3, 王宮で出会った彼。


数日後、私が部屋で仕事をしていると使用人が部屋をノックし声をかけてきた。


「お嬢様。帝国からの使節団がお見えです」


「……そんな予定は聞いていないはずなのだけれど」


「それが急に決まったそうで……陛下はもうお待ちですので……」


「……分かったわ。すぐに行くと伝えて。」


「かしこまりましたお嬢様」


使用人がそう告げて部屋から遠のく足音を聞いたあと私は小さくため息を吐き軽く身だしなみを整え使節団とお父様が待つ応接間へと向かった。




「失礼します陛下…お呼びでしょうか」


「あぁエストレッラ待っていたよ。この方達がエターニア帝国からの使節団だ」


お父様からそう告げられソファへ座っている人物たちへ目を向ければ金色の髪をした彼と目が合った。私は一瞬悩んだあとふわりとスカートの裾を持ち軽く頭を下げた。


「エターニア帝国使節団の皆様ようこそクランカティカ王国へ。第1王女エストレッラと申します皆様に会えた事光栄に思いますわ」



私がそう告げれば帝国の使節団から小さく声が上がった。別におかしな所は無かったはず。少し時間を置いてから私は顔を上げ「では私はこれで」と告げて部屋へ帰ろうとした。


「あ……わ……私はエターニア帝国第1王子のシエロと申します。お会い出来て嬉しく思いますレディ、エストレッラ」


彼……シエロさんはそう告げて笑みを浮かべた。あぁこの人が私の婚約者の人か。そう思いながら私はもう一度軽く頭を下げた。



「エストレッラ部屋に戻らずここに残りなさい。今は急務も無いはずだ」


「……はい陛下」


私は少し悩んだ後軽く頷きながらお父様の隣へと腰掛け使節団との話を聞いていれば正面に座る彼からすごく視線を感じた。私はそっと目を逸らし気づかないフリをしながらこの話が終わるのを待っていた。



暫くして話が終われば私は部屋に帰ろうと立ち上がった。するとシエロさんに軽く手を握られ呼び止められた。


「よろしければお話しませんか?」


これは断ったら面倒になりそうだ。私は少し悩んでからこくりと頷き「では庭にでも」とだけ告げ握ってきた手を離してもらい庭へと足を向けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る