第42話

 ・side鈴木一


 青羽さんの提案を受けた瞬間、頭の中が真っ白になりました。


「えっ…ちょっと待ってください。練習相手って、どういうことですか?」


 私は意味がわからなくて、なんとか質問を絞り出しました。


「鈴木さんが女性に対して緊張しないようになるために、私がお手伝いしますということです」


 青羽さんはいつも冷静な方です。

 しかし真剣な眼差しで答えてくれました。

 その姿勢が、ますます私を混乱させます。


「そ、それは…」

「鈴木さん、私は本気です。鈴木さんがユナさんや花井さんと幸せになるために、私ができることがあれば、何でもお手伝いします」


 青羽さんの言葉には、強い決意が感じられます。

 しかし、その申し出をどう受け止めればいいのか、私には全くわかりませんでした。


「いや、でも…」

「鈴木さんは女性の気持ちが知りたい。私は鈴木さんのサポーターとして、鈴木さんの力になりたい。ですから、今は深く考えすぎずに、私に任せてみてください。きっと、鈴木さんにとってプラスになるはずです」


 青羽さんの説得力ある言葉に、私は少しずつ落ち着きを取り戻しました。

 彼女が本気で私を助けたいと思っていることは伝わってきます。


「わかりました。でも、私は女性のことがわかりません。青羽さんが嫌だと思うことは絶対に無理をしてやらないようにだけお願いします」

「もちろんです、鈴木さん」


 その後、私たちは昼食を続けながら、今後の具体的なサポート内容について話し合いました。


 青羽さんは非常に冷静で、的確なアドバイスをしてくれました。


「まずは、少しずつ女性に慣れていくことから始めましょう。例えば、手を握ることや、肩に触れることから。徐々にステップアップしていけば、鈴木さんも自然に女性と接することができるようになると思います」

「なるほど…。確かに、それなら少しずつ慣れていけそうです」

「それに、出来るだけ毎日私と話をしましょう。上辺だけの内容ではなく、少し真理について語ると女性の気持ちがわかるかもしれません。それに鈴木さんも男性の気持ちを語っていただければ、私もより良いサポートが行えると思います」


 青羽さんは本当に私のことを考えてくれているんですね。青羽さんの言葉に、私は少しずつ自信を取り戻していきました。


 彼女のサポートがあれば、ユナさんや花井さんともっと自然に接することができるような気がしてきます。


「じゃあ、まずは今から手を握る練習をしましょうか?」


 青羽さんがそう言って、手を差し出してきました。

 私は少し躊躇しましたが、意を決して彼女の手を握りました。


 握手? のような握り方になってしまいました。


「ふふ、こうして少しずつ、鈴木さんが女性に対して緊張しないようになるための練習を重ねていきましょう」


 青羽さんの手は柔らかくて小さく、そして温かったです。

 その感触が私を落ち着かせてくれました。


 彼女のサポートを受けながら、私は少しずつ自分の気持ちに向き合っていくことができるようになった気がします。


「ありがとうございます、青羽さん。これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ、鈴木さん。頑張りましょうね」


 その日の昼食は、これまでの悩みが少し軽くなったような、そんな気がしました。


 青羽さんのサポートを受けながら、私はユナさんや花井さんとの関係を少しずつ進展させていくことを決心しました。

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