第2話「春休み」

 あれから俺は今度出くわしたら見返してやろうと必死に努力を積んだ。その結果としては魔力が以前よりも増え、また強くなれたのである。けれど、これだけでは終わらないのだ。この先でまた彼女が強くなっていたらを考え、もっと鍛え上げるのだった。


 そして予定通り合格通知が届いた。それを開く限りだと俺はA組に位置するらしい。それが来た時から俺が決勝で負けた対戦相手の顔が忘れられないでいた。彼女のことが好きになったのではなく、どうしても再戦を望みたかうてしょうがないのだ。情けない話だが、それでも勝ちたい相手だったので、俺はもっと強くなることを決意した。


 それから春休みに入った頃だ。魔術育成高校では全寮制があり、必要なに荷物だけを自分の住む部屋に移す作業が行われた。俺も荷物を纏め。それらを引っ越し業者に頼んで運んでもらうのである。それが丁度出発して、俺からも電車に乗って魔術育成高校に向かった。


「ついに来たか? この先からは魔術育成で暮らすことになるんだ!」


 そんな思いが内心に生じると、俺は早速合格通知に入っていた地図を見ながら場所を把握した。共同宿舎はどこにあるのか書かれた地図の通りに動くと、ちゃんと目的地に辿り着くことが出来たのである。そこに来るとトラックが沢山止まっており、そこで多くの荷物が運び込まれているのだった。


「ここが俺らの代が住まう場所か? 中々楽しみになって来たぜ!」


 俺的にはこの場所に決勝の対戦相手も来ていることは知っていたので、まずは彼女から探して名乗りたいと思った。荷物なら損の後でも遅くはないと思いながらも、俺彼女を探すのである。


「おはようございます!」


「おっ! 君は確か決勝トーナメントで残った妖太じゃないか! 私はレディスノーだ。よろしくな!」


「はい! よろしくお願いします!」


 レディスノー先生のことなら俺も良く知っている。彼女はベストウィザードに惜しくも載らなかった存在だ。特に彼女の術式は【一定の距離内に雪を降らせる】と言った天候変化を招く大規模な作用をお四ボスとされて有名である。身に起こる特殊効果と言えば【動きが素早くなる】ことや【毛布引きを起こす】などが挙げられた。そのような術式に関して言えることは、それが作用する中ではレディスノー先生が有利に立てる状況なのが厄介であるところだ。彼女の優勢に立つフィールド内では、猛吹雪を起こされた時点で凍死するのが目に見えているのが、恐ろしいことだった。それを逃れても彼女の底上げされた動きには付いて行けないと思った方が妥当だと言われている。


 しかし、それに勝てる人物が世間にはちゃんといるのだと思って置いた方が良いのだった。彼女の吹雪以上に凄まじい火力を誇るトップワンウィザードと呼称される【ベストフレイム】は自らの炎により、府立載る雪はすべて溶かすほどの威力を有している。彼女の術式は【地獄の炎を自在に操る】と言うもので、その息子が俺らの世代にいるようだが、自分が決勝に当たった相手に敗れたと聞いていた。


(まぁ、大抵の場合だとレディスノー先生でも何かしら敗北に持ち込める方法はあると言うことだ。きっと勝ち取って見せたい相手だな?)


 俺が彼女に勝つたっめには、多分さらなる魔力量を身に付けなければいけないと思った。そうすることで今よりも波動の威力を底上げして雪を溶かし切れるんじゃないかと思うからだ。


「それじゃあ早速だが、君の荷物は多分合格通知に載っている通りに動けば置いてあると思うから、そこを当たってくれ」


「ありがとうございます。それよりも俺が決勝で当たった対戦相手はどこいるのか知りませんか?」


「あぁ。彼女ならさっき部屋に向かったよ。もしかしたら部屋を訪れれば奇跡的に会えるかもな? どうした? 好きになっちゃったのか?」


「違います! 宣戦布告しに行くんです!」


「ほう? それは頼もしいな? 是非とも張り合って行くと良いよ」


「それでは!」


 俺は彼女が来ていることを確かめると、早速本人の向かった先を目指す。すると、俺がすぐにでも自己紹介をしておきたかった最高のライバルになり得る存在が、そこにはいたのであった。


「いた! そこのお前! ちょっと良いか?」


「んぅ? 私のことかなぁ?」


「あぁ。そうだ。俺のことは覚えてるか?」


 その時に振り返った彼女はkの間と違っておしゃれしていた。決勝で当たった時には体操着だったので分からなかったが、かなり俺の好みな顔をしている。それを知ったことで、俺は彼女に向けて声を掛けたのが恥ずかしくなって思えてしまうのだった。しかし、俺はそこで思い切って打ち明けたのである。


「お前に負けたことで、俺には新たな決心が出来た! お前を超えることだ。ただそれだけが俺の心に生じて、初めて味わった敗北も悪くないと感じた。けど、今度こそ負けないんだって思えたんだ! 今一度お前に挑戦したい! そこで俺はトップワンウィザードになる!」


「あの時、私に敗退した男子じゃないですか? まさか宣戦布告のつもりみたいですね? 良いですよ。私で良ければ相手になります。受けて立ちますよ?」


「それは良かった! しかし、俺に良く勝てたね? 俺は魔術競技会で無敗の男だったんだ。だけど、お前に負けてからさらに訓練を重ねたんだ。もう負けて堪るかって思ってる」


「そっか。じゃあ私も負けてられませんね?」


 良かった。この気持ちが彼女に伝わると、何だか心がすっきりした気分になったのである。しかし、俺の内心では満足できていた訳じゃないのだ。そこで彼女に勝てなければ、自分はトップ「ワンになれない。そこにコンプレックスを感じ、それを乗り越えようとしているのだ。だからこそ、俺としては彼女をライバル視するのだった。


「それじゃあまた後で話せないか? 色々と話を聞きたいからな。俺は荷物をすぇ入りしなくちゃいけないから、ここで失礼させてもらうぜ」


「分かりました。それではまた会いましょう」


 それだけ告げてから俺は別れた。しかし、その場で約束したことはきっと守られるだろうと思うし、今から話したいことはまた後ででも構わないのだ。なので、俺はまず荷物を片付けることから始めた。それが優先事項だと持ったからである。


 ※ ※ ※


 それから俺は指示通りに自室を割り当て、そこの前に置かれた荷物を背言えりするのであった。それが俺にとって必須となることだから、それを先に片付ける。


 そしてやっと片付け終えた部屋の中は新鮮で、俺にしたら今日からここに住むんだなと思うと、何気に良いかも知れないと感じてしまうのだった。そこで俺は時間に余裕が生じた時から、彼女の下に行きたくてしょうがないのである。


「よし! 行くか!」


 そこで俺は再び彼女を訪れるのであった。


「良く来ましたね? 部屋の整理は無事に終わりましたか?:」


「あぁ。もちろんだ。だから、こうしてここにいる」


「そっか。それじゃあ自己紹介が遅れました。私の名前は加瀬勝美くわせまさみです。よろしくね?」


「俺は黒崎妖太。どうもよろしく」


 俺らは互いに名乗り合うと、そこで両社とも仲良くなれた気がしたのは思い違いだろうかと感じてしまう。だが、俺は彼女とは気が合いそうな予感がしていたので、ここで関係性を築き上げたいと思うしかも、おまけに勝美はかなりの美少女と見た。


(可愛いな? 俺の好みな顔してるぜ)


 内心で何となく思っていると、そこで彼女から話があった。


「私の父をご存じでしょうか? 父はベストウィザードランキングトップツーに君臨する人なんですけど知ってますか?」


「もちろん。それぐらい知ってるに決まってるだろ。まさか娘さんだなんて」


「はい。実はトップワンの息子さんもいましたけど、私が勝利したんですよんね? 今のところは私の方が上手だったようです」


「へぇ? それってすげぇじゃん」


 道理で勝てないと思ってしまうが、そこで俺も諦めたのではない。むしろそこは超えてこそトップに立てる実力を有していると思いどころだって感じるのだ。しかし、彼女の親父さんがもし本当にベストウィザードなら確かに言えることは一つ。手強くなりそうなことぐらいである。だけど、俺だって百年ぶりの逸材と称されるほどの実力はあるのだ。ここで勝ち取れなくて何が逸材と言えるのかにおいては、これから示したのであった。


「で? お前はどんな術式を持っているんだ? それが知りたい」


「私が扱うのは【掌から衝撃波を放つ術式】と【拳に触れた対象に衝撃を加える術式】です。貴方を殴った時のことは覚えてますか? あそこで第二の術式は発動したんですけど、凄まじい衝撃に襲われませんでした?」


「あぁ。確かにかなりのダメージだったよ。あれを食らった瞬間位骨が折れて次の攻撃に対応できなかったのを覚えてる。もの凄く痛い目を見たよ」


 俺は正直にあの時のことを語ると、それに対して勝美はそれについて説明を施してくれた。それによって彼女があそこで使用した術技に関しても知ることが出来たのである。


「貴方の敗因はきっと私が放った術技でもある【インパクトスマッシュ】を受けたからです。あの術技は鍛え上げた筋力に加えて衝撃を伴った殴打により、凄まじい威力を誇る一撃とされています。あれを諸に食らったら最後と言っても可笑しくはありません」



「なるほど。だから、あの後の対応が出来なかった訳だ」


 俺の負けた原因がそこにあるなら、次回はそれを喰らう訳には行かないと判断した。それを受けないことで勝率が上がるなら、それほど聞いておいて良かったことなどないと思われる。しかし、彼女の術式を上回らなければ勝ち取れる方法はないと言えるのだった。


 そう思った時には俺も魔力を底上げする訓練を行なっていて良かったと、そんな風に考える。彼女が放つ衝撃波に勝らないなら、あの術技を警戒しながら攻め入るのが妥当であると思われるが、それはかなり難しいのだった。彼女を攻略するには、波動の威力を高めるか、暗王剣を駆使して斬り付けに行くことが勝利を掴む方法なのかも知れない。


 そんな風に考えた時、俺は彼女に勝つにはどうしたら良いか分かって来た気がするのだった。


「まず勝美に勝つ方法が浮かんで来たよ。勝美の話が聞けて良かったかも知れない」


「ふーん? でも、そう簡単に勝ちは譲りませんよ? 単に魔力で上回れば良いとか思ってるなら、もうちょっと工夫した方が懸命だと思いますよ?」


「それも言えてるけど、勝美を上回るにはもっと術式を強化しないといけないだろう。それには魔力を底上げするのは必須条件だと思うぜ?」


「確かに魔力量で勝敗が決まりがちですが、それ以外にも着目した方が良いことだってありましたよね? 私だって以前のままでいる訳じゃありませんし、貴方が魔力を上げるなら、こちらとしても高めるに決まってるじゃないですか?」


「それもそうだけどな? だったら、第三の術式でも編み出すのが勝機を導き出す方法かと知れないぜ」


「そう簡単には出来ませんよ。さすがに無茶があります」


 自分ぇも何を言っているのか分かっているつもりだが、それ以上に彼女を倒すためにはどうすることが大切だと言えるのか、それが分からなくちゃいけないところだろう。しかし、俺としても彼女から勝利を掴むためには魔力量を増やす他にも身体機能を強化させることが一番の勝ち筋であるとは思うが、それだけでは勝てないのは目に見えているのだった。なら、何を施せば勝利に繋がるのかは、これから編み出そうと考える。


 それからしばらくの間で会話はかなり弾んだ。彼女と話していると、これまでいた奴らとは比べようにもならない思考力で、俺としても理解しやすいタイプかも知れない。彼女なりにどんな訓練法で鍛え上げて来たのかも教えてくれ、その代わりに俺からも打ち明けることはあるのだった。


 そして昼休みになって、食堂のカウンターが開くと、元々並んで待っていた合格者たちが自分の食べたいメニューを注文している。それを見て俺たちも何か食べながら会話の続きをしようと言う風になり、そこに出来た列に並び始めた。そこでも会話は止むことなく継続して、俺らは自分たちの情報を共有するのである。


「「いただきます」」


 俺らは注文した昼食が乗ったお盆を先ほどまで座っていたテーブルに持って行き、揃って食事の挨拶をした。それが当たり前のように交わされると、俺は自分の注文していたカレーライスを絡めながら食べる。肝心の勝美の方は冷やしたぬきうどんをすすりながら、よく噛んで飲み込んでいた。


「うん。美味しい。さすがに魔術育成高校にある食堂はテレビでも取り上げられるほど腕が立つ調理員さんが作っていると言われていますよね? 知ってましたか?」


「あぁ。その特番なら俺も目にしたことがある。そもそもこの進学先は最初から目指してたぐらいだしな。俺としては当然と言あるだろう」


「そっか。まぁ、私も同じです。父の卒業校でもありますし、昔から勧められていたのですでに決まっていましたね?」


「やっぱり【魔術の名門校】として知られているだけあるな」


「毎年行われる魔術大会では、リアルを追求した戦いが見られて観客席で見てる保護者としてはわくわくする人たちが多いのも頷けます」


 勝美の言っていることは確かだ。当校では最新設備としてデータ上で作られた分身を意思によって動かす技術が取り入れられているところからすると、どの学校よりも本格的な実践経験が積めて人気が高いのだと言う。それが俺の選んだ理由にもなるのは当たり前のように思えた。しかし、毎年入学できる定員人数と言えば、大抵が四十人なのでそれなりに難関であると噂されている。けれど、俺はそれに合格を果たしてみせたのだ。かなりの実力があると評価されても可笑しくはないのだった。


 それから俺は昼食を終えた頃になって、少し休憩を挟む形にすると、その後でちょっとばかし外でトレーニングでもしないかと、勝美に提案したら、案外容易くオーケーをもらう。確か今日からすでに無断で校庭を借りることは可能とされているので、一緒にランニングをしようと言う話になった。そこで彼女としとは俺だと自分には付いて行けないなんて宣言されてしまう。果たして彼女はどれほどのスピードを誇っているのかが気になるところだ。


 そして校庭までやって来ると、線が引かれている通りに位置して、そこからスタートするのであった。


「それじゃあ準備は出来ましたか?」


「まぁな。一応身体はほぐしておいたが、これで不足するほどのことでもない気がしてるんだ。問題ないぜ?」


「では、始め!」


 すると、俺らは同時にスタートを切ると、そこから走り出して行くのだった。勝美と競うことになってから、俺は先ほど告げていた通りに差を付けられるのかが問題となる。しかし、俺だって普段から走り込みはしている上に中学時代では誰よりも速かったぐらいだと言える記録は出して来た。それを超えるのであれば、かなり身体能力に優れていることになるだろう。


 俺らは同時に走り出すと、そこで彼女が言っていたことが証明されるとは、思っても見なかった。


「速い⁉︎」


「どうしたんですか? これぐらいで差が付いてベストウィザードはきついと思いますよ?」


「畜生ぉ! 追い付けねぇ⁉︎」


 その差は明らかだった。彼女が自信を持って言っていたことは事実であり、それを実現させてみせるところが、まさに驚異的だと思わされる。一周した頃には俺も遅れてゴールし、全力で走ったことにより、疲れが生じたのだった。死に物狂いで走って見ても彼女との差は埋まらず、ゴーした時には汗が大量に出ると言った結果になる。


「どうやら足の速さでは勝てなかったよですが、私ならまだ余裕で走れますよ? そんなんでへばってたらトップワンなんて夢でしかないんじゃありませんか?」


「分かってる」


 俺は疲れ過ぎて息が上がった状態をしばらくの間で安静にさせるのであった。そうすることで俺も体力の回復をさせては、息を整えるのである。


「何でそんなに速いんだ?」


「勉強の量を減らして大抵は筋力トレーニングに費やすのが日課なんです。勉強なら学校の休み時間に復習して、とにかく内容は頭に叩き込んで置くことで、テストの点数を取って来ました。それだけ鍛えられている箇所の負担が違うと思いますよ?」


「トレーニング時間が違うらしいな? だったら、俺だってやってやるぜ」


「ふふっ。そう簡単に越せないよ?」


 それぐらいは分かっていたつもりだ。しかし、どう言った負荷を掛ければ良いのかまでは、この先で研究しながら取り入れて行くと良いそうである。なので、俺は今度からトレーニングを始め、身体強化に入るのだった。筋力で勝美に劣っているなら、彼女以上に頑張りを見せたいと思いばかるだけなのだ。


 そして俺らはもう十周ほど校庭を走って鍛える方針で行く。そこでも圧倒的に差を付けられ、俺はどうやっても追い越せない辛さだけが募っている気がした。


 こうして俺らは春休み一日目を充実した時間にすると、そこで彼女から仕入れたデータにより、これからの魔術科では活躍を期待するのである。

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