この部屋、寒いね

(ピンポーン)


「入るよー?いいよね?」


(鍵が開き、家のドアが開かれる)


「うわ寒っ!この部屋寒くない?冷房強すぎなんじゃないかなぁ………」


「あ、ねえねえ、今日はゲームをしようよ!そう、ゲーム。君好きでしょ?」


「いやー、君の家に通いだしてからもう一ヶ月くらいたったねー」


(ガチャガチャとモニター周りを操作し、ゲームを起動する)


「ん?勝手にいじるなって?いいじゃーん。お、点いた!」


「今日君とやろうと思ってねー、実はここ一週間くらい猛練習したんだよ?ゲームオタクでガチ勢の君と言えど簡単に勝てるとは思わないことだね!むしろぼこぼこにして目にものを見せてやろうじゃないか!」


「もーっ!何をそんなに渋ってるの?」


「あっわかった!じゃあ何か賭けようか?例えばそう!君が勝ったら………うーん、君が勝ったら………」


「っ………き、君が勝ったら、そのぅ………ちょっとエッチなことだって………」


「え?いらない?そ、そう………私も結構見た目はいいと思うんだけど………」


「あ………え?何?もしかして枯れてるとか?その年で?それは何というかちょっと───」


「わかった!わかったって!謝るからゲームの電源を抜こうとしないで!!」


「はぁ、じゃあどうしたら………え?やってくれんの?どうして急に?あ、もしかしてエッチな────」


「あ、そうじゃない。なるほど。」


「まあいいや、やってくれるのなら私は大歓迎だし、さっさとやろうぜぃ」


(カチャカチャとコントローラーを操作する音が部屋に響く)


「あぁ!負けたぁ!!でも惜しくない?私意外とこのゲームの才能あるかもしれない!」


「ねぇ、何?その顔。確認ですけどね?今のかなり惜しかったですよね?」


「……私の敬語がおかしいとか関係ないでーす。さ、もう一戦やろ?今度は私が勝つよー?」


(再び集中してコントローラーを操作しだす)



「よっしゃ!コンボ決まった!ほぼ勝ちじゃんこれ!」


「え?うそ!やばいやばい!」


「………え、負けた?あそこから?」


「ちょっと、君強すぎ。………え、なに笑ってんの?」


「私の悔しそうな顔が面白いって………もう!何言ってんの!もう一戦行くよ!」



「え、ちょっと待って試合始まってからすぐにそんなっ!………え?やられたんだけど。え?………え?そんな即死コンボが成り立って許されるの!?もはやチートの域だよっ!どうしようもないじゃん!!」


「え?仕様?じゃあ仕方ない………のかな?」


「え?仕様だからしようがない?何その寒いギャグ………普段からそんなこと考えてるの?えぇ……」







「………ちくしょい。勝てないぃ……」


「よし!やっぱり対戦ゲームはやめよう!時代は協力ゲーだよねー」


「なんだよその顔は……なんか文句でもあるのかぁ?」


「無いならよしっ!じゃあ早速やろ!えーと、あのゲームってどこにあったっけ?」


「え、こっち?おお、ほんとだあった。じゃあ早速カセット入れて起動してっと………」


「よし!準備万端ッ!さっそくやろうぜぇ」




「………ねぇ、さっきからこの協力ゲーをやってるわけなんだけどさ、そのうえで薄々感じてたことなんだけどさ、これ─────私いらなくない!?」


「ねえ!?実はこれ君1人でどうにかなったよね!?私全然敵と戦ってないんだけど!?私が倒そうと思った敵が軒並み君に倒された後だよっ!!君のスコアが私のスコアの倍くらいあるんだけど!?ダブルスコアってやつじゃないのこれ!?」


「え?そんなことない?私も多少は活躍してた?じゃあじゃあ、私がどんな風に活躍したか言ってみてよ!」


「おぉい!言葉に詰まるんじゃねぇ!そうだよね!?知ってたよだって私活躍してないもん言えるわけないよねははは………」



「よしっ!もう一回やろ!」


「え?まだやるの?じゃないんだよ、まだやるんだよ。というか、まだ一回しかやってないでしょ?私が飽きるまでやるんだから付き合ってよね!!」






「ふぁぁ………さすがにちょっと疲れてきたし、ちょっとお昼寝しようかな」


「お昼寝しようかな、じゃないんだよ、じゃないんだよ!………え?何言ってんだろう私。と、に、か、く!私はちょっと寝るね?あ、君も一緒に寝るぅ?」


「おい、そのいじめっ子と一緒の布団はとか言うのやめなさい?いじめっ子ネタはもうしないって約束しませんでしたかね?約束したと思うんですがね?いや、ほんとに申し訳なかったと思っているのでやめていただけると幸いなのですがね!?!?」


「笑い事じゃねぇわい!」



「………え?君も寝るの?いやちょっと待ってさっきは私から誘ったけど流石にそういうのはこう、もうちょっとお互い………え?一緒の布団で寝るとは言ってない?俺はソファで寝る?」


「~~~~ッ!」


「もう!………はぁ、まあいいや。でも大丈夫?この部屋ヤバイくらい寒いじゃん。こんなの布団被って寝ないと風邪ひいちゃうんじゃない?大丈夫?」


「!」


(何かを思いつくヒロイン)


「ねえねえ君。ほら、寒いでしょ?この温度じゃお昼寝なんてできないんじゃない?まず眠気来る?」


「うぇ?むしろ眠くなりそうって………それダメな奴じゃん!寝るなぁ相棒ぅぅ!!」


「はあ、じゃあ仕方ないからこの毛布を………え?大丈夫?ほんとに?強がっても風邪ひくだけだよ??バカは風邪ひかないって言うけど、君学校の成績は結構いい方だったよね?」


「ああ、ごめん。もう学校の話はしないよ。なによりも私が嫌な気持ちになるからね」


「それはそれとして、君結構寒さには強いんだね?私なんてほら、長袖を厚着して何とか対応してるのにさ」


「え?私が極端に弱すぎるだけ?そうなのかなぁ………でもそんな気がしてきたかも………」


「いやいや、それにしてもこの部屋の冷房の設定温度は低すぎると思うよっ!!」

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