第58話

 安西さんと一緒に買い物をすることになり、秋葉原の街を歩き始めました。

 

 彼女は常に白鳥結奈さんの護衛兼秘書として働いているのですが、今日は私の監視役としてユナさんが派遣されたのでしょうね。


「安西さん、せっかく一緒に行動するので、買い物を楽しみましょう。尾行されるよりも、一緒にいてもらう方が気持ち的に助かります」

「別にあなたのために来たわけじゃないです! お嬢様の命令ですから!」


 安西さんは素っ気ない態度で答えてしまいました。


 まずはカメラショップに立ち寄り、高品質なカメラとマイクを選びます。

 安西さんは技術的な知識は詳しくない様子で、商品を見ても困惑した表情を浮かべておられます。


「見た目はいいけど、性能はどうなんだろう?」

「私に聞かれてもわかりません! カメラなんて使ったことないですから!」

「まあ、確かに。見た目だけじゃなくてスペックも見ないと」


 安西さんに聞いてもダメそうなので、私は店員さんに詳しい説明を求め、カメラの性能や使い勝手について話を聞きました。


 安西さんはその間、少し興味なさそうに周りを見回しています。


「店員さん、このカメラのバッテリー持ちと動画の画質はどうですか?」

「このモデルはバッテリー持ちが良く、4K動画も撮影できます」

「なるほど、それは助かりますね」


 私はその説明を聞きながらも、安西さんが少しつまらなそうな表情をしているのに気付きました。


「安西さん、こんなにたくさんのカメラがあると迷いますね。何か気になるものがあれば教えてください」

「うーん、私は技術的なことはよくわからないですけど…これなんかどうですか?」


 安西さんが指差したカメラは、シンプルなデザインのもので、初心者向けのモデルでした。


「これも良さそうですね。安西さんのセンスがいいですね」

「別にあなたのために選んだわけじゃないですから!」


 なぜかいきなり突き放されてしまいました。

 顔が赤くなっているのはなぜなのでしょうか? 安西さんの姿に、私は思わず微笑んでしまう。


 その後、カメラとマイクを購入し、次はアクセサリーショップに立ち寄る。

 ここでも安西さんの意見を聞きながら商品を選ぶ。


「このマイク、コンパクトで使いやすそうで買えてよかったです」

「よかったですね」

「はい。一緒に選んでくれてありがとうございます」


 安西さんは素っ気ない態度を取りますが、商品について聞くとデザインやシンプルな性能などを見て意見をくれました。

 ちゃんと考えてくれているのがわかるので、参考にさせていただきました。


 買い物が終わり、私は安西さんと共にカフェに入ることを提案しました。


「安西さん、ちょっと休憩しませんか? あそこにカフェがあるので入りましょう」

「えっ? まあ、いいですけど…」


 カフェに入ると、私たちは席に着き、注文を済ませた。

 まだまだ暑いので、ハンチングを脱いで汗を拭きます。

 安西さんが少し緊張している様子なのは、どうしたんでしょうか?


「今日の買い物、いろいろと助かりました。ありがとうございます」

「別に感謝されることじゃないです! 正直何もできてませんから」


 安西さんはツンデレな態度を続けながらも、少し嬉しそうな表情を見せてくれました。


 初めて二人で会話をするので、色々と質問してみたいと思っていました。

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