第7話

 オジ様との時間はすぐに過ぎてしまう。


「ありがとう。助かったよ」


 笑顔でお礼を告げてくれるオジ様。


 どこまで優しいんですか?! 強引に迷惑も考えない私のことを、その大きくて包容力のある心で受け止めてくださいますのね。


「はい。また明日」

「おやすみなさい」

「おやすみなさいです」


 こんな当たり前の挨拶を嬉しいと感じてしまう。


 だけどオジ様といる時間だけが、心の奥底にある不安を取り除いてくれる。


 私の感謝の気持ちは本当にオジ様に伝わっているのだろうか?

 それとも、私の行動は彼にとって重荷になっているのではないろうか?


 スワングループを継ぐために、私は常に強いプレッシャーを感じてきた。

 母は私に一度たりとも手を抜くことを許さず、私自身も常に完璧を求められる。

 しかし、その強さを維持するため、誰かに頼りたいと思うことなどなかった。


 オジ様に出会うまでは、あの大きな腕に優しい微笑み。

 始めて胸に感じる感情は、とても尊いことです。


「私は本当にオジ様に対して、感謝だけでしょうか?」


 オジ様に対する気持ちは、単なる感謝以上の何かかもしれない。


 でも、その感情を認めるのは少し怖い。

 

 父のような男性に対するトラウマが私を躊躇させる。

 もし、オジ様に対して特別な感情を抱いているとしても、変化が怖い。


 自分が依存してしまうこと、オジ様に溺れてしまうんじゃないかという変化が怖い。


 その夜、家に帰ると母が父に甘えていた。


 いつもはその光景にうんざりとした気持ちになってしまいますが、今の私は……羨ましいと思ってしまう。


 今はオジ様に対して誠実であり続けること、それが私の今の目標です。

 オジ様に恩返しをする、オジ様の人生をお助けするのです。


 母のように、誰かに依存することへの恐れと、オジ様に対する特別な感情。


 その狭間で揺れ動く私の心。


 スワングループを継ぐためには、強くなければならない。

 それでも、私はどこかでオジ様に頼りたいと思う自分がいる。


「まずは、オジ様に私の感謝の気持ちを受け取っていただくのです。そして、私の心の中の不安も、オジ様に癒していただくのです」


 朝、いつも学校に行く時間よりも早く目を覚まして、最高に可愛く仕上げてもらう。


 肌も、髪も、全てをベストな状態でオジ様に見ていただきたい。


「お嬢様、本当に平日は毎日通われるのですか?」

「もちろんです。今は、学園よりもオジ様と過ごす時間のほうが大切なのです」

「……そうですか。かしこまりました。お嬢様の思われるがままに」


 詩織さんは、私が社長になっても秘書として付き従ってもらう。


 私にとってかけがえのないパートナーです。


 だけど、オジ様との時間は私の心に平穏をもたらしてくれた。


「ありがとう。詩織さん。必ず私が社長になった時には、あなたにも報いたいと思っています」

「ありがたきお言葉」


 詩織さんは、私にとって姉であり、友人だ。


 いつかオジ様が抱える秘密を話しても良いかもしれない。


 その時はもしかしたら、詩織さんもオジ様が欲しくなってるかもしれないけれど……。

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