第17話 光と影
「キラキラ輝く1000年に一人の逸材。そう美少女アイドルHINATAちゃんの登場です。もちろん歌ってくれるのは現在大ヒット中の「サマーメモリー」です」
🎶サマーメモリー
♪愛してたわ……だって
あなたは私だけの映画スター
琥珀色の瞳
小麦色の肌
あなたは完璧な私のOh my savior♬
♪美しく輝いた
ダイヤモンドのような夏
Memories
幾千粒の涙
二人の未来が見えない
Summer memories
Summer memories
Summer rain🎶
キラキラ輝くアイドルになれるのは数ある星屑の中のほんの一握り。HINATAのような類い稀な、アイドルになる為に生まれて来たような子しか、本当のアイドルになれないのかも知れない。
★☆
光と影が交差する芸能界。
光輝くスターを夢見る子は星の数ほどいる。
現在のアイドルは、テレビでよく見る人気アイドルから地域密着型のローカルアイドルまで多様化している。
そこには様々な人間模様が映し出されていた。
ここに1人のアイドルがいる。
その名は優香。優香はアイドルになりたくて色々なオーディションに応募していたが、中々合格を掴めず、やっと4年前に合格したのが今の事務所ミーティア・プロモーションの系列会社「コメットプロダクション」だった。
小さい頃から人前で歌ったり演技をしたりすることが好きで、芸能界に憧れを抱いていた。そして……色々なオーディションに応募して、やっと4年前に合格したのが、今の事務所だった。
優香は芸能界でスターになり生きて行くのが最大の目標だったが、そんなに甘いものではないと痛感させられる毎日。
「頑張ったらCDデビューも間近だ。ガンバレ!」
「ハイ!頑張ります」
だが……話とは異なり、全くプロデュースしてもらえていない。一体何が悪かったのか?「コメットプロダクション」にはモデルや俳優、更にはボーイズグループやアイドルグループなどが所属しているが、優香の「美少女組」はまだ衣装や楽曲もない状況だ。
最初に社長に言われた言葉。
「売り上げが出せるようになるまでは、自分たちで頑張ってみろ。それで皆の頑張りが見えてきたら全力でバックアップする」と言われ、頑張った結果、少しずつお客さんがつくようになってきたが、大きな儲けが見込めないと判断されて、今尚下っ端扱いだ。
事務所のフェスティバルでも売り上げがあるにも拘らず、衣装は自分たちで用意させられて、ライブも事務所が力を入れているグループは良い時間帯に出演させてもらえ、我ら「美少女組」は条件の悪い夕食の時間帯だ。
★☆
様々なアイドルグループが存在する中で、メジャーデビューせず、ライブハウスやファンとの交流イベントを中心に活動しているのが「地下アイドル」。最近は、SNSや動画配信により、地下アイドルへの認知も広がってきたが、果たしてその実情はどのようなものなのか?
今の事務所の社長は典型的なパワハラオヤジだ。
「CDの売れ行き、チケットの売れ行き、グッズの売れ行きが悪い。オイ!お前は「タンポポ娘」に新しく加入して来たマリだったなあ?この成績では辞めてもらうしかない。何をやってんだ――――ッ!このグズが!💢💢」
そう言うとマリの頬っぺたを何度も叩いている。
「ウウウッ( ノД`)シクシク…わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭でも……でも……でも……どうやって( ノД`)シクシク…CDやグッズを買って……貰えばいいんですか?わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭」
「それはだなあ……先ずファンを増やす事。まあ……それに尽きる。嗚呼……それから……ううん?難しい話だが……そうそう……太客、そう太客を掴むことだ。分かったな?よぼよぼの爺さんであろうが、ハゲオヤジであろうが、ブ男であろうが、金持ってそうな社長や成金の所に営業に行け――――ッ!💢💢くれぐれも訳の分からない怪しい会社には行くな。警察にでも目を付けられたら事務所の名に傷が付く。分かったか――――ッ!行け!行け!GO!GO!」
「わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭……でも……でも……そんな……オヤジたちに……体を要求されたら……気持ち悪いです」
「バカヤロー!金金金……金の為だったら何だってやってのけろ――――ッ!!!!💢💢💢」
それでも……ここまで酷いパワハラだったらマネージャーが止めそうなものだが?
実は……地下アイドルを束ねる事務所内はパワハラが横行しているらしい。特にこの事務所はパワハラが日常的に繰り返されていた。だから……疲れてしまい辞めて行く子が多かった。
社長やマネージャーを交えた飲み会で、社長が新人の子を殴ったり暴言を吐くのは常態化していた。
マネージャーも止めようとしないので、先輩アイドルが社長をなだめ、新人の子を守っている状況だ。またセクハラも酷かった。
社長が突然寮の部屋にやって来て同部屋の女の子たちに用事を言いつけ、露骨にベッドに誘われたりすることがあった。
“トントン“ ”トントン”
いきなり入って来て「今度いい仕事が決まりそうだから……良いだろう?」
「社長待って下さい。その仕事ってどんな仕事ですか?」
「テレビの深夜番組だ。良いだろう?みんな最初はそんなものだ。その内人気が出ればゴールデンタイムにだって出られる」
「社長本当ですか、私嬉しい」
無名の地下アイドルがテレビに出れるなんて……それは何とも光栄な話。こうして関係を結ばさせられる。その中でも社長と一線は超えたがテレビに出る夢が叶わなかった子もいる。そんな話を聞いていたので、みんな頑張って断り続けたが、ついついうまい話に乗せられ一線越えてしまうのだ。
それでも……社長とそういう関係にある子は、センターになれたり、歌の割り振りが多くなったりするというのは実際にある。だから……悪い話ばかりではない。社長と肉体関係になった子の未来は開けて地上波にバンバン出ている子もいる。
勿論社長のお手付きにならずとも、実力で地上アイドルの座を獲得した子たちも多い。だから……どこに幸運が転がっているか分からない不思議な世界だ。
また上下関係はきっちりしていて、先輩への挨拶も厳しいし、新人はスタッフと同じくらい朝早く現場に入って雑務を手伝い、新人という立場であるのをいいことに、何時間も無償で働かされる毎日だ。
こんな苦労をしていつか日の目を見れる事を夢に見て、努力を重ねるのが地下アイドルたちだ。
★☆
地下アイドルからのし上がり地上アイドルに上り詰めるグループも中にはいる。こうなってくると蹴落とし、陰湿な虐めが起きる
それはこのようなものだ。
特定のメンバーを仲間はずれにする、無視をする、口をきかない、わざと孤立させるなど、絵に描いたようないじめをしているグループのボスがいた。
虐める理由はズバリ!妬みと嫉妬だ。
「お前らだけメジャー行きかよ?許せねえ!💢💢💢」人気が出たり。売り上げがグッと上がったグループは標的にされる。
更にはグッズやチケットの売れ行きの良い子を蹴落とし陥れる行為もよく目にした。
「マネージャーのシャネルの時計を泥棒した犯人が分かりました。あの桜が犯人です。みんなも見たよね?」
「マネージャーの時計を盗んだのは桜です」
「本当!本当!」
皆「タンポポ娘」だけがメジャーに行けそうで妬ましくて仕方がない。そうだ!社長に殴られていたあの新人マリがいるグループだ。
「太客、そう太客を掴むことだ。分かったな?よぼよぼの爺さんであろうが、ハゲオヤジであろうが、ブ男であろうが、金持ってそうな社長や成金の所に営業に行け――――ッ!💢💢くれぐれも訳の分からない怪しい会社には行くな。警察にでも目を付けられたら事務所の名に傷が付く。分かったか――――ッ!行け!行け!GO!GO!💢💢💢💢」
ボーッとしたマリだったが、社長にパワハラを受けながらも太客をしっかりと捕まえていた。こうしてメジャーデビューが決まった。
それを良しとしないグループのボスによる蹴落とし虐めとは、どのようなものなのか?
この事務所では盗難事件が後を絶たなかった。犯人はズバリ!ボスグループによる犯行だった。良い思いをする仲間を売る目的と生活苦からあのボスグループが盗難を繰り返していたのだ。
★☆
”チェキ撮影”は地下アイドルの定番イベントでほとんどの会場でライブ後に行われている。相場は1枚500~2000円ほどで、1000円なら1分間会話してその場で写真を渡し、1500円なら3分会話して1度チェキを持ち帰ってデコレーションして次のライブで渡す。
※地下アイドルの特典会とは、チェキ券(特典券)などを購入し、推しのアイドルと交流できる時間のことをいいます。 多くの特典会は、イベント中・イベント後に開催され、一緒にチェキ(写真)を撮ったり、トークをすることが可能です。
チケット代やグッズの売り上げは全て運営側に流れるが、地下アイドルに入ってくるのは基本的にチェキのバックのみである。だから……”チェキ撮影”は地下アイドルたちにとっては重要なイベントである。
アイドル活動をある程度続けていくと、自分を激推ししてくれるお客さん、通称TO(トップオタク)がつく。TOはライブにたくさん来てお金を使ってくれるので、一番の味方ではあるが、逆に新規のファンがつきにくくなるというデメリットもある。TOに遠慮して、新規で推してくれる人が減ってしまうので、TOは良い事ばかりではない。ストーカーと化す場合もあるので気を付ける必要がある。だから……良いオタクになるように、アイドル側が教育しなければいけない。推す気持ちをこじらせてしまうと危ないし、『これだけやったんだから』と見返りを求めて恐ろしい行為に及ぶこともある。
ストーカー被害や、プレゼントの中に盗聴器が入っていたと聞いたこともある。差し入れとして現金や金券をプレゼントするTOもいて、結構な額を貢ぐので、推しのために引っ越した、家を売ったという話もある。
アイドルは、「ビジネス」だ。だから……枠をいかにして取り合うかと、いうことでもあるので、虐め蹴落としが一層拍車をかけて陰湿化している。
アイドルの数は需要に対して供給が上回るようになって、枠を奪うために色々な戦略が繰り広げられている。グループの場合、センターはやはり特別扱いであり、誰もがその位置を狙っている。
妬ましくて悪い噂を流したり、グループ全員でセンターの子を無視して仲間外れにする。靴の中に画鋲を入れる。衣装を破く等々‥余程の精神力がなければ対処できない。
この様な一見華やかな世界だが、人間の嫉妬や欲望がうごめく恐ろしい世界でもある。陸の彼女を次から次に標的にして殺害する悪魔は、この芸能界の中に潜んでいるのか?
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