第20話
私は戸惑いながらも、青羽さんと、ユナさんを招き入れました。
ユナさんの後には、安西さんも付き従っています。
狭い部屋の中に美女が三人。
いつも以上に狭くはあるのですが、良い匂いがします。
「えっと、麦茶です」
「ありがとうございます」
「オジ様、ありがとうございます」
「わっ、私もですか? ありがとうございます」
安西さんは、なんだかいつも以上に私の顔をチラチラと見て緊張しておられます。
「まずは、私の方から謝罪をさせていただきます」
「謝罪ですか?」
青羽さんに謝られるようなことが思いつきません。
「はい。こちらを見ていただけますか?」
そう言って差し出されたのは名刺でした。
青羽美玲という彼女の名前の横に、我が社の社名ではない名前が書かれておりました。
MGI(男性守護局)、青羽美玲。
「えっと、この名刺は?」
「これが本来の肩書きです。実は、私は鈴木さんを密かにお守りするため、国から派遣されたエージェントでした」
「えっ! そうなんですか?!」
優秀で冷たい印象でしたが、私のことを見ているように感じたのは見守ってくれていたんですね。
「はい。ですが、まさかこのような形で、鈴木さんの平穏な生活を壊してしまうことになるなんて、私の配慮不足で申し訳ありません。此度の一件を重く受け止めて、名乗らせてもらうことになりました」
それは青羽さんが悪いわけではないのではないでしょうか? 色々と配慮していただいていたんですね。
「いえ、私も何がなんだか? 佐藤君が私のことをNewTubeであげたことで、このような騒ぎになっているんですよね?」
「はい。佐藤大樹さんのNewTubeで鈴木さんに関してあげた動画は、すでに削除されました。ですが、切り抜いて、拡散されている動画に関しては、今も削除を続けています」
なんだか凄い事を言っているような気がしますね。
私程度の事を話して、こんな話題になるのは申し訳ないというか? 青羽さんがそんな凄い機関のエリートに所属していて、私を密かに守ってくれていたという方が驚きなのですが!
「男性保護法はご存知ですか?」
「えっと、すみません。あまり詳しくありません」
男性保護法は男性が少なくなった世界で、男性を守るために作られている法律という程度にしかわかっていません。
他には、三十歳を超えるまでは様々な恩恵を受けられるぐらい?
「……やはりご存じではなかったんですね」
「どういう事でしょうか?」
「男性保護法は、全年齢の男性に適応されております。もちろん三十歳をこえられると多少は法律の扱いが変わりはしますが、男性を保護して守ることに関しては変わりません。それが同じ男性であっても、やって良いことと、悪いことがあります」
それは佐藤大樹君に関して何かしら、法に触れることがあるということでしょうか?
「佐藤大樹さんは、男性保護法の第一条に違反しました」
「第一条?」
「はい。男性の人権を守る。です。男性の生活を守るために、写真や個人情報は無闇に公開したり、SNSに流してはいけません。それをされた相手が訴えた場合は犯罪となります」
つまり、私が佐藤大樹君を訴えた場合。
彼は犯罪者になるということでしょうか?
「え〜と」
「オジ様、決断をされる前に、私の話を聞いていただけますか?」
「えっ?」
「青羽さん、よろしいですか?」
「もちろんです」
青羽さんに代わって、ユナさんが私を真剣な目で見つめます。
「オジ様」
「あっ、はい!」
青羽さんの衝撃で、ちょっと理解が追いつかないですが、そんな私にユナさんが見たことがないほど美しく微笑みました。
「あの、男を絶対に許してはいけません。ぶち殺しましょう」
「?!」
美しい顔から思ってもない言葉が出てきて、私は驚き過ぎて言葉が出ませんでした。
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