第12話 跡目争い?
2024年7月現在安福時を継承しているのはHINATAの母で愛人美知の息子雄大だった。
これは一体どういう事?
ひょっとしてこの一連の事件、早川葵と今井絵里殺害事件は恋愛関係の縺れというより、資産家安福時の跡目争いが引き金となっているのではないだろうか?
男というものはお金があると必ずと言って良いほど、高級クラブ、ギャンブル、愛人が当たり前となる者なのかも知れない。
★☆
1993年の初秋の事だ。突然陸の父剛に思い掛けない相手から電話が入った。
それはズバリ!剛とHINATAを捨てて超リッチマンに、あっさり乗り換えた美知からだった。
HINATAの実母美知の夫というのが、バブル期の1980年代に居酒屋チェーン店を50店舗ほど経営していたやり手社長だったが、HINATAが誕生した頃はバブルが弾けて大赤字を抱えていた。
本来ならば羽振りがよければHINATA一人位何て事はなかったのに、こぶつきを渋ったのには訳があった。実は……もうその頃には経営状態が二進も三進も行かなくなっていた。
美知は玉の輿に乗って有頂天になっていたが、実は美知の夫は破綻寸前だった。事実が分かった美知は怒り狂い夫に離婚を付きつけた。
こうして……またしても安福時の住職で陸とHINATAの父剛に泣きついて来た美知。父剛とスナックで知り合いHINATAを産んで置きながら、あっさりと剛と娘HINATAを捨てて男に走った美知だったが、丁度バブルが弾けてその男には多額の負債だけが残った。
こうして美知は生活苦で剛に救いを求めた。
ある日の事だ。もう別れて5年経つというのに昔の愛人美知から電話をもらった剛。
「もしもしお久しぶりね。うっふっふ💛会いたいの。私別れて分かったの……やっぱり剛が恋しくて」
「お前今更何を言っているんだ。男を作って、さっさと俺を捨てたくせに……何の用だ?」
「それが……バブルが弾けて大借金を抱えて……もうあの男とは生活できない。私ともう一度やり直す気ない?」
「ある訳ないだろう。今更絶対に無い!」
「そんなこと言わないで……お願い何でもするから……」
「イヤだ!」
「HINATAの話も聞きたいし……お願いよ。たっぷりとサービスするわうっふっふっふチュッ💋」
剛がこうも女に見境なく飛び付くのには訳があった。美人で知的な妻陽子に夢中になり結婚はしたものの、陽子はぴくりとも動かず 無反応の何もしない”まぐろ状態の女”だった。
それに比べて知性では劣るものの美知は陽子よりも6歳も若いが、色っぽくHが非常に上手い。だから……美知との娘HINATAを宿した時も、普通だったらお金を積んで「中絶しろ!」と口やかましく言って即刻別れる所だが、そんな言葉を吐いて美知が離れて行くのが怖くて言えなかった。
美知の屈託のないしゃべり方、穏やかな性格、更には魅力的な身体が恋しくて、家庭がありながらもHINATAの出産を承諾した。
こうして……本妻と愛人美知の間を行き来していたが、ある日突然美知から別れを切り出された。
そんな未練が今尚残る美知からの電話に怒り心頭だが、一方で会いたい気持ちが頭をもたげた。
こうして……未練たらたらな女美知の強引なアプローチを受けて2人は以前の待ち合わせ場所、家から離れた場所にある郊外の喫茶店ピノキオで待ち合わせた。
お盆やお彼岸は、世間一般的にご先祖さまを供養する時期で、檀家回りの訪問時期だ。
丁度9月に入ったばかりの彼岸の時期だったので剛は言った。
「あっ!今日は彼岸の時期だから檀家回りに行ってくる」
「あなたお気を付けていってらっしゃい!」
妻に噓をついて暫らくぶりに美知と会える喜びで一杯の剛は、いそいそと喫茶店ピノキオにやって来た。
「あっ!こっちよこっち……」
暫らくぶりに会う美知は一層妖艶になっていた。捨てられた恨みはあったが、それ以上に会えた嬉しさで一杯の剛。
「子供を押し付けといて今度はまたやり直したいだと……」
「うっふん💛あなたも悪いのよ。あの時は離婚してくれないので、しびれを切らしてさっさと今の夫と結婚したけど……このままじゃ私生きていけない。助けて……」
こうして2人の関係は復活した。安福時は檀家も多く土地成金の剛は不動産も多く所有していた。1度は愛した女。こうしてまたしても美知との関係は復活した。
本妻陽子は子供が授かりにくい体質だが、美知は愛人の分際でまたしても妊娠した。こうして10か月後に玉のような男の赤ちゃんが誕生した。
やがて愛人美知の息子雄大が安福時の後継ぎとなっていた。
★☆
あの時は家は大騒動になったが、子供が出来難い体の妻陽子は女の子がどうしても欲しかったので、憎い愛人美知の子供と分かった上で、夫を奪った憎い美知だったが、別れて別の男と結婚すると聞いたので慰謝料も請求せずに、HINATAを何の条件も付けずに責任を持って育ててやったというのに、まだ交際が続いていたと分かった陽子は大暴れ。更にはまたしても妊娠したと聞いて妻陽子は殺気立っている。
「許せない!殺してやる!どういう事?またしても美知に子供が出来ただと?冗談じゃないわよ。もうとっくの昔に切れていたんじゃないの?悔しい!愛人美知からたっぷり慰謝料をふんだくってやる!」
そう言われた夫は恐々こう言い放った。
「俺はお前とはもうやって行く気はない。そんな真似をしても無駄だ。慰謝料はたっぷり払うからお前が出て行ってくれ!」
「ウウウッ( ノД`)シクシク…わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭何故?何故なのよ?私よりもあんな卑しいスナック勤めの美知という女の、どこが良いのよ。わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭」
「俺は……俺は……お高く留まって険のあるお前は疲れるんだ。美知は確かに……お前のように知的でも何でもないが、仕事で飛び跳ねて忙しい俺の体も心配してくれる優しい女だ。ホッとできるんだ。だから……美知とは別れるつもりはない。慰謝料は払うから陽子お前が出て行ってくれ」
「わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭私は……私は……陸を捨てて出ていく事なんてわあ~~~ん😭わあ~~~ん😭出来ない。絶対に出て行かないから……わあ~~~ん😭わあ~~~ん😭」
★☆
更には……安福時ではまたしても大事件が勃発していた。
それは陸が5歳で叔母詩織が18歳の時の事だ。母陽子は夫の女癖の悪さにその苦しみを宗教団体「大日本真理教」に救いを求めていた。
その為家を留守にする日が増えていた。
そんな事をすれば男というものは余計に妻がいない事を良い事に、羽を伸ばすに決まっている。案の定、陽子よりも12歳も若い美しい妹詩織に手を出した。
それは受験勉強間最中に起きた。母陽子は宗教団体「大日本真理教」の集いで今日は大阪本山に出掛けている。
詩織がうつらうつらと居眠りをしていると、ガラッと戸が開いたと、その時ギラギラした剛が詩織に重なった。
「お義兄さんヤヤメテ!キャ――――――――――――ッ!」
まだ5歳の陸はそんなことお構いなしで、お寺の僧侶さんに遊んでもらっている。
詩織は受験が終わるまでは我慢しようと耐えた。
(姉にこの事実を話せば私はこの家から追い出されてしまう)
こうして叔母詩織はこの家から出て行った。そして……大学入学と同時にで一人暮らしを始めていた。
叔母は大学から家を出ている。そして…詩織は実は……未婚の母となっていた。
確か…18歳で妊娠が分かり19歳で男の子を設けていた。
この時既に愛人美知の子供HINATAを貰い受けていたため、息子の太郎は叔母の実家で祖父母が育てた。
その後妹詩織は大学を卒業後スチュワーデスになり、結婚して娘を設けたが離婚している。ここで陸と叔母の関係が出来たのだろうか?
★☆
今までは陸の奪い合いで事件に発展したとの見解だったが、ここに来てこの一連の事件早川葵と今井絵里殺害事件は、どうも資産家陸の家族、田宮家の家督争いが絡んでの殺害事件に発展したのではないだろうか?
陸には腹違いの弟妹が3人もいる。
父と愛人美知の間に出来たHINATAと雄大。
父と叔母の間に出来た男の子太郎。
どうも……この一連の事件は一筋縄ではいかない。
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