第5話 尾生の信 芥川龍之介
https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/24_15235.html
・・・ 夜半、月の光が一川の蘆と柳とに溢れた時、川の水と微風とは静に囁き交しながら、橋の下の尾生の死骸を、やさしく海の方へ運んで行った。が、尾生の魂は、寂しい天心の月の光に、思い憧れたせいかも知れない。ひそかに死骸を抜け出すと、ほのかに明るんだ空の向うへ、まるで水の匂ひや藻の匂ひが音もなく川から立ち昇るように、うらうらと高く昇ってしまった。……
それから幾千年かを隔てた後、この魂は無数の流転を閲して、また生を人間に託さなければならなくなった。それがこう云う私に宿っている魂なのである。だから私は現代に生れはしたが、何一つ意味のある仕事が出来ない。昼も夜も漫然と夢みがちな生活を送りながら、ただ、何か来るべき不可思議なものばかりを待っている。ちょうどあの尾生が薄暮の橋の下で、永久に来ない恋人をいつまでも待ち暮したように。
(大正八年十二月)
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小松左京の小説「日本沈没」1973年(昭和48年)が、筒井康隆「日本以外全部沈没」(『オール讀物』1973年9月号に発表)になるように祈る、というのは不謹慎であろうか。
私としては、せめて(NHKラジオにみる)日本文化だけでも、生き残ることを願わずにおれません。
筒井康隆「日本以外全部沈没」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BB%A5%E5%A4%96%E5%85%A8%E9%83%A8%E6%B2%88%E6%B2%A1
筒井康隆「農協月へ行く」 [角川文庫] - Kadokawa
https://www.kadokawa.co.jp/product/321706000361/
2024年7月4日
V.1.1
平栗雅人
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