第61話
・Side白鳥結奈
夜の静けさがマンションの廊下に漂う中、私はオジ様の部屋の前で足を止めました。
最近のオジ様は人が変わったように精力的に動かれております。
出会った頃のオジ様は、どこか無気力で流されるままの人という印象でした。
ですが、New Tubeを始め、自分で買い物に行って、花井さんや青羽さんにもあいに行かれます。
そして、詩織さんに好意の有無を聞くなどという大胆な行動にも出られました。
その変化に戸惑いと焦りを感じている私がいます。
オジ様の意志を尊重したいという気持ちと、周囲の女性たちからますます好意を集めるオジ様の魅力に私がいらないのではないかと不安を感じるのです。
「オジ様…」
心の中で呟きながら、そっとドアをノックしました。
返事がないことを確認し、合鍵を使って静かにドアを開けます。
ドアをロックするチェーンはかかっていませんでした。
オジ様は、私に「いつでも来ても良い」行ってくれましたが、こんな夜更けの暗闇の中で、やってくるとは思っていないでしょう。
寝室から寝息が微かに聞こえてきます。
オジ様の部屋に足を踏み入れると、オジ様の匂いがいて、胸いっぱいに幸福が訪れました。
いけないことをしていると自覚をしています。
詩織さんにも内緒で、ここまでやってきました。
本日の報告を聞いて、居ても立ってもいられなかったのです。
ゆっくりとオジ様のベッドに近づいていきます。
忍足で近づくと、私の心臓が早鐘を打つように鼓動し、緊張感が全身を包みこみました。
オジ様の部屋はクーラーが効いていて、心地よい眠りについておられました。
寝顔はとても可愛くて、思わず見惚れてしまいます。
無防備な姿は、毅然としたいつもとは違う一面にヨダレが……。
いけません! 興奮してしまいます。
「オジ様、あなたの初めてを私にくださいませんか?」
オジ様の耳元で囁くと、微かに動きがありました。
襲おうとは思っていません。
私はオジ様の手をそっと握りしめ、その温もりを感じます。
オジ様の手は大きくて暖かく、私を安心させてくれます。
「最近、あなたが変わっていくのが怖いのです。周りの女性たちがあなたを好きになっていくのを見ると、どうしようもなく不安になります」
私は彼の手を離し、そっと彼の顔に触れました。
その瞬間、オジ様の目が開きました。
「ユナさん…?」
オジ様の声はまだ寝ぼけていて、状況を理解できていないようです。
私は微笑んで彼に話しかけた。
「オジ様、私…あなたにどうしても伝えたいことがあって、夜分遅くに来てしまいました」
オジ様は少し驚いたようでしたが、私の言葉を聞いて、次第に意識を覚醒させました。やがて落ち着きを取り戻し、私の話を聞く姿勢を見せます。
「かなり驚きました。合鍵を渡しているので出入りは自由ですが、こんな夜中にどうされたのですか?」
「すみません。どうしてもすぐに確かめたいことがあったのです」
詩織さんの話を聞いて、体を止めることができませんした。
「最近、オジ様がどんどん魅力的になって、周りの女性たちがオジ様を好きになっていくのがわかります。でも、それが怖いんです。オジ様は私をどう思われているのですか?」
彼の手を再び握り締めて問いかけました。
オジ様は優しく微笑んで、空いている方の手で優しく髪を撫でてくれます。
その微笑みが、私を少しだけ安心させてくれました。
「ユナさんも不安になることがあるんですね。安西さんに聞いてそう思ったなら、私と同じなのですね。私はあなたを大切に思っています。ただ歳が離れ過ぎているので、不安と戸惑いがあります」
オジ様は心の内を晒すように私に対しての気持ちを話してくれました。
「こんなにも私はオジ様が大好きなんです! 愛しているんです」
私は自分の胸にオジ様の大きな手を導きました。
自分が、駄々っ子のようだとわかっています。
ですが、不安が取り除けないのです。
「オジ様、もっと私を見てください! オジ様が他の女性を好きでもいい。だけど、私のことも見て欲しいのです!」
オジ様は一瞬驚いた表情を見せました、すぐに優しく微笑み、私を抱きしめてくれました。
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