第20話 謎の女沙織の正体

 

 陸の想い人は一体誰なのか?


 そうなのだ。その正体が分からなければ一連の事件は解決しない。


 沙織は一体誰なのか?


 超売れっ子のテレビドラマ「華の学園天国」が放映されている。内容は学園の美少女たちのドタバタ恋愛劇である。この学園ドラマは最近にしては珍しく全話20%超えの高視聴率を叩き出していた。


 モテモテの華子は学園のアイドル。両想いの亮と木陰でラブシーン。


 このテレビドラマを横目にイラついている人物がいる。そう陸だった。


「チッ💢あんなにくっ付いて……見てらんないね‼嗚呼嫌だ!嫌だ!」


 また一方の沙織の方だが、最近頓にテレビ週刊誌を賑わせているイケメン漫画家陸に怒りが頂点に達している。


 ボサボサ頭で瓶底メガネの時は誰も見向きもしなかったが、漫画家としてデビューが決まってからは180度雰囲気が変わり、超イケメンに大変身した途端、女がいつも付き纏って大騒動。週刊誌の格好の餌食となっていた。


「超イケメン漫画家田宮氏密会の一部始終が、某クラブでキャッチされました。それは有名女優との濃厚キスシーン現場です」


 テレビ週刊誌が書き立てているが、朝の情報番組「爽やかモーニングショー」でも大々的に取り上げられている。


「これは1ヶ月前の某クラブで田宮氏と女優Y子の密会画像です。なんとも濃厚なディ―プキスに多方面から大バッシングの嵐です」


 レポーターが、躍起になって一部始終を説明している。これを食い入るように見詰めイライラを募らせている女がいる。そう沙織だ。陸の想い人だ。


「全くー💢許せない。気持ち悪いっつ—の!💢」

 陸と沙織はいつも一緒にいる間柄だが、最近妙に相手の行動が気にかかる。そして……顔を合わせる度に凄い罵り合いが続いていた。


「お前!まだ高校生の分際でよくもまあ、どこの馬の骨とも分からない相手と次から次にキスできるな💢ヤンキー!アバズレ!不良!気持ち悪いっつうの!」


「陸こそ毎晩毎晩女の子を取っ替え引っ替えして――っ!そのうちにエイズに感染するわ。最低!!!💢」


 この2人は現在日本のエンターテイメント界で最も目が離せない超売れっ子。 


「お前いい加減にそういう色恋沙汰のドラマ出演は辞めたら?ダイコンで見てらんないって―の」


「仕方がないじゃないの。来る仕事を選り好みしていたら仕事来なくなってしまうから……それより陸こそ次から次へと女を取っ替え引っ替えして……いい加減にしたら……最低!💢💢💢💢」

「お前こそだ!何だい……学園ものなのに、あの濃厚なキスシーン。止めちまえ!!!💢💢💢」

「言ったな――――っ!大っ嫌い💢ウウウッ( ノД`)シクシク…わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭」そう言うと陸の胸を何度もこぶしで殴りつけている沙織。


「よせよ!」沙織の手を握りしめ制止させようとする陸。


「ウウウッ( ノД`)シクシク…わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭こんなの( ノД`)シクシク…こんなの……絶対にイヤ!わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭」


 沙織を抱きしめる陸。すると……詩織がそっと目をつぶり陸に💋唇を突き出した。


「ダメだよ!それだけは絶対に‼ダメ!ダメ!」


「わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭幾らキラキラ輝くスターで……贅沢が出来て……全て揃っていても……それが……それが……何だって言うの?ハートよ💛ハート💘人を愛する事が一番大切でしょう?わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭こんなの感情を失った只の道化師にしか過ぎない。私は陸だけが好き!どんな過ちであろうと自分に正直に生きたいの。わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭」


「ぅううっ……実は……俺も沙織以外考えられないウウウッ( ノД`)…だけど……それだけは……それだけは……絶対に許されない……」


 ★☆

 逗子にある広々とした敷地内に琥珀色の古民家風別荘は、目の前に海が望める情緒漂う別荘だ。管理を任されている60代の夫婦はこのカップルの身を案じ心もとない。かといって……解決策など見付かろうはずもない。


 只々叶わぬ恋に身を投じる2人を見守る事しか出来ない。


「どんな事が有ろうと……絶対に離れたくない……私は例え……天罰が下ろうと……陸と離れることなど出来ない。…ゥウウッシクシク(´;ω;`)ウッ…危険な関係だという事は痛いほど分かっていても……それでも……この関係を終わらせることなんて出来ない。もっと……もっと……強く抱いて嗚呼💋💕💖……」


「俺もさ……沙織しか考えられない。愛している💕💓」


「嗚呼……どんな過ちであろうと……陸しか考えられない。もっと……もっと……強く抱いて陸……嗚呼……お願い……もっとよ💛💋ああああ」


 人目を忍んで愛し合うカップル。

 陸は結婚離婚を繰り返していたが、この沙織との関係は大学生の頃らずっと続いていた。


 陸と沙織は深い愛で結ばれていたが、両親の反対で交際すらまともに出来なかった。だが、陸は日本屈指の漫画家で長者番付にも名を連ねる超売れっ子漫画家。人目に付かないように、沙織との逢瀬の為にワザワザこの湘南の海が一望できる場所に別荘を建てた。


 この意味有り気なカップルは💑一目をはばかり隠れるように、この1分1秒も無駄に出来ない濃厚な時間を過ごしている。


 女中の多恵は長年に渡りこの陸に仕えているお手伝いだ。


「本当にお可哀そうに……ううっシクシク(´;ω;`)ウッ…それでも…どうする事も出来ない。ううっ(´;ω;`)ウッ…」


 ★☆


 ここで2つの家庭で起こった事件を詳しく説明しておこう。

 

 陸の13歳年上の叔母詩織の父は詩織が中学に入って間もなく大腸癌が判明した。その為父の弟哲也が急遽鉄工所をしばらく引き継ぐことになった。


 当然仕事場である会社が家にあるので、暫くは詩織の家で生活する事となった。


 だが、詩織の母は非常に美しい母で、父が癌治療中で家にいない事を良い事に弟哲也が、夜中に母の寝室に侵入してとんでもない事になった。


 そんな酷い事をいとも容易く堂々とやってのけるのには訳があった。実は仕事上……鉄工所の離れで寝泊まりする事も多かった母親は、住み込みの従業員たちを息子のように手をかけてやっていた。だから……出来るだけ食事の準備で仕事場に近い場所である鉄工所の離れに寝泊まりする事も多かった。この日も母は鉄工所の離れで仮眠を取っていた。それを良い事に襲って来たのが弟哲也だった。


 怪しい行動を取っても家から離れているので、子供に気付かれる事は全くない。


 それでも……同意もなしにそんな真似を、それも兄の妻に手を出すとはとんでもない男。第一義姉が容易く身体を許す訳がない。


 当然それはそうなのだが、この時既に義姉は夫の死の宣告を受けていた。そして…義姉が家業を継ごうにも技術のない義姉に何が出来よう。今更家業を継げる訳がない。それに比べて弟哲也は父から仕事を叩きこまれていた。


 こんな事情もあり、事業を切り盛りして子供を一人前にするためには、好きでもない哲也に身をゆだねるしかなかった。


 ★☆


 実は……7歳も年上の義姉の事が忘れられずに婚期を逃していた弟哲也は、中学生の頃兄が義姉を連れて来た時から、心のどこかに義姉に対する思いがくすぶり続けていた。


 哲也にすれば義姉は初恋の相手だった。美しい義姉は中学生の女子たちが逆立ちしても敵う相手ではなかった。


 だが、兄が癌になった事でやっと思いが達成出来る時がやって来た。こうして念願敵ってやっと一つ屋根の下で義姉と生活できるようになった哲也は、兄が万が一にも癌が治って家に帰って来る可能性だってある。兄が退院しない内に何とかして義姉を自分の者にしようと考えた。


「お姉さん俺は以前からお姉さんの事が好きだった。兄がもう余命幾ばくもない今、俺がお姉さんを助けたい」


「何を言っているの。夫が死ぬなんてウウウッ( ノД`)シクシク…そんな事……( ノД`)シクシク…そんな事……考えられない」


 だが残念なことに、そうこうしている内に詩織の父は呆気なく大腸がんでこの世を去った。こうして……夫より10歳も年下の哲也が母と結婚した。


 母にしても致し方ない。子供を抱えて家業を切り盛りするには、どんな事をしても男手が必要だ。


 この時母は45歳で哲也は38歳。


「お義姉さん僕はお義姉さんのことをずーっと思い続けていた。やっと念願かなって結ばれる事になった。一生をかけて大切にするよ💛💕」


「夫が亡くなった今あなたに頼る事しか出来ないわ」

 

 夫が亡くなり新たな生活が始まった。だがここで事件は起きる。幾ら美しい母と言えども時は残酷だ。弟と義姉の年の差は7歳差。母はどんどん歳が行き反対に娘詩織は目を見張るほどの美少女に大変身して行った。


 こうして……美しく成長した詩織が幾ら我が娘と言えども赤の他人だ。母が買い物に出かけた隙に仕事場からやって来て詩織を犯そうとした。いきなり詩織の部屋に入って来るなり、ベッドに詩織を押し倒した。


「お義父さん何をするのヤメテ!」


「誰が食べさせてやっていると思っているんだ。もし……いう事を聞かないのであれば鉄工所を放ったらかして出て行く。そんな事になったら困るだろう。だから……いう事聞け!」


「もしこれ以上近づいたら……お母さん言うから」


「そんな事をしたらお前だって……困るだろう。鉄工所がつぶれて食べて行けない」


「ともかくイヤ――――ッ!」


 こうして義理の父を蹴り倒して逃げた。こんな事があり詩織は陸の家に避難した。


 そうなのだ。これが叔母詩織が陸の家に逃れてきた経緯だ。だが、詩織は沙織ではなかった


 

 ★☆


 次に紹介するのが陸が心から愛する沙織に起こった悲惨な出来事だ。

  

 実は……沙織の父剛なのだが、ここで既にお分かりだろうと思うが、実は……陸と沙織は異母兄妹だった。陸は剛と陽子の息子で沙織(HINATA)は剛と愛人美知の娘だった。


 だから……叔母詩織と沙織は同じ様な被害に遭っていた。義父と連れ子(娘)の関係は危険が潜んでいる。 


 こうして事件は起きる。沙織(HINATA)が小学6年生の時に大腸癌が判明した。その為父の弟忠司が急遽お寺をしばらくの間引き継ぐことになった。


 当然仕事場である安福時があるので、暫くは陸と沙織の家で生活する事となった。


 だが、沙織の母陽子は非常に美しい母で、父剛が癌治療中で家にいない事を良い事に弟が、夜中に母の寝室に侵入してとんでもない事になった。


 そんな酷い事をいとも容易く堂々とやってのけるのには訳があった。実は仕事上女はお寺を継ぐ事は出来ない。


 それでも……同意もなしにそんな真似を、それも兄の妻に手を出すとはとんでもない男。第一義姉陽子が容易く身体を許す訳がない。


 当然それはそうなのだが、この時既に陽子は夫の死の宣告を受けていた。そして…陽子が家業を継ごうにも修行もしていない陽子に何が出来よう。今更お寺を継げる訳がない。それに比べて弟忠司は父からお経や作法を叩きこまれていた。


 こんな事情もあり、事業を切り盛りして陸と沙織(HINATA)を一人前にするためには、好きでもない弟忠司に身をゆだねるしかなかった。


 ★☆


 実は忠司は、7歳も年上の義姉陽子の事が忘れられずに婚期を逃していた弟忠司は、中学生の頃兄が義姉陽子を連れて来た時から、心のどこかに陽子に対する思いがくすぶり続けていた。


 忠司にすれば陽子は初恋の相手だ。美しい陽子は中学生の女子たちが逆立ちしても敵う相手ではなかった。


 だが、兄が癌になった事でやっと思いが達成出来る時がやって来た。こうして念願叶ってやっと一つ屋根の下で陽子と生活できるようになった忠司は、兄が万が一にも癌が治って家に帰って来る可能性だってある。兄が退院しない内に何とかして陽子を自分の者にしようと考えた。


「お姉さん俺は以前からお姉さんの事が好きだった。兄がもう余命幾ばくもない今、俺がお姉さんを助けたい」


「何を言っているの。夫が死ぬなんてウウウッ( ノД`)シクシク…そんな事……( ノД`)シクシク…そんな事……考えられない」


 だが残念なことに、そうこうしている内に父剛は呆気なく大腸がんでこの世を去った。こうして……夫より10歳も年下の哲也が母と結婚した。


 母にしても致し方ない。子供を抱えて家業を切り盛りするには、どんな事をしても男手が必要だ。


 この時母は41歳で忠司は34歳。


「お義姉さん僕はお義姉さんのことをずーっと思い続けていた。やっと念願叶って結ばれる事になった。一生をかけて大切にするよ💛💕」


「夫が亡くなった今あなたに頼る事しか出来ないわ💋」

 

 夫剛が亡くなり新たな生活が始まった。だがここで事件は起きる。幾ら美しい母と言えども時は残酷だ。弟と陽子の年の差は7歳差。母はどんどん歳が行き反対に娘沙織は目を見張るほどの美少女に大変身して行った。


 こうして……美しく成長した沙織が幾ら我が娘と言えども兄の娘で自分の娘では無い。母が買い物に出かけた隙に、安福時からやって来て沙織を犯そうとした。いきなり沙織の部屋に入って来るなり、ベッドに沙織を押し倒した。


「お義父さん何をするのヤメテ!」


「誰が食べさせてやっていると思っているんだ。もし……いう事を聞かないのであれば寺を放ったらかして出て行く。そんな事になったら困るだろう。だから……いう事聞け!」


「もしこれ以上近づいたら……お母さん言うから」


「そんな事をしたらお前だって……この家に居られなくなる恋敵の愛人の娘だったが、今度は娘の方が夫を盗もうとしたと言って追い出される。良いのかい!」


「ともかくイヤ――――ッ!」

 これを助けたのが兄の陸だった。


 だから……沙織は叔母詩織ではなくアイドルで女優のHINATAだった。



 そうなのだ。道ならぬ恋の相手は妹HINATAだった。陸と沙織は血の繋がった異母兄弟だった。


 HINATAの本名は田宮沙織だった。








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