第62話

 ・Side: 鈴木一


 ユナさんの言葉に一瞬驚いてしまいました。

 ですが、若いユナさんは、恋愛をする機会も少ないこの世界の中で、私に恋をしてくれたこと告げてくれました。


 それを歳上である自分が、それも別の世界である前世の記憶を持つ私が、不甲斐ない答えをしてはいけません。


 彼女の真剣な表情と涙を見て、どれほど深刻な気持ちでいるのかが伝わってきます。


「ユナさん…」


 私は彼女の涙を拭いながら、少し戸惑いを覚えつつも優しく話しかけることにしました。


 彼女の胸に触れた手はそのままにしてもう片方の手でゆっくりと彼女を抱き寄せます。


「ユナさん、こんな夜中に突然訪問してきて驚きました」

「それは、ごめんなさい。気持ちが止められなくて」


 ユナさんの瞳に浮かぶ涙を見つめながら、心の中でどうすればいいのか考えます。

 彼女の不安を理解しつつも、自分の感情も整理しきれていない部分が合って、戸惑いの方が強いからです。


「ユナさん、あなたの気持ちはとても嬉しいです。正直に言えば私もユナさんに答えたいと思っています」

「えっ?」

「ですが、私はあなたよりも随分と歳上で、頼りなくあることが情けなく感じていたんです」

「そんな! オジ様は男性で、女性を頼るのが当たり前です!」

「いいえ、私はあなたを心から支えたい」

「私を?」

「ええ、ですから最近はいろいろな変化を経験しています。その中で、どうしても自分自身と向き合わなければならないと感じているのです」


 少し冷静になろうとして、深呼吸をします。

 ユナさんの表情が緩むことを期待しつつ、話を続けます。


「私が変わったことは確かです。それは、もっと強くなりたいと思ったからです。あなたや他の方々に頼りきりになるのではなく、自分でしっかりと一人前の男であると思いたかったのです。ですから、あなたが不安になる気持ちも理解できます」


 私も不安だからこそ、しっかりしたいと思ったのですから。

 ユナさんが少しだけ安堵の表情を見せてくれました。

 ですが、まだ不安が完全には消えてはいません。


「ユナさん、あなたは私にとって特別な存在です。私はあなたを大切に思っています。ただ、私もまだ自分の気持ちを整理しきれていません。あなたのことをもっと知りたいし、あなたに対してもっと自分を見せていきたいと思っています」


 私は彼女の手を握りしめながら、自分の不安も隠さずに伝えます。


「正直に言いますと、私もまだ自信がありません。ですが、あなたがそばにいてくれることが私にとってとても心強いのです。だから、これからも一緒にいてください」


 ユナさんの瞳から涙が止まりました。


「もう夜も遅いですから、今日はここで休んでください。一緒に寝ましょう」

「いいんですか?」

「エッチなことはなしですよ」

「む〜」


 頬を膨らませる思春期の女性は、手強いですが、私自身だって我慢するので、許してほしいです。


 彼女の手を引いて、そっと自分の隣に寝かせました。


「ユナさんが眠るまで今日はお互いの話をしましょう」


 ユナさんは私の言葉を聞いて、少しずつ落ち着きを取り戻してくれました。


 彼女がどれだけ私を大切に思ってくれているかが伝わってきて、私も彼女をもっと大切にしたいと心から思いながら抱きしめて眠りにつきます。

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