第2話 行動したことがある
このままではいけないと思いつつも行動できない。
何度もハローワークに行ってみようとしたが、無理だった。
まず行ってみようと考えた時点で第一関門突破。
次にちゃんとした服に着替えて髪の毛を整えたところで第二関門突破。
そして靴を履いて家を出るところで第三関門突破。
第四関門は実際にハローワークを目で捉えられるくらいの距離に行けば突破だ。
俺は第四関門まで突破したことがある。
しかし第五関門である、中に入るという行為は無理だった。
俺は施設から少し離れた場所にある木に身を潜めてその建物を見ていた。
頭の中には“行く?”行かない?”の選択肢。
当然のように“行かない”の方へ気持ちは大きくブレていて、俺の中で「ここまでこれただけでも進歩か……」と呟き家に帰った。
家に帰る途中はまるで色んなものから解放されたかのように爽快で気持ちよかったのを覚えている。
あれから1年以上が経ったが、まだ第五関門を突破することができていない。
ならばと思い、ハローワークではなくてネット上の就活エージェントやその他の就職・転職サイトで仕事を探してみようとなった。
しかし就職エージェントのサイトでは最初に名前や生年月日、電話番号や場所によっては住所の入力を要求され、俺は怖くて辞めた。
普段、知らない電話番号から電話が掛かってくるだけでもドキッとするのに自分から電話番号を提示して「どうぞ掛けて来てください」という気持ちにはなれなかったからだ。
次に就職・転職サイトで仕事を探してみた。
その時は結構良い求人があったりして捗ったのだが「応募」というボタンを押す事が出来ず、結局数日後にはその求人は無くなっていた。
「応募」が押せなかったのは自分を知られるのが怖いというのもあったけど、それ以上に準備ができてないと感じたからだ。
スーツに身を包んで、髪の毛は社会人っぽく、礼儀作法も知らない。
面接の準備も何もしてないし、履歴書も書いてない。
俺はするべき準備を全部飛ばして求人票を見ていた。
これはいわば、剣も盾も鎧も準備せずにどのモンスターと戦うかを考えていたようなものだ。
それも見ていたのは一番賞金が高く、難易度の高いドラゴン系のモンスター。
経験も無く、準備もできてない俺がヤツへ突進するのは自殺行為そのもの。
俺は再度「ここまでこれただけでも進歩か……」と呟いてそっとサイトを閉じた。
あれから1年以上サイトを開いたことがない。
さて、俺はあれから何も進歩していない。
今日もパソコンの前で生産性のない事をして時間をつぶしている。
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