第6話 来世へつながる滅び
アメリカン・インディアンは、かつて弓矢や槍をもって白人と戦い、しかし、最期は無抵抗のまま滅んでいった(600万人が、100年で一時期6万人になった)。
しかし、身を挺して戦ったことが評価され、ガンジーのように無抵抗で戦ったことで、更に評価された。
誰に?
特定の「神」ではなく、彼らの信奉した「大自然の摂理」によって。
それはまさに「日本昔話という時空」を、連綿と生き続けている在来種純粋日本人(縄文人)そのもの。
以下の言葉はそのまま、後世「日本のNHKラジオ番組」について語られることになるのだろう。
<引用開始>
私たちの西洋では、文明の独自な価値や重要性を、その文明が残していった遺物の大きさで計ろうとしてきた。そこでは、記念碑や教会の建物や城砦などが価値の基準になってきたのである。このような判断の基準にたてば、インディアンの文明などには、大した価値を見いだせない、ということになるのかも知れないし、またその文明がたとえ滅び去ってしまったとしても、そんなことは「世界史」のささいな挿話にすぎない、いう扱いを受けてしまうのかも知れない。
しかし、この人々は、徹底的に征服しつくされる以前に、たくさんの言葉を残しておいてくれた。私たちが今日手にすることができるのは、そうした声のいくつかの断片にすぎないのだが、それらの断片がかいま見させてくれるものからだけでも、私たちは、彼らがいかに高度な精神性を実現していた人々であったかを知ることができる 。じっさい、私たちは今日でも、そのことに驚嘆を禁じえないのである。
インディアンたちは、巨大なピラミッドも荘厳なカテドラルも建造しなかった。
そのかわりに、彼らは宇宙の中に、つまりは彼らが尊敬し、驚嘆し、畏敬の気持ちをいだいている「自然」のふところに、人間である自分たちの正しい居場所を見いだしてきた。
彼らは富を蓄積しようともしなかったし、物質生活の快適さを追求したりもしなかった。そのかわりに、彼らは世界との調和をつくりだすことのできる強勒な魂を、自分の内部に育て上げようとしてきたのだ。森や平原を尊敬をこめてみつめながら、その世界と一体となることができること、生活のささいな断片の中にさえ、聖なるものの輝きを認めることのできる精神をつくること、これがインディアン哲学の本質である。
ヨーロッパから襲いかかってきた征服者たちをつき動かしていたのが、とめどもない食欲さであったことを思うとき、人生の意味について、ほとんど正反対の考え方をいだいているインディアンと彼らとの間には、およそ対話などというものが、不可能だっただろうということは、よくわかる。それにもかかわらず、アメリカ・インディアンたちは、入植者たちの容赦ない侵略に直面しながらも、古くからの彼らのやり方にしたがって、両者が平和のうちに共存していく道はないものだろうかと、たえずたがいの調停点をみいだそうと、努力を重ねたのである。
ところが、白人にとっては、インディアンをどこかに強制収容してしまうか、さもなければ滅ぼしてしまうか、二つに一つの道しか考えられなかった。白人にははなから、調停のことなど念頭になかったのである。この本におさめられた、インディアンたちの言葉にこめられたまことに悲痛な現実は、まさにそのことに関わっている。本書におさめられているのは、他人の声に耳を貸そうともせず、すべての権利を独り占めしようとするために、倣慢にも「われわれは文明人だから、お前たちよりも優れているのだ」と主張する者たちを前にして、意をつくして説明し、相手の理解を求めようと努力した「(真の)人間たち」の発する声の記録にほかならない。
犯罪(虐殺、略奪、調印されてはすぐに破棄された条約・・・)は、たえまなく引き起こされた。そして、今日では、どの犯罪行為が、両者の抗争に火をつけることになったのか、だいたいのことはわかってきている。しかし、今はインディアンの世界が、物質的に壊滅してしまったことを嘆いたりしている時ではない。また、おぞましくも愚劣なこの大虐殺に声高な怒りを発していればすむ、という時代でもない。今大急ぎでやらなければならないのは、彼らの精神性(この本におさめられた、彼らの言葉をとおして、私たちはそれを生き生きと感じとることのできる)が、人類の未来に確実に贈り届けられるための道を必死で模索することである。
物質主義の西洋社会が、今日陥っている混迷を前にしたとき、インディアンの知恵は、いつまでも新鮮な水を湧きださせる泉のように思えてくる。本書におさめられた、わずかな数の「言葉」を手掛かりとして、これから私たちは、残されたインディアンのあらゆる言葉を収録したさらに大きな書物を将来につくりだしていく作業にとりかかろうと思う。それは、永遠のみずみずしさと生命力をたたえた人類の精神力を、未来に開く鍵をあたえてくれるだろう。
ミッシェル・ピクマル
「インディアンの言葉」 紀伊國屋書店
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314007375
<引用終わり>
2024年7月5日
V.2.1
平栗雅人
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