第16話
土曜日の学校は部活動の声が響いて、教室の中はガランとしていて、ユナさんとの学校見学デートは、自分が経験していない学校の楽しさを経験しているようで、特別なイベントのように感じられます。
彼女の案内で学校見学を楽しんでいると、廊下の向こうから学生の集団が向かってきました。
「おや? そこにいるのはユナさんじゃないか?、こんなところに何を?」
「佐藤君ですか」
佐藤君と呼ばれた男子生徒は、多くの女性を連れているハーレム状態で、ユナさんに話しかけました。
「どうだい? 土曜日の学校で会えたのも何かの縁だ。僕と午後のデートに行こうじゃないか」
「オジ様、彼は
「ふっ! 人気だなんて当たり前だよ」
佐藤大輝君と紹介された彼は自信に満ち溢れた顔をしています。
実際、私よりも身長は低いですが、中性的で容姿が整ったイケメンです。
彼が女性たちの中で人気者だと言われても納得できますね。
しかも、十代の一番チヤホヤされている時期なので、女性たちから非常に好かれていることもわかります。
「結奈さん、今日も美しいね。君がいるだけで学校が明るくなるよ」
周りに他の女性もいるのに、ユナさんを口説き始める佐藤君。
男性としては普通の行動なのかもしれませんが、少し失礼に見えますね。
私はユナさんを守るために一歩前に出ました。
「こんにちは、佐藤さん。ユナさんに学校見学をしていただいているので遠慮していただけませんか?」
佐藤は一瞬、こちらの容姿を見て、見下すような視線を送ってきた。
だが、外面をよくしたいのでしょう。
すぐに笑顔を作り直しました。
「ああ、そうか。結奈さんはこのオジさんの案内役か。それなら、僕も一緒に回らせてもらおうかな?」
「いえ、結構です。私はオジ様と二人で見学を楽しんでおりますので」
佐藤の申し出をバッサリと断るユナさんに、内心でスッキリとします。
「そうですね。今日知り合ったばかりの佐藤君がいると、私も緊張しますので遠慮させてください。私たちは二人で見学を楽しんでいるんです。あなたの付き添いは必要ありません」
こういう自分に自信があるタイプは、ストレートに言わなければわからないと思って、言葉を濁すことなく伝える。
「何だって?」
だが、やはり子供というか? 我儘な男性としての本性は隠せない様ですね。
佐藤君の顔から笑顔が消え、苛立ちを見せています。
「佐藤君、あなたの周りには素敵な女性がいるではありませんか、彼女たちと学園を楽しんでください」
私の言葉に、佐藤君に遠慮していたのか、女性たちが私の顔を見ました。
それがまた佐藤君は気に入らなかったのか、さらに一歩近づいてきた。
さらにこちらを睨むような威圧的な態度を取ってくきます。
「お前、何様のつもりだ? 結奈さんは僕のものだ。お前のような奴に近づかせるわけにはいかない」
「ユナさんが、佐藤君のもの?」
私がユナさんを見れば、首を横に振ります。
なるほど、彼はユナさんのことが好きなのでしょうか? ただ、自分勝手に決めるのは良くありませんね。
「結奈さんは誰のものでもありません。彼女自身が決めることです」
ユナさんが私の服を掴むのを背中で感じました。
「オジ様、ありがとうございます。佐藤君、私はあなたのものではありません!」
キッパリとユナさんに拒絶の言葉を浴びせられて、佐藤君は苦虫を噛み潰したような顔を歪めました。
しばらく、私を睨みつけていましたが、やがて冷笑を浮かべました。
「いいでしょう。今日は大目に見てあげます。ですが、忘れないでくださいよ。結奈さんは僕のものだ」
そう言い残して、佐藤は去って行った。
チラチラと取り巻きの女性たちが、私を見ていましたが、私はユナさんが心配だったので、彼女に視線を向けます。
すると、ユナさんは私を見て微笑んでいました。
「オジ様、カッコよかったです。本当にありがとうございます」
「えっ?」
「ふふ、オジ様の新たな一面を見ました」
う〜ん、相手が子供だったから対処できましたが、私は別に普通のことをしただけです。
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