第10話 見えてきた犯行動機?




 あの夜、ブルーの無数の糸が垂れ落ち幻想世界を演出してくれる白糸の滝イリュージョンを見ながら余りの美しさに、4人陸と彼女絵里更にはHINATAと健斗はムードも最高潮に達し甘い言葉を囁き合っていたに違いない。


 そんな時に誰とも知れない黒い悪魔は、一歩また一歩と絵里を射程圏内に捕らえ殺害する機会を狙っていたに違いない。


 

 早川葵殺害犯が見付からない内に、今度は陸の竹馬の友で彼女絵里が殺害されてしまった。


 もし陸に近づく女を何としても阻止したいともなれば、余程陸を心底惚れぬいた女の犯行と考えられる。


 一体誰なのか?


 そんなにも陸を愛している女など、もうこの世にいないのではなかろうか?


 ★☆


 それではこの絵里と陸はどこで知り合い交際に発展したのだろうか?

 

 陸と絵里は竹馬の友で小さいころからの顔見知り、小学校も学区が同じという事で一緒に通った。そして…3歳下のひなたも一緒に小学校に通い出した。


 だが……チョットした事件は陸が高校年生の頃から起こっていた。それは陸ではなく陸が親しくしていた女友達絵里に向かっていた。


 そう絵里は高校も陸と同じ高校だった。

 あれは確か…高校2年の夏休み陸と絵里は映画を見に行った。そして……その帰り道花の咲き乱れる公園のムード満点のロマンチックな薔薇の園で2人は初キスをした。

 

 こうして関係は益々深まって行った。

 そんなある日事件は起きた。あれは確か……秋も深まった晩秋の、もみじが真っ赤に色ずく頃、絵里は部活の卓球練習を終えすっかり日が落ちた人気のない歩道橋を丁度下っていたと、その時後ろから来た誰かによって、いきなり階下押されて下に転げ落ちた。


「キャ――――――――――――――――――――ッ!」


 軽症で済んだが、それでも……手を骨折して3ヶ月間部活の卓球を休部する羽目に追い込まれてしまった。3ヶ月間の部活休部だけで済んで良かったが、一歩間違えたら大事故になっていたかも知れない。


 絵里はあの時10段も転げ落ちたので犯人を見る余裕などなかった。だが……誰かが逆方向に逃げた事だけは分かった。


 更には同じ高校のジャージだったので同じ高校の生徒だという事は分かった。犯人は男か女どっちだったのか?と言われればズバリ女子だった。


 やはり……陸に思いを寄せる女子高生という事になる。


 最近にわかに陸と絵里カップルの単独行動が目に付くので付け狙っていたが、2人の決定的瞬間を見て耐えられなくなって、絵里の存在が邪魔になり痛い目に合わせようと思った。いやいやもっと残酷な最終手段殺害しようと思ったのかも知れない。


 犯人は誰だったのか?

 

 それでも……陸はぼさぼさ頭の瓶底眼鏡だったからモテなかったのでは?

 イヤイヤ……母親が一緒だったから口うるさくて、ぼさぼさ頭の瓶底眼鏡という事は絶対に有り得ない。見栄っ張りな母が放ってはおかない。


 ぼさぼさ頭の瓶底眼鏡になったのは、大学生になってから一人住まいになってこれでやっと漫画に集中できる。


 こうして……格好をまったく気にしなくなった。そんなお洒落に気を配っていたら作品に集中出来ない。


 このような事から……親の過干渉から逃れ、格好も何もかも気にしなくなり、一つの事に集中できるマンション住まいになってから陸の才能が開花している。


 話が脱線してしまったようだが?

 同じ高校のジャージだったという事は陸に思いを寄せていた女性を探すしかない。 


 すると……1人の女性が浮かび上がった。


 その女性というのが、高校の時の同じ漫画同好会に入っていた田所知里ともう1人入江恵美だった。


 陸は漫画同好会の3人で好きな漫画作品について、同好会の部屋で暇に任せて語り合っていた。


 陸は絵里がいながら、漫画について論議が出来る田所知里に興味を持ち始めた。それは話が合うのだ。

 

 ★☆

 そんなある日陸は知里に呼び出された。


「陸……陸が探していた漫画『龍とさくらの怪獣探検隊』が見つかったのよ。今度一緒にそこに行かない?名古屋なのだけれど……」


「嗚呼……分かった」


「行く気ある?」


「分かった。行く!行く!」


 こうして……次の日曜日に2人は東京駅で待ち合わせして出掛けた。

 

 この様子でも分かるように、愛好家というものはその作品が見たかったら多少の労力は何の苦労にもならない。こうして……わざわざ東京くんだりから名古屋市鶴舞にある図書館に出掛けた。


 この1件で陸は自分の趣味の協力を惜しまずに手伝ってくれる知里に、大きく気持ちが傾いた。陸は最近は竹馬の友絵里が少し煩わしくなっている。


 一方で話の合う知里に大きく気持ちが傾いて最近では知里の家にかなり漫画本があると聞いて、来週の日曜日は知里の家に初めてお邪魔する事になった。


 それは知里の家に「最後の決戦」が全巻そろっていると聞いたからだ。


 ★☆

 日曜日はやって来た。午後1時にお邪魔した。すると……家族は誰もいなかった。お父さんは営業で土日関係なしに仕事で家を空けているという。

一方の母親の方はというと看護師さんで日曜日だというのに出勤して居なかった。


 陸は漫画を片っ端から読み漁って大満足。夕方になったので立って帰ろうとすると知里が言った。


「陸私のことどう思っている?」


「友達として大切に思っているさ」


「私は……私は……陸が好き!」

 そう言うと目をつぶって唇を陸に突き出して来た。


 陸は絵里とも初キスを済ませていたが、もちろん絵里の方が美人だが、絵里はきゃしゃで肉感的とは程遠い。一方知里は可愛いグラマラスなタイプの肉感的な女の子だった。絵里の事は好きだが、こんな肉感的な女の子を触ってみたい。


 こうして……知里の希望に応えた。でも……絵里にはない肉感的なボデイを触ってみたくなった。今の所……知里は何の抵抗もせずに身を預けてくれている。


(大丈夫かなぁ?)


 どうしても触ってみたかった大きなおっぱいをチョットだけ触ってみた。それでも……知里は抵抗しない。こうして暫く知里の体を触った。

 

(絵里殺害犯は案外身近に存在しているかも知れない)そう思う軽井沢警察の宮田と佐田だった。

 


 ★☆


 一方山城と飯田は早川葵殺害犯を追って久しいが、何か……進展はあったのだろうか?


 すると……新しい事実が分かって来た。

 

 それはレイラと陸が度々居酒屋で目撃されていたという事だ。2人は10歳近く年が離れているので一見すると恋人同士には見られないので、それを良い事に逢引きを繰り返していたという事なのか?


 そして……陸のマンションで逢瀬を重ねる。そこで……何故陸が良いのかというと、レイラには夫富田がいる。


 どういう事かというと……今までレイラに夢中になり警察沙汰になった男は数知れず、だから……一度寝ただけで自分の所有物のようにがんじがらめにする男はダメだという事だ。レイラは夫富田とは絶対に分かれるつもりはない。


 だから……陸のような男が一番手ごろなのだ。適当にモテて縛り付けるようなことは絶対にしない。いつでも関係を清算できる陸が一番都合がいいのだ。

 

 また、一見すると恋人同士には見えないので、それを隠れ蓑に逢瀬を重ねているのだという。でも……レイラは遊びで陸と居酒屋でわざわざ会っている訳ではなかった。


 要は富田から言い渡されたスパイ。


 どういう事かというと天才陸は色んな引き出しを持っている。富田は仕事で行き詰まると、レイラを陸宅に送り込んだ。そこで……陸に溺れてしまったのだろうか?


「まあミイラ取りがミイラになった」という事なのかも知れない。

 

 陸は若い子はファッションセンスがどうのとか、髪型がどうのとか、そんな外見ばかり重視して自分も気を配らなくてはいけないので疲れるが、そんな事は全く気にしないレイラは大人の女性だから、母親のような深い愛情で、何もかも許して付き合ってくれるタイプなので安心している。


 そして……一方のレイラにしても陸は最高の飲み友達で、旦那富田が壁にぶち当たった時の芸術に対する引き出しの多さに旦那の手助けをする為にも、更には夫は撮影撮影で1週間に2~3度しか帰って来ない。そこで……お互いの欲望の捌け口がレイラで陸だったのかも知れない。


 それこそ作家は鉛筆1本さえあれば仕事ができる。パソコン1台有れさえすれば仕事ができる。


 こうして……条件がそろった2人が、陸のマンションで逢瀬を交わし芸術討論を交わして知らぬ間に情報を引き出させて、関係が延々と続いていたのだろうか?


 それが……いつの頃からか……レイラが富田だけが全てから、陸が全てに代わってしまい。年増の自分がいつ陸に捨てられるか分からないので、女たちが邪魔になり今の関係を何としても守りたかったレイラが、恋に狂って殺害して行ったと考えるのが順当な考えかも知れない。

















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