エピソード2 花井杏樹

第32話

 side鈴木一


 梅雨が過ぎて初夏に入り、私は困っております。


 女性が薄着になって、貞操帯をつけているのが辛いのです。


 佐藤大輝の一件で、とんでもないプレゼントを頂きました。


 さらに私は一応三十歳を超えていても出来ることが、科学的に証明されました。


 しかし、世間には出来ないと思われているはずなのですが、街に出ると視線を感じてしまうのです。


 有名になるということは色々と大変なのですね。

 視線を感じて、ビクビクしてしまいます。


 しかも、貞操逆転している世界の女性たちの服装は、かなり大胆な服装が多いのです。


 ノースリーブに、短パンやミニスカートなど、目のやり場に困るほど夏場は危険な露出が横行しております。


 それに対して嫌悪感を抱いたり、女性は野蛮だとSNSで批判コメントをあげている男性もおりました。


 ですが、私は大歓迎です。


 むしろ、少ない男性に少しでも好かれるために、女性たちが己の美を追求しておられることで、美しい女性が溢れています。


 ノースリーブや短パンを履いていても、日傘や帽子、日焼け止めなどは絶対に忘れない。


 そういう健気なところも大好きです。


 女性社会になったことで、素晴らしい文化が根付いています。


 ただ、美しく、肌を晒す女性が多いので、本当に愛棒が痛いです。


 皆さんどれだけ魅力的なんですか?!


「しかも最近は色々と困ったことがありますからね」


 会社に行くのも躊躇われるので、一応は在宅ワークということで、青羽さんを通してお仕事をいただいております。


 仕事は在宅ワークで行っていますが、その仕事が少なくて、すぐに終わってしまいます。

 

 しかも、高級なマンション住まいなのですが……。


「佐藤の一件が終わったとはいえ、まだオジ様の身が安全だと保証はできません。ですから、ほとぼりが冷めるまで、一年ほどはこのままマンションに住み続けていてください。家賃などは気にしないでくださいね。このマンション全てが我がスワングループのものですから」


 白鳥結奈さんから物凄い恩恵を受けてしまって、断ろうとしても、全ては命を救ったからだと言われてしまいます。


 そして、学校が終わると毎日のようにユナさんがマッションにやってきて、物凄くアプローチを受けるのです。


「オジ様、なんだか暑いですね」

「いや、設定温度25だよ。むしろ、ちょっと寒くないかい?」

「いえいえ、もう初夏ですから」


 夏服に変わった制服は可愛らしくなって、シャツが透けてブラが完全に見えています。


 それをさらに暑いと言ってシャツを脱ごうとするので、止めるのに必死です。


 いや、もう流石に鈍感な私でもユナさんの気持ちはわかります。


 ですが、元の世界の常識がある私としては、三十五歳の自分と十八歳になったばかりのユナさん、本当に致しても良いのか、理性がどうしても一歩を踏み出せなくて、ヘタレさを出しております。


 今日は、少し散歩に行くと言って街の散策に出ました。


「ふぅ、家にいるのに息抜きが欲しくなるって、私は大丈夫でしょうか?」

「あれ? 鈴木さんじゃないですか?」

「えっ?」


 私はフラフラとアテもなく歩いていたつもりでしたが、どうやら勝手知ったる道を歩いていました。


 ずっと住んでいた街に戻ってきてしまったのです。


 目の前に行きなれたスーパーがあり、花井さんが声をかけてくれました。


「花井さん」


 私は久しぶりに会う花井さんの笑顔に癒されてしまいます。


 白鳥結奈さんは完璧な美少女で、スタイルも顔も、立ち振る舞いや雰囲気まで、素晴らしい女性です。完璧なのです。


 それに対して、花井さんはとても愛らしく、人懐っこい笑顔に親しみやすい雰囲気が、良い意味で庶民的な女性です。親しみやすいのです。


 私の心は花井さんの笑顔に安堵してしまいました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る