第14話 僧侶一輝




 仏門に入って仏教の教えを守る人はすべて修行僧(僧侶)。そして…住職とは自分のお寺に住み、維持運営や管理などを担う僧侶の長が住職だ。


 戒律を守らない品行の悪い俗気の多い生臭坊主の、安福時住職や住職の妻、更には僧侶一同では、 仏にすべてを捧げる「仏門に帰依する」という言葉は只の絵空事にしか過ぎない。


 明治時代以前の日本に仏教が伝わった際には、戒律で「出家した者の妻帯肉食が禁止」されていた。


 元々の仏教の教えは「苦から逃れること」であり、愛する人との別れは誰にとっても辛く「苦」となる。だから異性に執着することは悟りを開くためには不要であると考えられ、出家する際には今まで大切に思っていたもの全てを捨てなければならなかった。


 明治時代以前は、身を正しくし、心を落ち着けるために執着をなくし、悟りを開くには煩悩を断ち切らなければならないと教えられていた。


 それなのにこの安福時の醜態ぶりは目も当てられない。僧侶の風上にも置けない体たらくぶり。



 ★☆


 修行僧の身とは朝早くから起きておて1日が始まる


 日常の生活を、自分自身を活かす修行と捉え、感謝と喜びの心で、一日一日を丁寧に生きることを大切にしている僧侶たち。


「仏門に帰依する」身でありながら住職の妻「坊守(ぼうもり)」陽子と深い関係になったイケメン修行僧(僧侶)の飯田一輝22歳は、この安福時にやって来て初めてのお休み「暫暇(ざんか)」をもらって実家に帰っていた。

 

 こうして……久しぶりの俗世に戻り休暇を存分に楽しみ、2週間足らずの休暇を終えて、またしても安福時に戻って来た。


 この一輝の祖父母は大きな農園を持っていて、住職一家や僧侶たちに少しでも喜んでもらおうと、採れ立てのスイカやトマトに野菜を大きな袋一杯に用意して持たせてくれたので、早速離れの住職たち一家が生活する家に向かった。


 いつもお使いでトマトやスイカを買って来て冷やしておく井戸が有り、その水溜め場にスイカを冷やそうとしていると、その奥まった部屋の一角から妙な声が微かに聞こえて来た。

「嗚呼……あああ……嗚呼……」そこで、何事かと思い少し障子を開けてみた。


(うわ……住職と奥様が裸に……何という事を……こんな真昼間から……)


 この時期丁度書き入れ時のお盆も済んで、僧侶の何人かは休み「暫暇(ざんか)」をもらって居ない。またスイカの時期も過ぎていたので、スイカを冷やしにやって来る者もいないので、住職夫婦は安心して束の間の休暇を思う存分快楽にふけっていた。


 こんな真昼間だというのに、29歳の住職と26歳の奥様が一糸まとわぬ姿で絡み合っていた。白い肌と肉感的な身体に目を奪われた一輝は2人の織りなす余りにも淫乱な光景に、只々興奮が止まらず障子の隙間から時間が許す限り見入っていた。


 その光景を見た一輝はもう2人が果てた後にも拘らず興奮が収まらない。生唾を飲み生まれて初めて見る男女の営みに只々興奮が止まらない。


 実は……一輝の家は奥深い山奥に有り、由緒正しいお寺の後継ぎとして生まれた。それが故に、厳格な両親の元色恋とは無縁の生活を送って来た。そんな純真無垢な青年にこの光景は余りにも刺激が強すぎる。


 

※修行僧のお休み期間のことを暫暇(ざんか)と呼ぶ。8月~9月の時期に二週間ほど頂ける。

 

 ★☆

 一輝はあの日の事を思い出すと興奮が収まらない。そんな時に何と住職剛が体調を崩し2ヶ月入院した。


 一輝は寺院を継ぐためにこの寺に預けられたのだが、あの時は不満で一杯だったが、今は違う住職が入院した今、なんとも罰当たりな話ではあるが、あの日見たあの妖艶な妻陽子の体を何とか手に入れられないものか、そんな空想ばかりする一輝になってしまった。

 

 またこの……住職の妻陽子は檀家さんの前では知的で淑やかで、楚々とした感じの女性なのだが、営みの顔は全く別の何とも言えない妖艶な女に変貌する。


 あの時見て気づいた。白い肌に豊満で妖艶な肉体の住職夫人陽子は、男を虜にするために生まれた女だと一輝は知ってしまった。


 あの陽子の白く豊満で妖艶な肉体が頭にこびりついて、僧侶たちが就寝した静まり返った寺院でオナニーにふける毎日。


 そして……その思いは益々膨れ上がり、最近では住職に対して強い嫉妬心すら頭をもたげるのであった。住職夫人だから諦めなければダメだと思いながらも、それでも…あんなに美しく妖艶な肉体を独り占めしている住職が憎らしくも感じる今日この頃。


 そんな風に思っていた丁度そんな時に、住職の入院が分かり「ひょっとしたら夫人に近付くチャンスが巡ってくるかもしれない」そんな甘い夢を見るようになっている一輝。


 ★☆

 今までは住職の指示で動いていた安福時だったが、こんな時期こそ力を合わせて安福時の切り盛りをご婦人と僧侶たちでやって行こうという事になった。


 こうして……今までは遠い存在の住職夫人だった陽子は、僧侶達にとってかなり身近な存在となって行った。


 そして……いつしか住職夫人陽子と打ち解けあった僧侶たちは、離れのリビングで檀家の葬式の話や法事の話、更には住職剛の容態の話もするようになっていた。

 

 それというのも寺院の若い僧侶たちの生活空間に夜美しい住職夫人1人が出掛けては、万が一という事もあるので、離れのリビングで打ち合わせが行われるようになった。


 それは当然だろう。夫人1人に対して僧侶たちが10人以上いるので、血気盛んな若者が美しい人妻に万が一という事も考えて、離れのリビングに少人数で来てもらい打ち合わせが行われるようになった。


 ★☆

 それだけ注意していたにも拘らず事件は起きた。

 ある夜の事だ。風呂上がりに、入浴を済ませ浴衣姿の婦人が冷たいビールをお盆に載せてリビングに入って来て、今日も2人の僧侶がやって来るのでビールを用意していたのだが、いつまで経っても来ない。そうこうしている内にうっかり眠ってしまった。


  その時一輝ともう1人の僧侶で、明日の法事の話の打ち合わせをこのリビングですることになっていた。だが、いつまで経っても2人は現れなかった。


 陽子はソファーでは疲れるので隣りの居間で横になり眠ってしまった。


 ★☆

 暫くすると一輝がやって来た。

(チョット法事で遅くなったが、大丈夫かなぁ?)

 そう思いながら離れのリビングに急いで駆け付けた。だが……リビングには誰もいない。すると……居間の障子が、僅かばかり開いていた。


(何というあられもない姿)

 陽子の浴衣は胸元が大きくはだけて白い乳房がはみ出しそうになっていた。興奮した一輝はやっとこの美しい肉体を目に収める事が出来て感激で一杯。


 だが、欲とは果てる事がない。目に焼き付けるだけでは我慢が出来なくなった一輝は眠っている陽子の体を触ってみたくなり、乳房に飛びつき吸い付いたり舐め回したり、あの時住職が行っていた技法を思い浮かべて体を思う存分支配した。


 するとその時陽子が目を覚ました。


「なな……何をするのよ…・・・ヤ止めなさい!」


 一輝は初体験の真っ最中だ。興奮してそれどころではない。欲望が体中を支配して欲望を抑える事が出来ない。そこで……大人しくさせる手段を模索した。

(そう言えば……あの時住職はパンティの中に手を忍び込ませていたなあ)

 そこで……今度は、パンティの中に手を忍び込ませ陰○を触ってみた。


 すると……婦人の下半身がピクリと動いた。尚も思い切り触り続けた。陽子は抵抗しなくなり一輝に身をゆだねた。


 こうして……剛が退院するまで一輝との逢瀬は続いた



 ★☆

 修行僧の1日。


 3:30振鈴(しんれい) ~起床~修行僧の生活は、全て鳴らし物と呼ばれる鐘や太鼓の合図によって行う。


 3:40洗面:起床後すぐに身なりを整え、洗面を済ませる。桶1杯の水で顔から頭まで丁寧に清める。


 3:45僧堂で行う朝の坐禅は、まだ夜も明けぬ静寂の中で、心静かに坐る。


 4:30 ~朝のおつとめ~一仏両祖へ礼拝し、世界の平和と人々の幸せをお祈りする。その後歴代の祖師方やご先祖さまへのご供養などが営まれる。


 6:30小参(しょうさん)修行僧は指導者から助言を受けることができる。これを小参と言う。

 7:00 小食(しょうじき) ~朝食~


 8:00 作務(さむ)清掃などの日常の労働を作務と言う。


 10時(坐禅)


 11:00日中諷経 :声を出して経を読むこと。~昼のおつとめ~


 12:00中食(ちゅうじき) ~昼食~料理を調理し、また、頂戴することの大切さを説かれている。修行を成就するための大事な実践。


 13:00講義:師家(しけ)と呼ばれる指導者による宗典や祖録を用いた講義が随時行われる。

 15時(坐禅)


 16:00晩課諷経 ~夕方のおつとめ~


 17:00薬石(やくせき)(夕食)仏教教団では食事は正午までだったが、中国、日本に仏教が伝わると、空腹をしのぐ「良薬」として、夕食を摂るようになった。これを「薬石」と呼ぶ。


 18:00講義


 19:00夜坐(やざ)夜の坐禅。坐禅の終わりに、両祖さまの著された坐禅の心構えを読誦(音読)し、自らの修行を確認する。修行僧の一日は、まさに坐禅に始まり、坐禅に終わる。


 21:00開枕(かいちん) ~就寝~「起きて半畳、寝て一畳」これが修行僧に与えられた場所。「単」と呼ばれる一畳のなかで坐禅や食事、寝起きする。


 こうして修行僧の1日が終わる








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