第28話
その夜、僕は部屋の中で計画を練り始めた。
NewTubeで稼いだ収益を使って、結奈を手に入れるための具体的な方法を考えた。金ならある。僕を馬鹿にする奴らに対して、最高の復讐をするためには結奈が必要だ。
「まずは人を雇うか……」
僕はスマホを手に取り、ダークウェブにアクセスした。
闇サイトと呼ばれる犯罪を請け負ってくれるサイトで、前にストーカー被害にあった際に、そういうサイトがあると嫁に教えてもらった。
そこで、闇の仕事を引き受けるような人物を探し始めた。
「……この辺りが良さそうだな」
適当なプロフィールと口コミを見て、信頼できそうな人物を選び出す。
連絡を取ると、思ったよりもスムーズに話が進んだ。
「仕事の内容は?」
「ある女子高生を攫ってほしい。報酬は一億だ。成功すればさらに一億支払う」
「詳細は?」
「後で送る。すぐに実行してくれ」
了解のメールが届いて、僕は詳細な指示を送った。
結奈の写真と学校のスケジュール、彼女を捕まえようと思えば学校しかないだろう。それ以外では護衛が常に付き従っている。
「よろしく頼む」
次の日、学校に行くと結奈がいつも通り過ごしているのを見た。
だが、今日が彼女にとって普通の一日ではないことを僕だけが知っていた。
授業中も彼女が誘拐されることばかりを考えて、内心で笑みを浮かべていた。
放課後、彼女の車が迎えにきていたが、結奈が現れないことに慌てている様子を見る。
「成功だ……」
僕は心の中でガッツポーズを決めた。
数時間後、結奈は暗い部屋の中に縛られていた。
指示通りに、仕事を終えた相手に二億を足が付かない方法で送った。
これで相手と僕との接点は全て消えた。
結奈の前に立ち、冷たい笑みを浮かべていた。
「結奈、やっと二人きりになれたな」
「……佐藤大輝ですね、何がしたいのですか?」
結奈は誘拐されたにも関わらず、冷たい瞳で僕を見ていた。
それが俺の怒りをさらに煽った。
「お前が僕を避けるから、こうするしかなかったんだ。僕はもう終わりだ。だけど、他の女なんてどうでもいい。お前を手に入れて、お前のバックにあるスワングループが手に入れば、世間なんてどうでもいいんだ」
「あなたがしていることは間違っています。こんなことをして無理やり私を縛りつけても何も手に入りませんよ」
結奈の強い言葉に、僕は一瞬言葉を失ったが、すぐに怒りがこみ上げてきた。
「うるさい! そんなの嘘だ。お前は次期スワングループの当主だろ! お前を手に入れれば全てが僕の物だ」
「バカな人ですね」
「僕を見下すな! お前は僕のものだ!」
結奈は冷静に俺を見つめ、静かに言った。
「佐藤大輝、私はあなたのものではありません。誰のものでもありません。私は私自身で生きているのです」
その言葉に僕は苛立ちを隠せず、拳を握りしめた。
「黙れ! 僕に従え!」
だが、結奈は微動だにしなかった。
その冷静な態度に、僕は抑圧していた理性が失われていく。
「言うことを聞かせてやる……!」
僕は激昂し、結奈に手を振り上げようとしたが、その時、部屋の隅に置かれていたテレビが突然映像を映し出した。
「な、なんだ?」
画面には鈴木一が映っていた。
「佐藤大輝、君の行動は全て見えています」
「はっ?」
鈴木の冷静な声が響いた。
「どういうことだ?」
「君が結奈を攫った瞬間から、我々は君の行動を追跡していました。君の計画は全て筒抜けだったんですよ」
鈴木の言葉に動揺した僕は、結奈に向かって手を伸ばそうとしたが、結奈は手錠で繋がれているはずなのに、立ち上がった。
再び鈴木の声が止まった。
「佐藤大輝、もうこれ以上罪を重ねるのはやめましょう」
「くそっ...! 僕! 僕をバカにするなよ!」
僕は苛立ちを隠せず、結奈に掴んみかかった。
だが、結奈のスカートがヒラリと舞って僕の側頭部を蹴り上げる。
「ガハッ!」
続けて突然ドアが開き、数人の警察官が突入してきた。
「動くな! 佐藤大輝、君を逮捕する」
僕は絶望的な気持ちでその場に崩れ落ちた。
警察は結奈を解放し、僕を連行した。
警察の取り調べで、僕は全ての計画を白状させられた。
結奈の証言もあり、僕の罪は明らかになった。
だけど、どこで僕は間違えたんだ? どうして計画がバレた?
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