人は寄り添うように、並んで座った。


「少し寒いですね」


 マキが寒そうにするのを見て、ナギは抱き寄せようか迷うが、そうはしなかった。だが、マキとナギの体温ですぐに洞の中は暖かくなっていった。二人は身を寄せ合い、静かに座っていた。日が落ち、空には星が瞬く。マキは洞から覗く空を見上げながら呟く。


「星が綺麗です」

「そうだね。なんかすごい景色だよ」


 二人はそのまま静かに夜を過ごした。


 次の日も朝早くから歩き続け、クエストを達成するためにクルツ草を探したが、やはり見つからないまま昼になった。


「流石にお腹が減ったな」

「そうですね。喉もカラカラです。どこかに水場があればいいのですが」

「あれ、川の音しない? そっちに行けばあるかな?」


 ナギとマキは微かに聞こえる水の流れる音を頼りに歩き出す。すると、森の先に小川を発見した。


「水、綺麗ですね!」


 マキは川の水をすくって口に運ぶと、ごくごくと飲み干した。ナギも飲んでみたが、透明な水は冷たくて美味しい。ナギが水を飲んでいる間、マキは川岸に生えていたクルツ草に似た薬草を見つけていた。


「これ、もしかしてクルツ草? ナギ、これじゃないですか?」

「ほんとうだ」


 マキに手招きされたナギは、急いでその岩場へと向かう。するとそこには本に描かれていたものと全く同じ形や色の草が生えていた。この薬草はどうやら本当にクルツ草のようだ。


「やった。クエストクリアだな!」


 ナギとマキは手を繋ぎながら、喜び合った。すると、本が光りだして、黒い鞄が二人の前に浮かんで現れる。


「これは?」

「クエストクリア報酬のアイテムボックスだよ、きっとね。何か入れてみよう」


 ナギは黒い鞄を手にすると、クルツ草を入れた。すると、本がまた光りだして、次のような文字が現れた。


 ――――――――――――――


 クルツ草(1)

 ランク:ノーマル

 詳細:湿気のあり、日の当たる場所に生える薬草。傷口に当てると治癒速度が上がる。鎮痛作用あり。


 ――――――――――――――


 どうやら本にアイテムボックスの中身が表示されるらしい。鑑定のように情報を教えてくれもする。ナギは便利だなと思った。そして、ナギはアイテムボックスからクルツ草を取り出すと、マキに手渡した。


「足、痛いんだよね。足に当てたらどうかな」

「ありがとうございます。使ってみますね」


 彼女はクルツ草を自分の足に当てる。すると、たちまち痛みはなくなったようだ。マキは嬉しそうだった。


「今、クエストをクリアしたってことは、レベル上がったんだよね」

「そのはずです。確認してみましょう」


 ―――――――――――――


 ナギ

 レベル:3(40/50)

 SP:10

 体力:26

 魔力:13

 武力:39

 知力:13

 スキル:『身体強化Ⅰ』『剣術Ⅰ』

 魔法:なし

 加護:『武術の天賦』

 称号:なし


 マキ

 レベル:3(40/50)

 SP:9

 体力:13

 魔力:26

 武力:13

 知力:39

 スキル:なし

 魔法:『プチヒール』『プチキュア』

 加護:『魔術の天賦』

 称号:なし


 ――――――――――――――


「レベルが上がって、ステータスも上昇してますね」

「そうみたいだね。次は食事をどうしようか」


 まだ食事の目処もたっていないことを思い出して、二人は肩を落とした。だが、しばらくするとナギが川岸に生えているクルツ草を見て言う。


「もしかして、ここにあるの全部クルツ草かも」

「たしかに、そうみたいですね」


 ナギとマキはアイテムボックスに次々とクルツ草を詰め込み始めた。どうやらこの沢には沢山の薬草があるようだ。結局、全部で50本くらいんのクルツ草を集めた。


 一帯に生えていたクルツ草を集め終わり、二人が沢の石に腰掛けて休憩していると、川の中から何かが飛び出してきた。それは黒く細長い蛇のような魔物だった。


「蛇の魔物ですか?」

「そうみたいだね。あの魔物がどんなスキルや魔法を持っているか、その脅威は知らないけど、戦うしかないな」


 そう言って、ナギは剣を構え、敵の攻撃に備えた。蛇の魔物は牙を剥き出しにしてナギたちを威嚇する。この世界に来て初めての戦闘が今、始まろうとしていた。

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