4,彼との会話と香水
庭へと出て、暫く無言で歩いていれば彼の方から自然と話し始めた。私はそれに相槌を打ちながら近くにあったベンチへと腰掛けた。
「それにしても……貴女の様な美しい方が我が国に来て下さるとはとても嬉しく思います」
その告げられた言葉に私は瞬きをしたあと少し目を逸らし「ありがとう……ございます」とだけ伝え私と彼の間を少し涼しい風が通り抜けた。
「一月後、我が国エターニアでお待ちしております。そしてこれは貴女に」
「……香水?そういえばエターニア帝国は香水が有名だと使用人から聞いた事があります。」
「えぇ他国でも話題になっていると街の人達が言っていました」
「ありがとうございますシエロ様。大切に使わせていただきます」
私がそう告げれば彼は嬉しそうな笑みを浮かべたあと自分を呼ぶ声に反応しベンチから立ち上がった。
「そろそろ戻らないと……貴女と少しでも話せて良かった。一月後、お待ちしておりますエストレッラ嬢」
「……えぇまた一月後、お会いいたしましょうシエロ様。ごきげんよう」
私がそう告げたあと彼は微笑み踵を返して戻って行った。私は手元に残ったキラリと光る香水瓶を見つめて軽く手首へ吹き掛けた。
「……甘くなくていい香り。柑橘と……花の香りかしら」
手首から香る爽やかな柑橘の香りと嗅いだことの無い花の香りに私はほんの少しだけエターニア帝国へ行く事が楽しみになった。
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