第27話

「本日のトップニュースです。人気NewTuberの佐藤大輝さんが、最近のライブ配信で発言した内容が物議を醸しています。彼の発言は男性保護法に違反している可能性があるとのことで、MGIによる調査が進められています」


 画面に映し出されるのは、僕が配信した動画の一部と、MGIの調査員たちのインタビューだった。


「佐藤さんの発言は非常に無責任であり、多くの人々の尊厳を傷つけるものでした。我々は彼の行動を徹底的に調査し、必要な措置を講じるつもりです」


 ニュースキャスターの冷静な声に続いて、視聴者のコメントもスクロールで表示されていき、そこには僕を非難する言葉が溢れていた。


「こんな奴が人気者だなんて信じられない」

「佐藤大輝、最低だな」

「鈴木さんに謝れ!」


 だが、彼らのコメントに対して、ニュースキャスターが鈴木一のからコメントが届いたと言って読み上げる。


「鈴木一です。今回の一件で、私は家を引っ越すことにしました。会社や近隣の方々にご迷惑をかけたこと本当に申し訳なく思います。ですが、佐藤大輝君がしたことを許すことはできませんが。同じ男としてあまり責めないであげてほしいとも思います」


 許されたわけではないが、僕に対して優しい言葉をかけてきた。


「クソが! 僕はお前に同情されるような男じゃねぇ! 僕の方が若くてイケメンなんだ! どうせ今だけだ。今だけ我慢すれば、すぐに人気なんて戻るんだよ。勝った気になってんじゃねぇよ!」


 翌日、学校に行って教室に入ると、それまで賑やかに騒いでいたクラスメイトの雰囲気は消え去り、まるで冷たい空気が漂っているかのようだった。 


「大輝さん、ちょっといいかな?」


 取り巻きだった嫁の一人が、ためらいがちに話しかけてきた。


「何だよ?」

「もう私、あなたとは一緒にいられない。あなたのことを支持するのは無理だから…」


 その言葉に怒りが湧いてきた。


「なっ! なんだと! 卒業したら結婚して、僕の子供が欲しいって言っていたじゃないか!」

「ハァ〜、言ったよ。だけど、犯罪者とは無理だから」

「誰が犯罪者だ!」

「そういうことだから」


 それは一人だけじゃなく、四人いた嫁の全員が僕の側を離れていった。

 今まで僕を崇拝していた彼女たちさえも、僕を見限ったのだ。


「お前もかよ…」


 呟くように言うと、彼女たちは目を逸らし、その場を去っていった。

 教室の中で一人取り残された僕は、冷たくなった席に座り込んだ。


 その日の授業も、全く頭に入ってこなかった。


 昼休みに教室にいることが辛くなって廊下を歩いていると、結奈が他の女子たちと楽しそうに笑っている姿が見えた。


 彼女を手に入れれば、今からでも逆転できるはずだ。

 だけど、僕を完全に避けていることが痛いほど分かっている。


「クソッ、どうにかできないか?」


 爪を噛み締め、僕は結奈を手に入れる方法を考えることにした。


 放課後、家に帰ると、郵便ポストに何通もの手紙が入っていた。中には、ファンだった人たちからの抗議文や、さらには脅迫めいた内容のものもあった。


「佐藤大輝、貴様は最低だ。鈴木さんに謝罪しろ!」

「お前のせいで多くの人が傷ついたんだ。責任を取れ!」


 ふん、僕のことを何も知らないくせに、全て燃やしてやる。


 その夜、SNSを開くと、さらにひどいコメントが続いていた。


 嫌がらせのメッセージや、悪意に満ちた画像が投稿されている。

 フォロワー数はさらに減少し、数万人にまで落ち込んでいた。


「ウルセェよ! 雌豚どもが!」


 僕は一人、暗い部屋の中で計画を練り始める。

 全てが変わってしまったのなら、もうどうでもいい。

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