第21話

「つい、本音が漏れてしまいました」


 本音なんですね!


「佐藤君は悪いことをしました。ですから、懲らしめてあげましょう」

「えっと、懲らしめる?」

「はい。オジ様はお優しい方です。青羽さんの話を聞いて、どう思われましたか?」

「えっ? そうですね。あまり実感がありませんでした。これまでの人生で自分が注目されるようなことはありませんでした」


 そうですね。


 鈴木一は、人間が嫌いです。


 そして、コミュニケーション能力が低くて、特に女性に対して嫌悪感を抱くほどに近寄ろうとしませんでした。


 さて、自分はどうなんだろうか? 転生者である事は自覚しています。


 年齢もそこそこに今と変わらない程度には生きてきたと思います。


 コミュニケーション能力は高くありませんが、普通に人と話すことはできるし、女性のことはむしろ大好きです。


 ですが、どっちの私も平凡で誰かに注目を集めるような人間ではありませんでした。


「このような悪目立ちではなく、もっと華々しく注目を集めてほしいと、私は思っております」

「華々しいですか?」

「そうです。ですから、今回の一件は見せしめ。いえ、彼にはお仕置きをしないといけないんです」 


 ところどころ白鳥結奈さんの本性が見え隠れしているように感じるのは気のせいでしょうか? 


「オジ様、今回の一件。我が白鳥家がバックアップをさせていただけませんか?」

「えっ? スワングループが?」


 私はチラリと安西さんを見ましたが、彼女は目を閉じてユナさんを止めるつもりはないようです。


 つまりは、これは本当に白鳥家が私の味方をしてくれるということなのでしょうね。


「我々MGIもお手伝いします。今回はこれまでの三十歳オーバーの男性たちにも注目が集まってしまう事件になるでしょう。ですから、佐藤大樹さんには罪を償っていただきたいと考えています。ですから、ご協力をお願いできないでしょうか?」


 どうやら、私の意思というよりも、青羽さんは多くの男性のためなのかもしれませんね。


 財閥である白鳥家。


 それに国の機関であるMGIが私の味方をしてくれるとは、本当にとんでもない事件なんだと理解させられます。


 彼は自分がどれだけの事をしたのか、自覚した頃にはとんでもない罪を背負うことになるのだろうな。


 正直に言えば、人の噂など七十五日。


 私が三ヶ月ほど、そんなことはできないと言い続けていれば、収まる話ではないかと思ってしまう。


 ですが、すでに外を見れば人の集まる勢いは増しており、私のSNSへの通知は増えるばかり。


 これを一人で処理しようとしても、なかなかに大変そうではあります。


「一つ、よろしいでしょうか?」


 ここで沈黙を守っていた安西さんが口を開きました。


「はい?」

「お嬢様が、白鳥家の力を使うことを私が口出しすることではございません。そして、青羽様がMGIの力を使うことも私が何かを申すことはありません」


 安西さんが二人への前置きをしてから、私を見ました。


「鈴木一さん。今回の事件は、三十歳を越えられた鈴木さんが、女性と子供を作ることができるということを、佐藤大樹さんがNewTubeで発言したことが問題になっております。そして、結奈お嬢様が鈴木さんに執着する理由。そして、青羽様が迅速に動いた理由。そこから、佐藤大樹さんが発した言葉は事実ではないのではないかと推測してしまうのです」


 安西の発言に、それは私の股間に隠された秘密を問われる内容でした。

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