虫トリ得意系女子
(ピンポーン)
(鍵が開き、家のドアが開かれる)
「おはよー、私が来たよー。と言っても今日は特に用があるわけじゃないし普通にごろごろしに来ただけなんだけど」
「というか、あれだね。もはや自分の家のような感覚で入ってきちゃったけど全然違和感がない自分がすごいわ」
「用が無いならなんで来たんだって………冷たいなー、別にいいでしょ?」
「あ、これ!この漫画ってこないだアニメになってたやつだよね!?読んでいい?」
「やた!ありがと!!」
「ふんふーん………」
(プーンと虫の羽音が聞こえる)
「ねえ、なんかさ。この部屋虫がいない?なんというか、こう、具体的に何がとは言えないけどすごく嫌な音が聞こえたんだけど………」
「あ!ほらまた」
「まずいよ!!このままじゃ漫画なんて読めたもんじゃないよ!なんとかこの羽虫を倒さないと………ちょ、ちょっとハエたたき借りるねっ!!」
「………ねえ、ところでさ、イマドキ一人暮らしの大学生男子の部屋にハエたたきが常備されてるのってなんというか、古風というか………変わってるよね」
「まあ私の家にもあるんだけど!!」
(フォンフォンとハエたたきを振り回す)
(パチンっという音とともに羽虫を仕留める)
「ふう、へへっ、私の手にかかればこんなもんよ。どう?なかなかの手際でしょう?」
「へ?今どきハエたたきを使いこなして羽虫を撃退する女子大生の方が少ないだろって?」
「うーむ………確かにっ」
(微かにほほ笑む)
(そして再びプーンと虫の気配が───)
「うわっ!まだいるの!?君の部屋ちょっとなんか虫が多くない!?!?ちゃんと掃除してる?後で私も手伝ってあげるからきちんと掃除しなよ?あまり汚い部屋にいるとえーせー的によくないし、病気になっちゃうよ?」
「まあとりあえず、てぇぇい!!」
(パチンッっという軽快な音とともに女子大生のキルスコアが増える)
「へへん!何匹いようと問題ないよ!」
「え?ワイルドすぎる?学校でのイメージと全然違うって?それは………まあ、ね。私の実家、結構な田舎にあるんだけどさ、そーいうの大学でバレたくないじゃん?せっかく大学デビューしたのに、さ」
「だから実家でも結構羽虫とは戦ってたんだよねっ!!」
(さらに響いたパチンという音で女子大生のキルスコアが上昇する)
「ほむほむ、見たところあと四匹ってところかな。この部屋の衛生状況が心配になってはきたけど、とりあえず倒しちゃうねッ!!」
※
「ふう、これで全部………かな?にしても虫多かったねー。部屋はそんなに汚れているようには見えないし、私もちょくちょく片付けてると思ってたんだけどなー」
「食べ物かなんかの処理ミスったかなー?にしても仮にも都会のアパートにこの数は………」
「え?この前のピザ?うっわー、確かに一番可能性があるとしたらそれだけど………いやいや、にしても多くない?絶対別のなんかだって!君が一人の時になんか虫さんがいっぱい寄ってくるよーな事したんじゃないのぉ?つまり私は悪くない!」
「………うぅ、ま、まあどちらにせよこれからキレイにしておけばそうそう虫なんて湧かないって!!私に任せてよ!」
「えーとー、うーん、掃除するにしてもこの部屋十分にきれいだよね……どうしよ?とりあえず棚の下の埃でも掃除しとく?いやでも、そんな事したところでなぁ……ねえ、君はどう思────え、なんで笑ってんの?ちょっと怖いんだけど」
「え?嬉しくなった?ありがとうって?いやいやそんな、私がやりたいからやってるだけだから気にしないでほしいっていうかいやむしろこれくらいして当然というか……まあ、うん。………どーいたしまして」
「ねえ、ここで笑みを深めるのはどういう意味かな!?理由によっちゃあちょっと怒るかもしれないよ!?理不尽だとか関係ないでーす。そもそも変なこと言いだす君が悪いんでーす!え?感謝しただけだろって………た、確かに!で、でも君が悪いんだからね!!」
「うぅ……もう!漫画読みます!!よく考えれば私、虫退治をしに来たわけでも君の部屋の掃除をしに来たわけでもないし!」
「この無駄に量の多い蔵書たちを読み漁って私の知識の糧にしてやるぅ!!今日は泊りも覚悟しておいてよねっ!」
「………え?一人暮らしの男の部屋に泊りはまずいって?え、何?もしかして君、私に手出そうとしてんの?ヘタレの君が?ほーん………」
「え?手を出すとか出さないとかじゃなく常識的に考えてよくない?そもそも出す気はない?危機感の問題の話?………なんだ、出してくれないんだ」
「え?なんでもないでーす。とりあえず今日は泊まるから、覚悟してよねっ!あ、それと!勘違いしてるようだから訂正しておくけど、私ちゃんと危機感は持ってるからね!そのうえで、だよ!」
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