第35話

 鈴木さんの恋愛相談を聞いた瞬間、胸がズキっと痛みました。


 鈴木さんには他の女性がいるかもしれない。

 そう思うだけで気持ちが重くなります。


 でも、私は彼の力になりたい。

 それがどんな形であれ、鈴木さんが幸せになるなら、私も嬉しい。


「そうなんですね…それは、悩みますよね」


 私は恋愛経験がない。

 ううん。きっと、今、私は鈴木さんに恋をしている。

 初恋相手の鈴木さんから、恋愛相談を受けるって、どんな罰ゲームなんだろう。


 でも、できるだけ明るく答えた、内心は複雑だけど……。


「そうなんです。花井さんのような明るくて優しい人なら、私も悩まなかったかもしれません」


 鈴木さんの言葉に、心が少しだけ軽くなる。

 きっと、私のことを友人のように接しやすいと思って相談してくれるだけなんだ。


 それでも、鈴木さんにとっては大切な存在に成れていると思いたい。


「うーん、まずはその女性がどういう人なのかを理解することが大事だと思います。鈴木さんがどれだけその人を大切に思っているのかが重要ですよ」


 そう言いながらも、自分の気持ちを抑えるのが辛い。

 でも、彼のために、冷静でありたい。


「なるほど。ありがとうございます。花井さんに相談してよかったです」


 鈴木さんの笑顔に、心が温かくなります。

 同時に自分の心がひび割れていくのも感じていた。


 あ〜これは漫画や小説で読んだことがある。


 私は負けヒロインなんだ。


 初恋は成就しないとも聞いたことがある。


 ただ、鈴木さんが私を頼ってくれていることが、本当に嬉しい。


「私も、鈴木さんのお役に立てて嬉しいです。どんな相談でも、いつでも聞きますからね」


 そう言いながらも、私の心の中では、鈴木さんに対する気持ちが大きくなっていくのを感じる



 ゆっくりと過ぎていく時間の中で、風が鈴木さんの髪を凪いでいく。

 その光景が私にはドキドキしてたまらなく好きな時間になった。


「花井さん、君がいてくれるだけで、助かりました。ありがとうございます」


 鈴木さんの言葉に、心が揺れる。

 彼の言葉が私にとってどれだけ大切なのかを、改めて感じてしまう。


「いえいえ、私と鈴木さんの仲じゃないですか?」

「私と花井さんの仲?」

「そうですよ。う〜ん、お客さんと店員さん?」


 そうだ。私と鈴木さんの距離はその程度でしかない。


「はは、なんだかちょっと遠く感じますね。友人だと私は思っています」


 トクンと、私の胸をまた鈴木さんが締め付ける。


「ありがとうございます。私も、鈴木さんの友達です」


 そう言いながらも、内心は彼に対する恋心が膨らんでしまう。



 その日の夜、家に帰ると、母に出迎えられました。

 

「ただいま」

「おかえり、杏樹、ちょっといいかしら?」

「えっ?」


 そう言って母は私をリビングに連れて行って抱きしめられた。


「大丈夫? 最近、何か悩んでることがあるんじゃないの?」


 辛そうな顔をしていたのかな? 母にはお見通しで、私は母の行動に涙を流してしまった。

 もう、どうしようもないほどに鈴木さんが好き。


 だけど、鈴木さんには好きな人がいて、私は何も持ってないから。


 男性は身長が低くて、胸も小さい子が大好きで。


 私は身長は普通より少し高くて、158センチ。

 胸もGカップもあって、大きすぎだよ。


「そう、あなたも初恋をしたのね」


 そう言って、私は母の胸で泣いた。


 久しぶりに親子で、恋愛話をして、お母さんにたくさん話を聞いてもらった。

 お母さんの若い頃の初恋も聞いて、私たちは一緒に寝ることにした。

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