「数百年の声」

るいたにかげ

「数百年の声」

髪切って洋服を新調した私は

旧式のイエローのBeetleに乗りこんで

街の書店へと向かった

芥川賞と直木賞の本を読んで

ツまんネぇなァと思った私は

古典の棚に向かい

ドストエフスキーの〈地下室の手記〉を

抜き取った

いきなり殴り殺された

言葉の荒波が押し寄せてくる

神がかっているとしか思えない

あぁ、私も1度で良いから

鷲掴わしづかみするような

こんな文章が書けたなら…

帰った私はノートに立ち向かってゆく

書いても書いても何かが足りない

書けば書くほど遠ざかる

その時

ドストエフスキーの声が聞こえた


書くんじゃない

体験するんだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「数百年の声」 るいたにかげ @ruitanikage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画