第22話 不穏な行動を取る男?



「いい加減にしなさい。あなた達は仮にも兄妹なのよ。私が何も知らないとでも思っているの?そんな危険な関係絶対に許さないから💢💢💢私の可愛い陸を狂わせないで!沙織ちゃんお願いだから陸とそれ以上近づくのは止めて頂戴!」


「…………」


「何とか言いなさいよ。正気の沙汰?もうこれ以上陸の人生を台無しにしないで!!!💢💢💢」

 だんまりを決め込む沙織が許せなくて、陽子は怒りに任せてとうとう沙織に暴力を振るっている。こぶしで肩を叩いたり、それでもだんまりを決め込むので頬っぺたを平手で何度も叩いている


「…………」



 ★☆

 それでは……早川葵と今井絵里、更にはミーティア・プロモーション系列会社「コメット」に所属していた「美少女組」の1人だった優香が殺害された事件の犯人は誰なのか?犯人は単独犯なのか?それとも複数犯なのか?

 

 3人は陸と深い関係に有った女たちばかりだが、もう1人の「美少女組」の1人優香殺害事件は最近の事件だ。早川葵と今井絵里殺害事件から15年ほど経過しているので、関連付けるには無理があるかも知れない。


 一連の事件早川葵と今井絵里殺害事件は人気漫画家田宮氏と親しい関係に有った女性たちばかりで、大々的に各メデアや新聞週刊誌が取り上げ大事件へと発展していた。


 そこで……京都府警察の指揮の下、右京警察と軽井沢警察の共同捜査となった。関係する各都道府県警察で「共同捜査会議」を開き、各々で捜査を行いながら情報を共有する。つまり、指揮権は各警察にあり、互いに共有するのは情報のみということになった。


 そこで……最初からこの事件の捜査を手掛けている右京警察の山城と飯田、それに軽井沢警察の宮田と佐田は互いに情報交換し合って、徹底的に事件の追及に乗り出した。


 


 ★☆

 それでは……先ず最初に殺害された早川葵の足取りを辿ってみよう。


「仕事関係の人達と嵐山に桜を見に行く」と言い残して出掛けたは良いが、旅行先の嵐山の奥まった場所で遺体で発見された早川葵には何が起こっていたのか?


 そんな時早川葵が最後に目撃された嵐山のバー「diamond drop」に5時頃、陸が顔を出していたことが判明した。

 

 確かに陸と葵はほんの数分会話して別れていた。

「俺は……俺は……忙しいんだ。だから……もうこれっきりにしてくれ!」


「妊娠が発覚したのよ。どうすればいいの?」


「俺は……ハッキリ言って困る!お前が勝手に押し掛けて来るからじゃないか?『会えない』とも伝えてあるのに……」

 

 すると……バーの片隅で不穏な態度で、陸と葵の行動を見守っている男の姿があった。


 この男は誰なのか?

 

 ★☆

 それでは……先ず最初に殺害された早川葵の足取りを辿ってみよう。


「仕事関係の人達と嵐山に桜を見に行く」と友達に言い残して出掛けたは良いが、旅行先の嵐山の奥まった場所で遺体で発見された。


 その場所というのが竹林の小径を歩いて5分くらいの所にある「野宮神社」の雑木林から発見された。


 この「野宮神社」は縁結び・子宝・安産などの神様がまつられているようで、若い女性やカップルが多く参拝に訪れる場所だ。


「仕事関係の人達と一緒に行く」と言っていたが、誰と出掛けたのだろうか?


「おばんざい梅ノ木」で食事を楽しんだ後、嵐山の桜見物に出かけた面々は渡月橋から山々に丁度見頃を迎えた、緑の木立の合間を縫って咲く山桜が綿あめのようでもあり、花柄模様の傘のようでもあり、余りにも美しい山桜が野山を覆いつくしているのを見て只々自然の美に感激で一杯だった。


 こうして面々は各々に美しい桜を思う存分堪能した後。鬱蒼と伸びる竹林の小径を歩いたり、常寂光寺、二尊院、清涼寺の見事な桜見物をして花見の1日は終わった。


 ★☆

 それでは……桜見物はどのようなものだったのか?


 そう言えばあの時チョットしたアクシデントが起こっていた。

 それは高々とまた鬱蒼と伸びる竹林の小径を歩いていた時だった。


 あの時、花音は疲れたのでお父さんにおぶられながらも、アンテナを張り巡らせていた。そして……花音は途中で言った。


「パパ下ろして!」


「どうしたんだい?」


 そう言って下りると一目散に消えた。


「ママ放っておいては危ない。携帯に電話して!」


 ”トゥルルルル“ ”トゥルルルル” ”トゥルルルル”

「ママなーに?今忙しいのよ」


「もしもし?今どこにいるの?」


「プ――プ――プ――」


「切れちゃった」


「嗚呼……GPS追跡アプリで居場所が特定できるから調べてみよう。おーおーびゅうびゅう 走る事!走る事!嗚呼……止まった」


 花音は何故この様な行動に出たのか?


 ★☆


 花音は芸能界が全て。芸能界しか知らない。


 実は……花音は見ていた。

 あの葵が歩く歩幅を急に緩め後ろに後退して行った。そして陸に意味深な目つきを投げ掛けると、その時葵が誰も見ていないと思って陸の手をギュッと握って引っ張った。


 そして益々歩く速度を緩めた。花音親子をけむに巻いてやることは1つ。花音は眠い目をこすりながら陸と葵の行動をチェックしていた。


 そして目でしきりに陸に合図を送っている。

(なるほどー2人になりたいんだ)


「嗚呼……俺達は桜が見頃の後常寂光寺、二尊院、清涼寺の見事な桜見物をしてきます。やはり親子水入らずの方が宜しいでしょうから、集合場所は渡月橋のたもとで4時という事で」


「ハイ分かりました」

 こうして別れた。

 

 居てもたっても居られなくなった花音は眠気も収まったので、2人を追いかけた。

すると……案の定2人は木の生い茂った陰に隠れてキスをし出した。


 キスが終わると今度は、こんな白昼堂々と何をするかと思いきや、葵が服のボタンを外し始めた。こんな所で何という事を……。


 それが……2人も余程注意をしたのか木が生い茂り完全に見えない。それでも高い位置からだったら見える。準備万端事を始めようとする2人だが、好奇心旺盛な花音ちゃんは木に登り2人の行動の一部始終を見ようと必死だ。


 こうして見る限り、この後凄惨な殺人事件が起ころうとは誰も思わなかった。

 

 実は……この一連の花音の行動は沙織が指示したものだった。そう!ズバリ葵と陸の行動を花音に見張ってもらっていた。


 ★☆

 天才子役花音は、両親から口が酸っぱくなるほど耳に叩き込まれていた言葉がある。それはこのような言葉だった。


「芸能界を生きて行くためには力のある人脈をゲットする事が一番大切だ。例え売れなくなっても引っ張ってもらえるだろう」


 芸能界の有力者と親しくなる事が、芸能界で長く生きて行ける手段だと厳しく仕込まれていた。


「今飛ぶ鳥を落とす勢いの田宮兄妹のいう事は、どんな事があっても聞くんだよ!」


 一方の沙織(HINATA)はおばんざい店梅ノ木で皆と食事を取った後、CM撮影があり清水寺に向かった。その為、葵の行動を逐一報告させていた。証拠が残らないように暗号化してメール交換していたので、警察も見抜けなかった。例えば何時何分に清水寺に葵が行った時は、1時~4時までの花見なので時間は1時なら寺🛕の絵文字に「🛕清い」と教えて置いた。


 だから……賢い花音も必死だった、あの日は2人をしっかりと観察して目を光らせていた。


  早川葵が最後に目撃された嵐山のバーで5時頃陸が顔を出していたことが判明したが、あの怪しい男は誰だったのか?沙織が2人もスパイを送り込んでいたのだろうか?

 

 動機は一体何なのか?

 いよいよ次回最終話です。




 


 




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