12:え、みんな序盤ではげとるやん
私は今、人生の岐路に立っている。
登壇している校長のカツラがズレているのだ。
しかも盛大に。
教頭もそれを見ているため、ハラハラドキドキしている。
しかしその教頭もカツラが取れかけているのだ。ダブルでピンチだ。
校長が腕を振り上げる。カツラがぷるんぷるんして外れようとする。
もう全生徒の心中は「カツラよ、外れるな」であろう。いや、外れて大爆笑になる雰囲気じゃないもの。
そう、今は受験の壮行会。校長も熱が入っている。教頭はハラハラしている。
頭の上はピッカピカ。教頭は体中がピッカピカ(冷や汗で)私は握りこぶしがピッカピカ。
ピッカピカの三人衆は三人それぞれの心境でカツラの行く末を見守っていた。
というか校長やっぱりカツラだったんだね。普通の髪型の次の日にはロックロールベイベ-な髪型になっていたし、校内放送で垂れ流したギターは吐き気がするほど下手だった。
私のギターの方が絶対美味い。ポップス中心だがわが軽音バンドはメジャーデビューしないってソォンンンンニィエンターレコードメージオニック様から声がかかっているほどだ。
しかし今はそれどころじゃない。カツラが外れそうなんだ。モヒカンのカツラが。
「このモヒカンの精神のように! 受験に対してロックンロールベイベーの気持ちで取りかかれ!」
なにを言っているのかさっぱり意味がわからない。もうモヒカンになってはいない。やまげパカパカしている。
そんなことよりカツラがとれないか全校生徒が気になっているのだ。
「というわけで、そろそろ校長、倒れる人も出ておりますしこの辺で」
意を決したかのように教頭が校長の演説を止めに入る。
「なんだね! わたしはまだまだいいたりんぞ、このモヒカンのようにな!」
といって、頭にてをやる。
「あー!」
「ああー!」
「あれー!?
「「「あああー!???」」」
あーの絶叫が響き渡る。校長のづらが、バレた。
「あ、校長先生、あ、あ、」
「……いや、これはフィクションだ! このためにわざとだな!」
校長の嘘とともに校長の脇の髪の毛も消えていく。脇もづらだったのだ。
「あー! 校長先生、あー!」
「こ、これもフィクションだ! つるっぱげでは断じてない!この教頭のようにはな!」
「あー! なんてことをバラすんですか! あー! このくそ校長がぁ!」
取っ組み合いの喧嘩が始まる。
もう、
もう、
もう我慢できなかった。
「私は! 私は! 彼氏とイチャイチャしてたら
そう言ってウィッグを取る。綺麗に刈り取られた坊主頭の私がそこにはあった。私のカツラがバレた瞬間である。
体育館内部では、涙声と彼氏を称えるこえが響き渡っていた。
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