職歴なし27歳ってどんな感じ?

@ossann27

第1話 現状

「死んだほうがいいのかな」

 


 大学を卒業して早5年。

 俺は働くこともせず、いつしかそんな独り言が増えた。

 頭の中には“まだ間に合う”という声と“もう間に合わない”という天使と悪魔の声が鳴り響き、俺は天使の方を選び続けた結果だ。

 GOOGLEの検索履歴には“27歳無職職歴なし”の検索ワードで検索した痕跡があり、そのほとんどが深夜。

 不安や絶望で寝れず、安心を求めてその不安と絶望を検索し、最終的に不安と絶望を増幅させるという悪循環が行われた記録がされている。



 真上に住んでいる住人の足音がドカドカと聞こえ、ハッと我に返ると時刻は14時になっていた。

 11時に目を覚まし、そこからダラダラとYouTubeを見始めてもう4時間も経ってしまっている。



 もう27歳か……。

 人生で最も重要とされる20代のほとんどの時間を部屋の中で過ごしていることに後悔をしながらもここから頑張って良くしていこうという気持ちにはなれない。

 思えば子供の頃の27歳って大人だった。

 汗水垂らして昼間は働き、夜は居酒屋で同僚と飲み、週末は彼女とデート。

 大人同士、慣れた感じでセックスして次の平日に向けて活力を漲らせる。

 自分もいつかそういう人生を歩んでいくんだと思ってた。



 しかし現実はどうだ。

 無職、ニート、引きこもり、職歴なし、底辺、ブサイク。

 この全ての文字が俺に俺に当てはまった27歳になってしまっている。

 昼間でもカーテンを閉め切って薄暗い部屋の中、インターネットをボケっと眺め、夜にはアニメキャラで自慰行為をして一日を終える。

 現実は絶望の人生をより絶望へと進んでいるだけなのである。



 最近ではインターネットで記事を読んでるだけでも不安な気持ちになる。

 例えば“結婚”・“日経平均株価上昇”・“賃金アップ”・“転職”などのワードには敏感だ。

 俺の周辺でも小学校が一緒だったアイツは結婚し、中学校が一緒だったアイツは結婚を見据えて彼女と同棲中だという情報を母親から聞いた。

 従妹は基本給が〇〇円アップしたんだって~という話や転職しました!という報告も否応なしに俺の目と耳に入ってくる。

 その度に同期どころか3年4年下の人にすら追いつくことができないくらいの差があるんだと心が死んでいく。



 こんな俺でも結婚はしたい。

 でも俺が結婚するのはいつになるんだ?

 仮に今この瞬間に就職できたとして、年収は240万程度だろう。

 5年後の年齢は32歳。

 32歳で新卒5年目の人と同じ給料まで上がってたとして、そんな人間と誰が結婚したがる?

 その時点で27歳の女性と付き合ったとして「えっ、この人32歳なのに私と同じ年収しかないの?」と思われるにきまってる。

 年々、顔と肌も衰えてきて見た目も醜いし、もはや夢のまた夢。

 逆算すればするほどもう埋まらない差に絶望し、行動できずに死にたいと呟くしかないのが今の俺だ。

 

 

 どうしてこうなったんだろう……。

 小中高大と留年せずに何とか進学していったのに、社会に出れなかった。

 3年の時点でほとんど全ての単位を取り尽くし、卒業もほぼ確定していた。だから3年の就職活動解禁日よりもずっと前から企業を見て周り、自分にはどういう会社が合うんだろうって行動していたのにどうして……?

 いつも一緒にいた5人の友達の誰よりも早く行動して自己分析したのに、俺はその仲間達より内定が出ず、結局壊れた。

 


「お前は内定いくつ?」



 9月頃にはもうほとんどの人が内定を持っていた。

 俺は嘘で「三つ」と答えていたが、実際には0。

 0なら普通、面接をどんどん入れて頑張っていくのだが、もう動けなかった。

 表面上は内定を持って社会に出れますよ~という感じで接していたが、内面ではずっと悩んでいた。

 しかし誰にも相談することができず、次の道がないまま卒業。

 俺より頭が悪いやつや卒業ギリギリのやつがいる中で俺だけが道を見つけられず、俺だけがキャリア0。



 あの時、踏ん張って面接受けてればもっと良い人生を歩めたかもしれない。

 そうでなくとも卒業してすぐにまた就職活動を始めれば今より全然ましな人生を歩めたかもしれない。

 そんな事を毎日考えながら、今日も俺は部屋に引きこもっている。

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