第40話

・side鈴木一


 ユナさんの本心がわからないまま微妙な関係に悩む日々が続いています。


 そんな中で花井さんと会うのは違う気がして、何よりもユナさんに後ろめたさを感じている自分がいるのです。


 一方で、ユナさんは私に対して特別な感情を持っているような気はするのですが、一歩踏み出せない自分の優柔不断な不甲斐なさに嫌気が差して来ました。


 二人の女性との関係に悩み、私はこんなことで悩む日々が来るなど思いもしませんでした。


 溜息を吐く回数が増えて、ますます心が乱れています。


 そんな中、一ヶ月に一度のペースで会社に復帰することが決まりました。


 気分転換になってありがたいので、私は日程を決めて、会社にやってきました。

 久しぶりにやってきたオフィスに感動してしまいます。


 佐藤の一件で解雇しなかった会社には感謝ですね。


 オフィスでは青羽さんや他の皆さんが笑顔で出迎えてくれました。


「鈴木さん、リモートでは話していましたが、こうして会うのはお久しぶりです。今日は一緒に仕事ができるのを楽しみにしていました」


 青羽さんは、私を護衛する裏の仕事をお持ちとお話ししてくれたので、今までのクールな態度ではなく、明るい声で私に話しかけてくれます。


 ただ、見た目がクール美人なので、出来る女性感が半端ないです。


 ただ、その態度に少し救われる思いがします。

 仕事に集中することで、この悩みから少しでも解放されるかもしれません。


「お久しぶりです、青羽さん。こちらこそ、よろしくお願いします」


 午前中の仕事は順調に進みました。

 青羽さんと一緒に資料を整理し、プロジェクトの進捗を確認しながら、少しずつ心が落ち着いていくのを感じます。


 仕事をしている間は、他のことを忘れられるので良いですね。


 お昼休憩の時間になり、青羽さんが声をかけてくれました。


「鈴木さん、お昼ご飯一緒にどうですか?」

「ええ、もちろん」


 二人で近くのカフェに向かい、窓際の席に座りました。

 注文を終えてから、青羽さんが私をじっと見つめてきます。


「鈴木さん、最近どうですか? 何か悩んでいることとかありませんか?」


 彼女の優しい言葉に、私は心の中で抱えていた悩みを話す決心をした。


「実は、ちょっと複雑な状況なんです」


 そう言うと、青羽さんは真剣な表情で私の話を聞いてくれました。

 ユナさんや花井さんよりも年上な青羽さんなら、女性の気持ちを教えてくれるかもしれません。


「ユナさんと花井さんという二人の女性がいて、どちらも大切な存在なんです。でも、どちらかを選ぶなんて考えられなくて……」

「鈴木さん、何を悩んでおられるのですか?」

「えっ?」

「お二人とお付き合いすれば良いのではないでしょうか?」


 心から、意味がわからないという顔で、青羽さんがとんでもない言葉を発した。


「いや、流石にそれはどっちにも悪いのでは?」

「何を言っているんですか、この国は一夫多妻制ですよ。男性が少ないので、子種を求める女性が溢れています。二人どころか、もっと複数の方と交際しても誰も文句は言いませんよ」


 青羽さんの言葉に、私はこの世界が貞操逆転していたことを思い出させられました。そういえば、男性が少なくて、女性は嫉妬心が薄いのかもしれません。


「鈴木さん、どちらの女性も鈴木さんのことを大切に思っているはずです。だから、自分の気持ちに正直になってくださいね」


 青羽さんの優しい言葉に励まされ、私は少しずつ自分の気持ちを整理することができるようになった。


「そうですね、自分の気持ちに正直に……」

「それでもなかなか決心がつかないのであれば、私がサポートしましょうか?」

「えっ?」

「青羽さんが?」

「はい。私は鈴木さんのサポーターですから」


 青羽さんの助言を胸に、私は自分の気持ちを見つめ直す決心ができました。

 それに青羽さんがサポートしてくれる? のは心強いです。


「えっと、具体的にはどのような?」

「鈴木さんの一番の悩みはなんですか?」

「えっ? そうですね。お二人とお付き合いして良いのかですかね?」

「ふむ。つまりは肌を触れ合わせるのが緊張するということでしょうか?」

「なっ!」


 あまりにも具体的な物言いに私は恥ずかしくなってしまいました。


「それでしたら、私で慣れませんか?」

「えっ?」

「私が鈴木さんが女性に慣れる練習相手になります」


 青羽さんから受けた提案の意味がわからなくて、ただただ思考を停止してしまいました。

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