第33話
「鈴木さん、お久しぶりです。最近見かけなくなって、心配してましたよ」
本当に心配してくれていたんだと思える優しい声に、ほっこりと心が温かくなる。
「ちょっと色々あって…」
「なんだか大変そうですね。でも、お元気そうで何よりです」
花井さんの言葉に、私はほっとしました。
「そうだ、鈴木さん。私ってもうすぐバイト終わりなんです。良ければ、この後時間ありますか?」
「ええ、特に予定はありません」
「それなら、一緒にお茶でもどうですか? 久しぶりに話したいです!」
嬉しい花井さんの誘いに、私は頷きました。
「それはいいですね。ぜひお付き合いさせてください」
「決まりですね。じゃあ、ちょっと待っててください。すぐに着替えきます」
花井さんは笑顔で言い残し、店の中へと戻って行った。
♢
私は失念していました。
夏の女性は魔物であると、私服に着替えて戻ってきた花井さんはワンピース姿だったのですが、物凄くお胸がご立派でした。
いや、スーパーの制服でも大きいなぁ〜とは思っていましたが、ワンピースになって胸元が開かれている服を着ると、それは思う目のやり場に困るほどです。
「どうかしました?」
「いえ、なんでもありません」
しかも女性に恥じらいが少ないので、全く私の視線に気づいておられません。
「ほら! 行きましょう」
無自覚に胸を押し付けられて、腕を組まれるだけで、愛棒がヤバいです。
「ここのカフェが、私のお気に入りなんです。美味しいケーキがあるんですよ」
「それは楽しみですね」
なんとか辿りつくことができたので、冷房を浴びて、頭を冷やします。
二人でカフェに入り、席に着くと、花井さんがメニューを広げました。
「ほら、こんなにメニューがあるんです!」
無邪気な花井さんの笑顔に、心が軽くなっていくように感じました。
「何かおすすめはありますか?」
「チーズケーキが美味しいですよ。それに、季節のフルーツタルトも」
「じゃあアイスコーヒーとチーズケーキにします」
「いいですね! 私はアイスティーとフルーツタルトにしようかな? 今は桃か〜うん。これにしよ」
独り言をいいながら頼む姿が、また可愛いと思ってしまうのは、ユナさんとは違うタイプで、こちらが気を使わなくても良いからでしょうか?
注文を終え、二人で談笑しながらケーキを待ちます。
「鈴木さん、最近はどうしてたんですか?」
「実は、色々あって引っ越してました。少し落ち着いたので、今日は久しぶりに街を散策してたんです」
「そうだったんですね。でも、こうしてまた会えて嬉しいです」
花井さんはニュースなどは見ないのでしょうか?
佐藤の一件を知っていたら、私のことをも知っていそうですが?
「花井さんはニュースなどは見ないですか?」
「最近はネットニュースぐらいですね? 何やらNew Tubeをやっている人が問題を起こしたって、流れてました。内容は読んでませんが」
まぁ世間の関心などその程度なのかもしれませんね。
自分が見られているような気になっていたのは自意識過剰だったのかもしれません。
「そうですか、花井さんが元気そうで何よりです」
「はい、私は相変わらずですよ。でも、こうして鈴木さんとお話できるのは本当に嬉しいです」
その言葉に、私は自然と笑みがこぼれました。
「ありがとうございます。私もこうして花井さんと過ごせるのが嬉しいです」
注文したケーキが運ばれてきた。
「どうぞ、召し上がってください」
「いただきます」
一口食べると、本当に美味しいチーズケーキが口の中で広がります。
「これは美味しいですね」
「でしょ? ここ、本当におすすめなんです」
花井さんと一緒に過ごす時間は、私にとって本当に癒しの時間です。
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