第16話 花音は今?


 

 そういえば……天才子役前田花音ちゃん6歳のその後は、どうなったのか?

 

 父徹は思い描いていた銀行員生活とは程遠かったので、あっさりと銀行員を辞めて花音のマネージャーになったのだが、銀行の行員から比べればなんとも楽な稼業でまさに極楽極楽。今までの俺の人生は何だったんだ。


 イヤイヤ……それは花音ちゃんが汗水たらして稼いだお金。元々マネージャーが誰であろうと関係無い。花音ちゃんは業界では引っ張りだこ。高視聴率を叩き出せる唯一無二の子役。楽なのは当たり前。それを然も自分の力で稼ぎ出したと勘違いしてしまった両親。こんなステージママとマネージャーの父なので落ちて行く事となる。


 こうして家族は崩壊して行った。


 娘が並外れた天才のお陰で家族の生活は潤って、言う事なしかと思いきや、そうはいかなかった。


 父徹にしてみれば、今まで虐げられて耐え続けていたのだが、タガが外れたように欲望が一気に噴き出して、何と……父徹は花音のギャラで銀座や六本木で豪遊し遊びほうけている。

「マミちゃんシュキ😍シュキ😍😻😍💓💕💖ブチュ💋」


「まあ徹ちゃんたらブチュ💋」

 

 やがて夫婦喧嘩が絶えず、父徹は愛人を作り結局両親は離婚。


 一方の花音はというと売れて益々鼻高々でいけ好かないガキに変貌を遂げて行った。更には大金が入って金銭感覚が麻痺して、生徒が持っていない破格の高級ブランド品の数々を見せびらかし、只でさえ人気子役であるが故に妬ましく鬱陶しく思っているのに、頭にきて学校でイジメの日々となって行った。


 だが、花音は高校生になる頃には、以前のようにあちこちのドラマからお呼びがかからなくなってしまった。


 その後うまく子役から大人の俳優に脱皮出来たのかと思いきや、小さい時は愛嬌たっぷりのどこか憎めない毒づく、ぷっくりした子供だったのだが、大人になるにつれて只の冴えない女の子になり、仕事がこなくなり収入ガタ落ち、いつの間にか消えてしまった。


 父は兄の仕事「ジュエリーホテル 」の副社長に就いているのかと思いきや、何とも残念なことに2019年から2021年にかけて世界的にコロナが大流行。その影響でホテルビジネスが大打撃を受けて3棟あったビジネスホテルの内の2棟「新橋」と「品川」のホテルが姿を消してしまった。


 花音はこの後事件にどのように関わって来るのか?


 それが……実は……花音の人生には恐ろしい事件が待っていた。


 ★☆ 


 2024年3月、都内の飲食店経営者夫婦の遺体が茨木県つくば市で発見された。事件から1か月半余りが経った4月30日、被害者夫婦に暴行、遺体を遺棄した実行犯とみられる1人の男が逮捕された。そのうちの一人、氷川洋二容疑者(20歳)はかつてNHKの大河ドラマにも出演したことのある元俳優だった。


 その氷川の口癖は『結局、世の中、顔とカネかな』元・天才子役が堕ちた理由は何だったのか?

 その理由は天才子役から大人になって行く段階で、上手く波に乗れなくて落ちて行ったのだろうが、そんな子役たちは山ほどいる。


 それでも……この氷川は仕事が無くなったと言えども、見た目も悪くなかったので仮面ライダーにも出演していたが、何故このような事件を起こしたのだろうか?


 早速事件の経緯を追ってみよう。

 東京・新大久保で複数の飲食店を経営していた50代の夫婦、李浩二さん・幸子さんが、茨木県つくば市の山林で遺体となって発見された事件だ。


 警視庁と茨城県警の合同捜査本部は氷川洋二容疑者(20歳)のほか、妻の花音容疑者(21歳)をそれぞれ死体損壊の疑いで逮捕、5月2日に送検した。氷川容疑者は妻花音容疑者とともに都内の空き家で李さん夫婦に暴行した疑いがあるとみられている。


 氷川容疑者は大手芸能事務所に所属していて、NHKの大河ドラマに出演するなど、当時は期待された存在だったという。


 それが何故このような残酷な殺人事件に手を染めてしまったのか?


 それから……妻の名前花音で何か……お気付きではないだろうか?

 

 そうなのだ。あの毒気の強い天才子役前田花音は、子役が辿る丁度小学生高学年位から、幼少期のイメージとは程遠い容姿となってしまい、仕事が全くなくなり家族は破綻してしまった。


 花音は殆どといって良いほど仕事が無くなり、子役時代から付き合っていたイケメン氷川と結婚していた。


 だが、夫氷川も芸能界での仕事はたまにしかなく、飲食店でアルバイトをして生活の足しにしていた。元々問題のある経営者だったが、氷川はお金欲しさにその男の裏の仕事を度々引き受けていた。


 そこにある日、その飲食店経営の男から人殺しの話を持ち掛けられた。それには2の足を踏んだが、お金が破格に高額だったのでついつい引き受けてしまった。


 それというのも、丁度妻の花音が妊娠中でお金がどうしても必要だった氷川は殺害依頼を承諾した。元々柔道5段だった氷川は妻花音と協力して山林に遺体を遺棄した。

「おい!人を2人殺害したら1000万円手に入る。俺たち子供が生まれるのに食べる事にも事欠く毎日。仕方ない。引き受けてしまった。もし断れば俺が殺される!」


「わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭あなた……何てことを……何てことを……イヤよそんな事、絶対に……わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭」


 殺害の話を聞き引き受けた以上、今更断れば話を聞かれてしまったので、夫洋二が殺害されることは間違いない。こうして協力する事になった。殺害する50代夫婦は飲食店関係の知り合いだったので、仕事の話をする倉庫の事務所で打ち合わせがてら飲み物に睡眠薬を入れ、殺害して指定された山林に遺棄した。


「コーヒーをどうぞ」


「嗚呼……ありがとう」

 こうして眠った2人を山林に運んで遺棄した。


 天才子役の名を欲しいままにしていた花音ではあったが、あの栄光は何だったのか?

 まあ芸能界しか知らない女の子が生きて行くという事は、並大抵の事ではなかったのだろう。


 頼みの父は女を作って出て行き、祖父母の財産を食い潰していた。その為花音の母は生活の為に、今は介護士として朝から晩まで働いている。お金が底を付いた花音は「殺人幇助」の罪で捕まった。

 

 一見華やかな誰もが夢見る芸能界だが、殺人に手を染めてしまった芸能人もいる。

 ★☆

 芸能界には光と影が存在する


 日本の華やかかりし時代の芸能界はとっくの昔に終わりを告げ、2024年7月某日の日本の芸能界は風前の灯火と化している。

 

 それでも……アイドルを夢見る若者は後を絶たない。昨今はkpopに魅了されて韓国に渡る少年少女も多いらしい。


 一生に一度の人生、夢を追うのは非常に素晴らしい事だが、世の中そんなに甘くない。昨今の日本の芸能界はオワコンと言われて久しい。


 胡散臭い芸能事務所から熱心にスカウトされて喜んでいたのも束の間、実は……そこには大きな落とし穴が待っていた。


 意気揚々と芸能事務所の門を叩いたが、スカウトしたのには訳があった。


『君はスターになる星の元に生まれた女の子だ。メジャーデビューをさせてあげるよ』と言われて、喜んでいたのも束の間150万円が必要だと言われ、お金を払って芸能事務所に入ったは良いが、口先だけでインチキ事務所だったという話はよく聞く話だ。


 ★☆

 この話に乗った3人の少女たち。

 その時一緒にスカウトされたのが、華子と美香と利美だった。この事務所は3階が寮になっていたので3人は、アイドルスターになる事を夢見て意気揚々と共同生活を始めた。

 

 だが、入所して分かった事だが、何かにつけて”金金金”

 要は少女たちをスターにするのが目的ではなく、お金を吸い上げる事が目的だった。


 胡散臭い芸能事務所から熱心にスカウトされて寮生活と聞いて、経費も節約できると喜んで芸能事務所の門を潜った。


 寮で寝泊まりが出来るので、後は1日も早くアイドルスタースターになれると意気込んで夢の芸能生活は始まった。

 

 だが、いざ夢に見た芸能生活がスタートしたのだが、とんでもない事が待っていた。

 それはズバリ!”金金金”


 所属時に所属の際のプロフィール写真の撮影料や事務手数料等、更に宣伝費諸々で150万円請求され、更にダンスレッスンや歌唱レッスンにも毎月、月謝を取られた。


 その他に高額のレオタードとダンスのレッスン代と言って初回に20万円請求され、更にボイストレーニングと言って月謝10万円を搾取された。


 それも……ダンスレッスンと言っても50代の先生なので実技は余り当てにならない。それでも……昔は名を馳せたダンサーだったらしく詳しく教えてはもらえたが……。

 また歌唱指導の先生も高齢で声も出ないうえに、アイドルを目指す若い世代には合わない演歌を中心に教える先生だった。只々アイドル候補生たちを騙すためのお飾り的存在の先生たち。


 一緒にスカウトされた女子の中には、借金だけが残ってキャバクラなどに落ちて行った子も複数人見て来た。それでも……諦めきれない子は、まだ世にも出ていないというのに、金が払えなくなると金満社長の枕をさせられている。それでも尚夢を掴もうと頑張っている。


 だが、お金がかかるということ自体は必ずしも不自然なことではなく、事務所としても、宣材写真の撮影やプロフィールの作成などにお金がかかるのは事実。


 最近では金欠で、親にお金を無心するのが申し訳なくて、食事と言えば小麦粉を溶かして焼いて食べている状態だ。

 

 まあ……極一部の芸能事務所の事だとは思うが、どこの世界にも悪い輩は潜んでいるのでご用心を……





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